[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

不正の告発??

[スポンサーリンク]

concoction.gif

?私の働いている研究所ではいくつかのメーリングリストが回っていて、セミナー情報や、分析機器の動向、ラボ内のお知らせ等をメールで確認することになっています。どこの大学でも研究所でも米国ではこのような形をとっているところが多いと思います。つい最近のある日、セミナー情報であると思ってみたメールに思いがけない内容が書かれていました。

 

内容は結論からいうと研究室の不正について、あと数日でやめるポスドクが暴露しているという、驚愕な内容でした。詳しい内容、もちろんその研究室についてはいえませんし、特定されるのを避けるため若干内容をこちらで改変します。ボスはその分野でトップクラスの非常に著名な研究者です。

 

どうやら、ポスドクの間、自分のラボで発表した結果をツールとして使って、次の研究を行うという研究テーマらしかったのですが、その発表した結果が全く再現が取れないという事態に陥っていたらしいのです。再現が取れないことは、時々あることですが、それをボスに話したところ、黙っていなさいということを告げられ、今日までその再現を取らされたということです。そのポスドクの腕が悪いのかもしれませんが、どうやら内容の詳細なところをみると真実のようです。完全に板ばさみになり、ここを去る数日前に公表したというわけです。それに対してこの場(メーリングリスト)でいうことでないという反論もあったようです。

 

捏造、不正を発見した場合、まずどうするか?あなたならどうしますか?

通常なら確実な証拠をあつめ、ホイッスル・ブローイング(警告慣らし)というつまり、ちょっと意味は異なりますが簡単にいえばその関係社内で告発を行います。それでも、解決しない場合は第三者に告げる、つまり内部告発をするというのが基本です。こちらでは内部告発の保護制度が、日本よりも進んでいます。

 

日本でも昨年公益通報者保護制度という法律が施行されました。これは、労働者が自分の事業所の法令違反行為等を、次のいずれかに通報することをいいます。通報することにより、解雇等の不利益取扱いから保護されるものです。

 

(1)事業者内部(勤務先等)  (2)処分等の権限のある行政機関 (3)その他(マスコミ等)

 

その公布、施行のバックグラウンドとしては、近年の企業等の不祥事が相次いだことが原因です。もちろん保護には様々な条件があるわけですが、このような法律が施行されることにより、内部告発者(これはマイナスな意味があるので、もっとプラスの意味で現在では公益通報者という)がより、告発しやすくし、さらにそのため企業も不祥事をなくすために取り組むことができるという法律です。機能しているかどうかはわかりませんが。

 

さて、化学業界、特に、アカデミック分野でも最近論文捏造問題が多発しています。日本では元早稲田大学教授の松本和子氏の論文捏造問題、海外では、コロンビア大学の若手の雄であったSames教授の学生の論文捏造、有機分子触媒に関する論文を多数報告していたCordova氏の捏造疑惑など(両者に関しては関連リンク参照)、細かいものを入れたらキリがありません。おそらく今回のように(本当かどうかわかりませんが)握りつぶされたものもあり、それは氷山の一角でしょう。よい研究結果を出してよいポジションをとりたい、認めてもらいたいという気持ちはよくわかりますが、それ以前に、実験、結果、考察と確実な結論をに導くことができる、真実を知ることができる「科学者」であることを忘れてはならないと思います。

 

関連リンク

Giving Proper Credit

Sames Retracts More Papers

公益通報者保護制度ウェブサイト 内閣府国民生活局

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 人が集まるポスター発表を考える
  2. がん代謝物との環化付加反応によるがん化学療法
  3. 2014年ケムステ記事ランキング
  4. 強塩基条件下でビニルカチオン形成により5員環をつくる
  5. C-CN結合活性化を介したオレフィンへの触媒的不斉付加
  6. 進化する高分子材料 表面・界面制御 Advanced:高分子鎖デ…
  7. 生体医用イメージングを志向した第二近赤外光(NIR-II)色素:…
  8. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」①(解答編…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 飲むノミ・マダニ除虫薬のはなし
  2. SciFinder Future Leaders プログラム体験記 まとめ
  3. (1-ジアゾ-2-オキソプロピル)ホスホン酸ジメチル:Dimethyl (1-Diazo-2-oxopropyl)phosphonate
  4. 1日1本の「ニンジン」でガン予防!?――ニンジンの効能が見直される
  5. 化学企業のグローバル・トップ50
  6. 炭素をつなげる王道反応:アルドール反応 (2)
  7. 「日本研究留学記: オレフィンの内部選択的ヒドロホルミル化触媒」ー東京大学, 野崎研より
  8. トーマス・レクタ Thomas Lectka
  9. 学振申請書の書き方とコツ
  10. 福住 俊一 Shunichi Fukuzumi

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年6月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP