[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

アントンパール 「Monowave300」: マイクロ波有機合成の新武器

[スポンサーリンク]

 

反応がなかなか進まない!もっと即座に反応を終わらせたい!力ずくでもなんとかしたい!

そんな貴方にぴったりな反応装置があります。過激な?反応条件で反応を最速で終わらせることが可能なマイクロ波合成装置です。言わずと知れた現在では研究室に1台は「あったらいいな」的な存在になりました。筆者の研究室でもバイオタージの「initiator」にお世話になっています。他にもマイクロは合成装置はいくつか製品化されており、使ったことがありますが、initiatorの手軽にできる操作性と信頼性に勝てるマイクロ波合成装置はないと思っていました。

今回は、バイオタージの牙城を崩すことができる可能性のある新しいマイクロ波合成装置

アントンパール・ジャパン 「Monowave300」

をご紹介したいと思います。

マイクロ波で有機合成覚書

少しだけ思い出を語ります。筆者が学生であった時にももちろんマイクロ波で有機合成を加速するという報告はありましたが、いまいち本当なの?という気持ちでした。当時の利用といったら、本物の電子レンジでモレキュラーシーブス加熱して水を飛ばす。こういう利用法していた人は多いのではないでしょうか。ですから反応も電子レンジで行うと思っていました。

しばらくして、研究室に当時CEMのマイクロ波装置「Discover」(下図)が導入された時に、これは面白いぞと思い、こぞって反応をかけた思い出があります。ただ、残念ながら容器が専用で少量スケールであったり、なかなかスタートしてくれなかったり、温度が上がらない、しまいには金属試薬が入っていて加熱し過ぎると何度も爆発し、故障とあまりいいイメージを持っていませんでした(当時はまだまだ新しい機器だったので問題が多数あったのかもしれませんので悪しからず)。

DiscSP-D80_400px.png

図 CEM「Discover」この装置には泣かされました

米国で博士研究員を行っていた際に先に記載したバイオタージのinitiatorに出会い、タッチパネルで簡単に行える操作性と機械の安定性から結構使えるのだなと考えを新たにしました。今の研究室ではかなりの高温反応や触媒反応が多く、反応が遅い時や長時間かけても終わらない時などはすぐに終わらせることができるので重宝しています。還流管を使わず、封管して反応をかけることのできることも利点ですね。

なぜ反応が加速するのか?それには諸説ありますが、実際に、マイクロ波の有機合成への利用のデータ(下図)をみてもらえればわかるように、最近では年間1000件ほどの論文がでており、多用されていることがわかります。2008年のデータなので現在ではもっと使われているでしょう。

 

microwave1.png図. マイクロ波合成が含まれる記事・論文数

新しいマイクロ波合成装置登場

そんなある日、アントンパール・ジャパンという聞きなれない会社から連絡があり、ぜひ弊社のマイクロは合成装置をデモしてみませんか?というご相談を受けました。普通なら、面倒くさいので断るのですが、筆者の知人のW宮さんからのご紹介なんです、と言われたら仕方がありません。W宮さんは購入したようでとっても重宝しているという話でした。それでも、initiatorあるし、2台はいまのところいらないしと思っていましたが、どんな経緯かデモすることになったのです。いやいやその前に「アントンパール・ジャパンって聞いたことない!」と言われる方がいると思うので(筆者もそうでした)、せっかくなんで説明します。

ap_logo.jpg

 

アントンパール・ジャパンとマイクロ波合成装置「Monowave 300」

沿革をみてみると本社はオーストリアにあり、産業分野,研究分野で使用される高性能計測機器やラボ用計器メーカーであることがわかります。今回デモしたマイクロ波合成装置「Monowave 300」はマイクロ波有機合成で著名な研究者であるOliver Kappe教授の研究室出身の学生が、アントンパールでKappe教授の欲しいマイクロ波合成装置を制作したのが始まりだそうです。つまり、「合成化学者のわがままたっぷり入れ込んだ機器」といえばわかりやすいでしょうか。見た目は、トップの図や下図のとおりとってもコンパクトでスタイリッシュな外観をしています。

Monowave 300 28.jpg

 

 

どんな感じでした?

一言で言えば、数名の学生にも試してもらいましたが、使用した学生からも一様に好評価であり満足する製品でした。まずはとっても操作性が高く使いやすいメインパネル。反応の始まりや温度、圧力、電力のかかり具合が一目でわかります。initiatorよりももう少し現代バージョンになったイメージでしょうか。

MainPanel.png

図 操作画面

 次に、オートサンプラー。マイクロ波合成だとスケールアップしにくいという問題をよく聞きます。1つの反応は確かに20mL程度の溶媒しか使えませんが、オートサンプラーを使って並列にかければ、200?300mLの反応も容易にかけることができます。オートサンプラーの操作画面も直感的でとても使いやすい感じでした。またオートサンプラー自体もコンパクトに上に載せるだけなのでラクチンです。

OpenAccessPanel.png図 オートサンプラー操作画面

 次に注目が容器。見た目は他のマイクロ波合成装置のものと同じですが、実はかなり肉厚で他社に比べて強度があるように思えます。実際かなり強いらしいです。繰り返し使っても問題ないように思えます(使って本当に大丈夫かは責任持てませんので悪しからず)。容器のラインナップも他社と同様で微量スケールからそこそこ大きなスケールまでの容器がそろってきます。さらに、最高の強度をもつシリコンカーバイド容器(図の左下黒い容器。これはちょっと値段が高い)もあるそうです。

1.jpg図 マイクロ波合成装置の反応容器

 さらに特徴的なところは容器のフタ。通常は専用のフタを閉める道具で封管状態にして、反応後さらに専用の道具であけますが、この容器のフタは、手で簡単に閉じれ、簡単に開けることができます。これ、結構便利です。便利なだけでなく、フタに自由度がありますので過度の圧力による「爆発」も防ぐことができます。非常に大きな圧力がかかった時のみ、少しだけフタがずれて圧力を逃がす構造になっているのです。「爆発」して修理をせざるを得なくなったひとには大変オススメですね。もちろん繰り返し利用可能です。

SnapCap.png

図 ワンタッチで装着・取り外しできるキャップ

 最後は、根幹であるマイクロ波の性能ですね。他社のものに比べて、非常に高い出力が可能で(800Wまで, 200V電源使用時)どんな非極性溶媒でも同じように温度を挙げることができるようです。実際反応をかけてみましたが、スムーズに設定温度に達しました。その他にも、容器の中身の温度を正確に制御できる内温センサー、反応中が見たい方にはオプションでカメラをつけて、リアルタイムで反応観察できるようです。

ではではまずは良い点だけ、まとめます。

 

・使いやすい操作画面

・使いやすいワンタッチキャップ(繰り返し使用可。全容器共通)

・直感的に使えるオートサンプラー操作画面

・カメラによるリアルタイムの反応系観察

・こだわりの安全機能がもたらす安心設計 沸点以上のケミストリー

・内部温度計と外部温度計の同時計測による精密な反応検証が可能

・シリコンカーバイド容器による急速加熱も可能

 

 

欠点はないの?

化学者としてステマでなくしっかり評価したいので短所も述べさせていただきます。まずは最高出力を出したければ200Vの電源が必要であること。あとは、他社に比べて後発品であり、知名度低く、信頼性が未知数であること。もう一つは、これが最も大きな短所ですが、反応後容器を冷やすために空気を吹き付けるのですが、そのためのコンプレッサーが必要で、スペース的に邪魔、さらに音が結構うるさいことです(常に音がするわけではありません)。以上の欠点さえクリアすれば(他の長所で相殺できれば)、正直オートサンプラー付きにもかかわらず、ありえないほどのお得価格を出していただいたので、有機合成の武器として大変満足できるものだと思いました。ちなみに、デモを主体で行った研究室が1台購入したようです。著者らも前向きに検討しています。

というわけで今回、アントンパール社の「Monowave300」を紹介してみました。デモも1週間ほど行えるようなのでぜひデモをして体験してみてください。貴方にとって最高の武器になるかもしれませんよ!連絡・交渉の際は「ケムステをみた」といえばスムーズに進むかもしれませんね!?

お問い合わせ先:

株式会社アントンパール・ジャパン

131-0034 東京都墨田区堤通1-19-9 リバーサイド隅田13階

Tel:03-4563-2500

Fax:03-4563-2501

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 砂糖水からモルヒネ?
  2. オープンアクセスジャーナルの光と影
  3. ポンコツ博士の海外奮闘録② 〜博士,鉄パイプを切断す〜
  4. ヒバリマイシノンの全合成
  5. 可視光照射でトリメチルロックを駆動する
  6. 化学者のためのエレクトロニクス入門③ ~半導体業界で活躍する化学…
  7. 誰でも参加OK!計算化学研究を手伝おう!
  8. 銀を使ってリンをいれる

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 森本 正和 Masakazu Morimoto
  2. オキシトシンを「見える化」するツールの開発と応用に成功-謎に包まれた脳内オキシトシンの働きの解明に新たな光-
  3. 室温で緑色発光するp型/n型新半導体を独自の化学設計指針をもとにペロブスカイト型硫化物で実現
  4. 「先端触媒構造反応リアルタイム計測ビームライン」が竣工
  5. アフマトヴィッチ反応 Achmatowicz Reaction
  6. 第53回「すべての化学・工学データを知識に変える」金子弘昌准教授
  7. 実験・数理・機械学習の融合による触媒理論の開拓
  8. d8 Cu(III) の謎 –配位子場逆転–
  9. MEXT-JST 元素戦略合同シンポジウム ~元素戦略研究の歩みと今後~
  10. 虫歯とフッ素のお話② ~歯磨き粉のフッ素~

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

注目情報

最新記事

三井化学、DXによる企業変革の成果を動画で公開

三井化学株式会社は、常務執行役員 CDO 三瓶 雅夫による、三井化学グループ全社でのDX推進の取り組…

消光団分子の「ねじれ」の制御による新たな蛍光プローブの分子設計法の確立

第444回のスポットライトリサーチは、東京大学薬学部/大学院薬学系研究科 薬品代謝化学教室に在籍され…

マテリアルズ・インフォマティクスの手法:条件最適化に用いられるベイズ最適化の基礎

開催日:2022/11/30  申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

製薬系企業研究者との懇談会

日本薬学会医薬化学部会にある創薬ニューフロンティア(NF)検討会は,「学生のモチベーションやキャリア…

電子1個の精度で触媒ナノ粒子の電荷量を計測

第443回のスポットライトリサーチは、九州大学大学院工学研究院エネルギー量子工学部門 超顕微解析研究…

ハットする間にエピメリ化!Pleurotinの形式合成

天然物Pleurotinの形式合成が報告された。可視光による光エノール化/Diels–Alder反応…

【ジーシー】新卒採用情報(2024卒)

弊社の社是「施無畏」は、「相手の身になって行動する」といった意味があります。これを具現化することで存…

【書評】科学実験でスラスラわかる! 本当はおもしろい 中学入試の理科

大和書房さんより 2022年9月に刊行された『科学実験でスラスラわかる!…

たったひとつのたんぱく質分子のリン酸化を検出する新手法を開発

第442回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 理学院化学系(西野研究室)に所属されていた原島 …

第34回ケムステVシンポ「日本のクリックケミストリー」を開催します!

2022年のノーベル化学賞は「クリックケミストリーと生体直交化学」の開発業績で、バリー・シャープ…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP