[スポンサーリンク]

ナノカーボン

コランニュレン corannulene

[スポンサーリンク]

コランニュレン(コラニュレン、コラヌレン, corannulene)は1966年にLawtonとBarthによって初めて合成された[1]。コランニュレンの共鳴構造は図1左のように描くことができ、中心に芳香環をもつアヌレン(内側はシクロペンタジエニルアニオン、外側は[15]アヌレニルカチオン)とみなすことができる。この構造から、中心(心臓)を表すラテン語の「cor」と「annulene」を組み合わせた「corannulene」と名付けられた。当時、コラニュレンが安定に存在する主な理由を共鳴安定化によるものだと考えられていましたが、近年の理論計算によるとこの共鳴安定化の寄与はさほど大きくないことがわかっている[2]

コラニュレンの構造は、フラーレン(C60)の最小部分構造であり、X線結晶構造解析によりボウル状であることが確認されている[3]。コラニュレンの4種類の炭素-炭素結合は車輪の構成要素になぞらえて「hub」、「spoke」、「flank」、「rim」と呼ばれ、湾曲構造に起因して各々の結合の反応性が異なる 。 (図 1 右)。

2015-06-17_02-39-27

図1. LawtonとBarthが提唱した共鳴構造(左)、結合の名前と結合距離(右)

 

コランニュレンの合成

合成は困難であったが、1991年に数十ミリグラムスケールの新規合成法[4]、1997年に数百ミリグラムスケール[5]、2006年にグラムスケール、そして2012年にキログラムスケール[6]の改良合成法が報告され、現在では2012年の合成法に従い、試薬として比較的容易に入手可能である。合成法について、詳しくは記事「ナノの世界に朗報?!-コラニュレンのkg合成-」参照

日本でも東京化成工業で19100円 (200mg 製品コード:C2572)で購入できる。最近関東化学より22,000円 (1g: 製品コード07363-65)とより安価に購入できるようになった。

The Kg-Scale Synrhesis of Corannulene

The Kg-Scale Synrhesis of Corannulene

論文数

コランニュレンの供給法の開発により関連論文の数は大幅に増加している。コランニュレンに関する総論文数は939である (SciFinderキーワード調べ、2015年6月8日現在)。発表論文数順は

1 位 Lawrence T. Scott 124 報

2 位 Marina A. Petrukhina 89 報

3 位 Jay S. Siegel 76 報

である。

2015-07-07_20-16-18

コランニュレン論文数の推移

 

応用研究

名大の伊丹健一郎、ボストン・カレッジのScottらは市販のコランニュレンを出発物質として2段階で80個の炭素原子と30個の水素原子からなる湾曲炭素ナノ分子「ワープドナノグラフェン」の合成に成功している。[7]

C80H30_f1

東大の相田卓三らは、重合するモノマーとしてアミド基を含むチオアルキル側鎖を5つ導入したコランニュレン誘導体を用いて、超分子ポリマーの新しい精密合成法を開発している。[8] (記事「超分子ポリマーを精密につくる」参照)

2b530e80c7d0de90885e285c5d798063

 

また、最近東大の塩谷光彦らのグループによって、コランニュレンの安定なflank結合の触媒的炭素ー炭素結合開裂が報告されている。[9](記事「コランニュレンの安定結合を切る」参照)

2015-06-17_02-41-36

参考文献

  1. Barth, W. E.; Lawton, R. G. J. Am. Chem. Soc. 196688, 380. DOI: 10.1021/ja00954a049
  2. Monaco, G.; Scott, L. T.; Zanasi, R. J. Phys. Chem. A 2008112, 8136. DOI: 10.1021/jp8038779
  3. Hanson, J. C.; Nordman, C. E. Acta Crystallogr1976B32, 1147.
  4. Scott, L. T.; Hashemi, M. M.; Meyer, D. T.; Warren, H. B. J. Am. Chem. Soc. 1991, 113, 7082. DOI: 10.1021/ja00018a082
  5. Scott, L. T.; Cheng, P.-C.; Hashemi, M. M.; Bratcher, M. S.; Warren, H. B. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 10963. DOI: 10.1021/ja972019g
  6. Butterfield, A. M.; Gilomen, B.; Siegel, J.S. Org. Process Res. Dev. 2012, 16, 664. DOI:10.1021/op200387s
  7. Kawasumi, K.; Zhang, Q.; Segawa, Y.; Scott, L. T.; Itami, K. Nature Chemistry 2013, 5, 739. DOI: 10.1038/nchem.1704
  8. Kang, J.; Miyajima, D.; Mori, T.; Inoue, Y.; Itoh, Y.; Aida, T Science 2015347, 646. DOI:10.1126/science.aaa4249
  9. Tashiro, S.; Yamada, M.; Shionoya, M. Angew. Chem. Int. Ed. 201554, 5351. DOI: 10.1002/anie.201500819
The following two tabs change content below.
webmaster
Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. ソラノエクレピンA (solanoeclepin A)
  2. グルタミン酸 / Glutamic Acid
  3. リピトール /Lipitor (Atorvastatin)
  4. アスタキサンチン (astaxanthin)
  5. タミフル(オセルタミビル) tamiflu (oseltamiv…
  6. カフェイン caffeine
  7. トリメチルアルミニウム trimethylalminum
  8. 嗚呼、美しい高分子の世界

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. (+)-ミンフィエンシンの短工程不斉全合成
  2. 実現思いワクワク 夢語る日本の化学者
  3. 並行人工膜透過性試験 parallel artificial membrane permeability assay
  4. Nature 創刊150周年記念シンポジウム:ポスター発表 募集中!
  5. 論文コレクター必見!WindowsでPDFを全文検索する方法
  6. 2005年2月分の気になる化学関連ニュース投票結果
  7. 有機の王冠
  8. 第38回「分子組織化の多様な側面を理解する」Neil Champness教授
  9. ダンハイザー環形成反応 Danheiser Annulation
  10. 抗がん剤などの原料の新製造法

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

お前はもう死んでいる:不安定な試薬たち|第4回「有機合成実験テクニック」(リケラボコラボレーション)

理系の理想の働き方を考える研究所「リケラボ」とコラボレーションとして「有機合成実験テクニック」の特集…

第60回―「エネルギー・環境化学に貢献する金属-有機構造体」Martin Schröder教授

第60回の海外化学者インタビューは、マーティン・シュレーダー教授です。ノッティンガム大学化学科(訳注…

炭素置換Alアニオンの合成と性質の解明

第249回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(山下研究室)・車田 怜史 さんにお…

第59回―「機能性有機ナノチューブの製造」清水敏美 教授

第59回の海外化学者インタビューは日本から、清水敏美 教授です。独立行政法人産業技術総合研究所(AI…

高分子鎖デザインがもたらすポリマーサイエンスの再創造 進化する高分子材料 表面・界面制御アドバンスト コース

詳細・お申込みはこちら日時2020年 4月16日(木)、17日(金)全日程2日間  …

光で水素を放出する、軽量な水素キャリア材料の開発

第248回のスポットライトリサーチは、東京工業大学物質理工学院(宮内研究室)・河村 玲哉さんにお願い…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP