[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第165回―「光電変換へ応用可能な金属錯体の開発」Ed Constable教授

[スポンサーリンク]

第165回の海外化学者インタビューは、エドウィン(エド)・コンステイブル教授です。バーゼル大学化学科に所属し、応用配位化学と超分子化学を研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

正直に言うと、14歳のときに化学セットをもらったことがきっかけでした。私には素晴らしい先生がいましたが、自分で化学物質を使って遊べるようになるまで、化学は私の心を捉えませんでした。これは今や考えられないことです。私は1学期の間に、クラスの最下位からトップになりました。それまでは、作家か歴史家になりたいと思っていました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

おそらくは、野生動物の写真家か科学ジャーナリストでしょう。何をしているのか、なぜそれをしているのか、なぜそれが重要なのかを伝えることは、我々の仕事の中で必要不可欠でありながら、過小評価されがちな部分だと常々感じています。なぜ野生動物の写真かって?楽しいからですね。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

現在の主な研究テーマは、今後100年間に人類が直面する大きな問題、すなわち持続可能で環境的に受容可能なエネルギーポリシーの開発です。太陽電池、特に色素増感型太陽電池や、効率的な次世代照明用OLEDや発光電気化学セルの開発に向けての大規模な研究プログラムを組んでいます。私たちの目標は、ルテニウムやイリジウムのような希少で高価な元素を、地球上に豊富に存在する第一列遷移金属で置き換えることです。

Q.あなたがもし、歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

また、いい質問ですね。悩みに悩んで、最終的にパラケルスス(Philippus Aureolus Theophrastus Bombastus von Hohenheim)に決めました。彼はバーゼル大学で私の前任者だったというだけでなく、錬金術、魔法、科学の間で活躍してきました。彼は間違いなく最初の創薬化学者の一人でもあります。何が彼を駆り立てたのかを知りたいと思います。また、彼は非常に気難しい人物だったようですから、面白いディナーになるでしょう。¥

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

半年ほど前に行った、[Ru(dmso)4Cl2]のクイック&ダーティな合成です。RuCl3.3H2OをDMSO中に加熱して、結晶を回収するだけです。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

やれやれ、「無人島ディスク」にいるような人間になったことなんてこれまで無いですが。

本は、繰り返し読んで、いつも新しい発見があるようなものがいいですね。無人島には必ずあるという聖書やシェークスピアは抜きにして、「サキ」(H.H.マンロー)の全集を選びます。彼はエドワード朝時代に活躍した愉快で残酷な短編小説家で、1914~1918年の世界大戦で失われた数多の才人の一人です。

[amazonjs asin=”B002RI9DII” locale=”JP” title=”The Complete Short Stories (English Edition)”]

音楽は、もっと難しいですね。確かにクラシックはないです。iPodの携帯はを許されていないので、レナード・コーエンドリー・プレヴィンアル・スチュワートザ・スミスピンク・フロイドの中から選ぶことになりますね。非常に難しいですが、バランス的にはピンク・フロイドの「The Wall」でしょうか。

[amazonjs asin=”B00004CZIZ” locale=”JP” title=”Pink Floyd The Wall DVD Import”]

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

Achim Mueller氏です。 彼のことはよく知っていますし、彼の答えはユニークな精神へのユニークな洞察を与えてくれることでしょう!

 

原文:Reactions – Ed Constable

※このインタビューは2011年7月21日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第34回「ポルフィリンに似て非なるものを研究する」忍久保洋 教…
  2. 第35回 生物への応用を志向した新しいナノマテリアル合成― Ma…
  3. 第120回―「医薬につながる複雑な天然物を全合成する」Richm…
  4. 第105回―「低配位有機金属錯体を用いる触媒化学」Andrew …
  5. 第三回 北原武教授ー化学と生物の融合、ものつくり
  6. 第154回―「ランタノイド発光化学の生物・材料応用」Jean-C…
  7. 第117回―「感染症治療を志向したケミカルバイオロジー研究」Er…
  8. 第148回―「フッ素に関わる遷移金属錯体の研究」Graham S…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 理論的手法を用いた結晶内における三重項エネルギーの流れの観測
  2. 二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!
  3. 触媒化学を基盤に展開される広範な研究
  4. ブートキャンプ
  5. 自転車泥棒を臭いで撃退!?「スカンクロック」を考案
  6. 虫歯退治に3種の抗菌薬
  7. MEDCHEM NEWS 32-4 号「創薬の将来ビジョン」
  8. トムソン:2007年ノーベル賞の有力候補者を発表
  9. 一人三役のリンイリドを駆使した連続光触媒反応の開発
  10. ヨアヒム・ザウアー Joachim Sauer

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年9月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

【産総研・触媒化学研究部門】新卒・既卒採用情報

触媒部門では、「個の力」でもある触媒化学を基盤としつつも、異分野に積極的に関わる…

触媒化学を基盤に展開される広範な研究

前回の記事でご紹介したとおり、触媒化学研究部門(触媒部門)では、触媒化学を基盤に…

「産総研・触媒化学研究部門」ってどんな研究所?

触媒化学融合研究センターの後継として、2025年に産総研内に設立された触媒化学研究部門は、「触媒化学…

Cell Press “Chem” 編集者 × 研究者トークセッション ~日本発のハイクオリティな化学研究を世界に~

ケムステでも以前取り上げた、Cell PressのChem。今回はChemの編集…

光励起で芳香族性を獲得する分子の構造ダイナミクスを解明!

第 654 回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 協奏分子システム研究セ…

藤多哲朗 Tetsuro Fujita

藤多 哲朗(ふじた てつろう、1931年1月4日 - 2017年1月1日)は日本の薬学者・天然物化学…

MI conference 2025開催のお知らせ

開催概要昨年エントリー1,400名超!MIに特化したカンファレンスを今年も開催近年、研究開発…

【ユシロ】新卒採用情報(2026卒)

ユシロは、創業以来80年間、“油”で「ものづくり」と「人々の暮らし」を支え続けている化学メーカーです…

Host-Guest相互作用を利用した世界初の自己修復材料”WIZARDシリーズ”

昨今、脱炭素社会への実現に向け、石油原料を主に使用している樹脂に対し、メンテナンス性の軽減や材料の長…

有機合成化学協会誌2025年4月号:リングサイズ発散・プベルル酸・イナミド・第5族遷移金属アルキリデン錯体・強発光性白金錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年4月号がオンラインで公開されています!…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP