[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

くすりに携わるなら知っておきたい! 医薬品の化学

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4840752451″ locale=”JP” title=”くすりに携わるなら知っておきたい! 医薬品の化学”]

概要

本書は、月刊誌「PHARM TECH JAPAN」で4年間にわたり連載した好評企画をまとめたもので、第I部「医薬品を支える化学」、第II部「創薬を目指す医薬品化学」、第III部「最近の創薬に思う」の三部構成である。それぞれを独立して読むこともでき、研究者だけでなく、薬剤師、薬学部生、その他、くすりに携わるすべての人に読んでいただきたい1冊。「グレープフルーツジュースの謎」では、その謎を構造式から紐解き、その他にも「セルロースはなぜ水に溶けないの」?など、有機化学の視点からさまざまな現象の謎を解明する指南書。

対象

  • 創薬・医薬品合成に興味がある方
  • 薬学系の大学生

解説

著者の2人とお会いしお話することがあり、ちょうど完成したこの書籍を献本いただいた。著者のひとり、夏苅氏は武田薬品工業で創薬研究所所長まで歴任したバリバリのお薬合成屋さんである。その後、大学に移り帝京大学時代に高橋教授(現東京理科大学・教授)と月刊誌に共同執筆した内容をまとめて書籍として発売したようである。内容は、三部構成。

第一部は医薬品を支える有機化学として、有機化学の基礎から説明を行っている。とはいえ、普通の有機化学の教科書と違うのはタイトル通り、医薬品を理解するための有機化学の基礎だということだ。もちろん、酸・塩基、共鳴構造・キラリティー、置換・付加反応、カルボニルの化学という低分子の化合物から生体分子の構成要素であるタンパク質(アミノ酸・ペプチド)や糖まで俯瞰して解説してある。しかし、その裏には「医薬品の構造や薬理を説明するために最低限の知識を伝えるよ」という著者の意思が見え隠れしている(そう思うのは私だけか?)。もちろん途中に、何度も医薬品に関するコラムが登場する。

基礎的内容のあとは、一転して、ノーベル賞と有機合成・光化学・そして有機触媒など、古典的から最新の有機化学まで誘う形で第一章が終わる。もちろん、生物化成物質にこれらがどう関わっていくのかという解説付きである。

第二部は、創薬を目指す有機化学。創薬化学の用語(バイオアイソスターやファーマコア、拮抗薬、阻害薬・ルールオブファイブなど)がばんばんでてくる。ただ中身は難解なものではなく、読み物として読めるレベルの創薬化学の基礎的な内容である。第一部でまなんだ有機化学の基礎に加えて、創薬化学で知っておいてほしい用語を解説し、なにをいっているのかわからない!という状態を防ぐためのものであろう。

さらには、創薬化学におけるフッ素の重要性、プロドラッグ、キラルスイッチ医薬品、軸不斉医薬品、フラットランドからの脱出など、実際に発売されている医薬品の例を示し解説している。この部分もかなり読み物要素が強い。

第三部は、最近の創薬に思う、ということで、完全に読み物だ。創薬化学に興味があるひとならば、基礎的な内容を学んでいる間にこちらから読んでしまう人がいるかもしれない。

というわけで、全体的に読み物要素が強く、独学でも読み進めていくことができるようになっている。有機化学の基礎的な部分は大学学部1年生から3年生程度までであるが、創薬化学に関してはかなり細かい基礎用語まで網羅している。講義に使えそうな内容も多々見られたので、参考にしたいと思う。

紙面のほんの一部を雰囲気がわかるように適当に掲載

関連書籍

[amazonjs asin=”4274506916″ locale=”JP” title=”創薬科学入門 ―薬はどのようにつくられる? (改訂2版)”] [amazonjs asin=”4807917064″ locale=”JP” title=”化学系薬学II(スタンダード薬学シリーズII-3): 生体分子・医薬品の化学による理解 (スタンダード薬学シリーズ2)”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 【書籍】セルプロセッシング工学 (増補) –抗体医薬から再生医…
  2. 一流ジャーナルから学ぶ科学英語論文の書き方
  3. ついにシリーズ10巻目!化学探偵Mr.キュリー10
  4. 有機化学美術館へようこそ―分子の世界の造形とドラマ
  5. 論文・学会発表に役立つ! 研究者のためのIllustrator素…
  6. 【書籍】新版 元素の小辞典
  7. Side Reactions in Organic Synthe…
  8. 【書籍】有機スペクトル解析入門

注目情報

ピックアップ記事

  1. 1st Maruoka Conference on the Frontier of Organic Synthesis and Catalysis
  2. プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御
  3. 荷電π電子系の近接積層に起因した電子・光物性の制御
  4. 「オプトジェネティクス」はいかにして開発されたか
  5. 位置多様性・脱水素型クロスカップリング
  6. 工程フローからみた「どんな会社が?」~OLED関連
  7. 大村氏にウメザワ記念賞‐国際化学療法学会が授与
  8. フェティゾン試薬 Fetizon’s Reagent
  9. 化学の学びと研究に役立つiPhone/iPad app 9選
  10. 柔粘性結晶相の特異な分子運動が、多段階の電気応答を実現する!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

光でゆがむ分子 ― アルミニウム錯体の対称性の破れをコヒーレント振動分光で観測

第711回のスポットライトリサーチは、九州大学大学院理学研究院 化学部門(分光分析化学研究室)・江原…

有機合成のカラム精製に革新を 〜モノリスカラムで変わる「研究のスピード」〜

筆者の研究室では有機合成を行っています。合成も大変ですが、何より大変なのが精製操作。最近、とある…

酸素は系内に入り込み続ける【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

アンモニウム構造によりラジカル種の発生位置を完全に制御!

第710回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の榊原 陽太(さかきばら …

化学つれづれ草【ある研究者の回想】

概要物理化学者で量子機能材料を専門とする著者によるエッセイ集.化学者としての研究,教育,人生…

第60回有機反応若手の会

開催概要有機反応若手の会は、有機化学分野で研究を行う全国の大学院生を中心とした若手研究者が集い、…

ノーベル賞受賞者と語り合う5日間!「第18回HOPEミーティング」参加者募集!

申し込みはこちら概要主催:独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)開催地:神奈川…

光触媒による高効率なCO2還元の実現―まさかの光を弱く当てることが重要だった―

第709回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 理学院(前田研究室)博士後期課程2年の仲田竜一 …

「π-πスタッキング」という言葉が生む誤解【芳香環の相互作用を見直す: 前編】

芳香環が平行に並んで近接しているとき、その構造を「π–π スタッキング」と表されることがよくあります…

一重項酸素によるC(sp2)−P結合切断を用いた長波長光によるリン化合物のアンケージング

第 708 回のスポットライトリサーチは、同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 5…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP