[スポンサーリンク]

身のまわりの分子

A-ファクター A-factor

[スポンサーリンク]

afactor

A-ファクター(A-factor, A因子)はC13H22O4からなるシグナル分子である。

 

放線菌Streptomyces griseusにおいて二次代謝産物ストレプトマイシンの生産と形態分化(胞子形成)の開始を誘導する。微生物ホルモンと呼ばれる化合物の一つ。これまでに十種類を超える類縁体が単離・構造決定されており、それらはγ-ブチロラクトンオートレギュレーターと称されている。[1]

 

afactor2

A-ファクターとその類縁体(参考文献[1]より)

 

発見の歴史は古く、1967年にソ連(当時)のAleksandr S. Khokhlovらによって発見され、76年にはγ-ブチロラクトン骨格を有することまで決まっていた。しかし、これらの報告は言葉の壁に阻まれてしまい、81年に原, 別府らによって再発見がなされるまでは西側の研究者からはほぼ無視されたままであった。[2]

 

γ-ブチロラクトンオートレギュレーターはそれぞれ特異性の高い受容体を持つことなどが知られている。中でもA-ファクターはその生合成経路や受容体など、制御カスケードが最も積極的に研究されている微生物ホルモンといえる。[3]

 

  • 参考文献

[1]「Streptomyces属放線菌における二次代謝制御 γ-ブチロラクトンオートレギュレーターとそのリセプターを介した信号伝達機構」 仁平卓也 化学と生物 40(4) 2002 275-281
[2]「A-ファクターの再発見」 別府輝彦 化学と生物 48(7) 2010 498-502
[3]「微生物ホルモンのケミカルバイオロジー」大西康夫,堀之内末治 化学と生物 47(6) 2009 419-426

 

Avatar photo

らくとん

投稿者の記事一覧

とある化学メーカーで有機合成関係の研究をしている人。一日でも早くデキる企業ケミストになることを夢見ているが、なかなか芽が出ない残念ケミスト。化学も好きだけど生物も大好きな農芸化学出身。

関連記事

  1. ロピニロールのメディシナルケミストリー -iPS創薬でALS治療…
  2. フッ素ドープ酸化スズ (FTO)
  3. スピノシン Spinosyn
  4. シラフィン silaffin
  5. 亜酸化窒素 Nitrous oxide
  6. 化学者のためのエレクトロニクス入門⑤ ~ディスプレイ分野などで活…
  7. ジフェニルオクタテトラエン (1,8-diphenyl-1,3,…
  8. ギンコライド ginkgolide

注目情報

ピックアップ記事

  1. リチウムにビリリとしびれた芳香環
  2. チャート式実験器具選択ガイド:スパチュラ・グローブ編
  3. 高分子ってよく聞くけど、何がすごいの?
  4. 含ケイ素四員環-その2-
  5. 第五回 化学の力で生物システムを制御ー浜地格教授
  6. 日本ビュッヒ「Cartridger」:カラムを均一・高効率で作成
  7. マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎
  8. ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン / Hexanitrohexaazaisowurtzitane (HNIW)
  9. N,N-ジメチルアセトアミドジメチルアセタール : N,N-Dimethylacetamide Dimethyl Acetal
  10. 二核錯体による窒素固定~世界初の触媒作用実現~

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年5月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

化粧品用シリコーン代替素材の市場について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、化粧品…

第54回ケムステVシンポ「構造から機能へ:ケイ素系元素ブロック材料研究の最前線」を開催します!

今年も暑くなってきましたね! さて、本記事は、第54回ケムステVシンポジウムの開催告知です! 暑さに…

有機合成化学協会誌2025年7月号:窒素ドープカーボン担持金属触媒・キュバン/クネアン・電解合成・オクタフルオロシクロペンテン・Mytilipin C

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年7月号がオンラインで公開されています。…

ルイス酸性を持つアニオン!?遷移金属触媒の新たなカウンターアニオン”BBcat”

第667回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科 野崎研究室 の萬代遼さんにお願いし…

解毒薬のはなし その1 イントロダクション

Tshozoです。最近、配偶者に対し市販されている自動車用化学品を長期に飲ませて半死半生の目に合…

ビル・モランディ Bill Morandi

ビル・モランディ (Bill Morandi、1983年XX月XX日–)はスイスの有機化学者である。…

《マイナビ主催》第2弾!研究者向け研究シーズの事業化を学べるプログラムの応募を受付中 ★交通費・宿泊費補助あり

2025年10月にマイナビ主催で、研究シーズの事業化を学べるプログラムを開催いたします!将来…

化粧品用マイクロプラスチックビーズ代替素材の市場について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、化粧品…

分子の形がもたらす”柔軟性”を利用した分子配列制御

第666回のスポットライトリサーチは、東北大学多元物質科学研究所(芥川研究室)笠原遥太郎 助教にお願…

柔粘性結晶相の特異な分子運動が、多段階の電気応答を実現する!

第665回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院工学研究科(芥川研究室)修士2年の小野寺 希望 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP