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ReaxysPrize2015ファイナリスト発表!

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この時期毎年好例となりました、国際賞Reaxys PhD Prize。有機化学・無機錯体分野の博士課程の学生もしくは博士取得後の1年以内の方が対象です。今年も世界中400件以上の強者の応募があったようですが、先日その中からフィナリスト45名が決まりました。ここから最終的に3人の受賞者が選ばれることとなります。ケムステではここ数年ファイナリストおよび受賞者の研究を写真付きで紹介しています。過去のファイナリストは以下のリンクから!

過去のReaxys Ph.D Prizeファイナリスト(日本人中心)2014年|2013年2012年

過去のReaxys Ph.D Prize受賞者 2014年 | 2013年 |2012年 | 2011年 | 2010年

では、今年もファイナリストに選ばれた日本人を中心として紹介しましょう!

 

日本からのREAXYS PH.D PRIZE 2015ファイナリスト

2015-06-11_14-57-06

(写真は勝手に掲載させていただいています。問題のある方はご連絡いただければ幸いです。)

日本の大学で博士を取得もしくは博士課程在学で選ばれたファイナリストは以下の6名。

おめでとうございます!では一人ひとりファイナリストへ選定された研究内容を簡単にみてみましょう。

 

酸化反応条件で抗酸化物質を効率的につくる 林 裕樹さん

2014-07-22_07-49-161

 

林 さんは現在名古屋大学石原研究室の博士課程後期3年生。研究は以前ケムステでも紹介いたしました(記事はこちら)。光学活性なクロマン類の大量供給可能な化学合成法の開発です。具体的には第四級アンモニウムヨージドを触媒として用いて、不斉脱水素型カップリング反応を実現しました。

 

“High-turnover hypoiodite catalysis for asymmetric synthesis of tocopherols”

Uyanik, M.; Hayashi, H.; Ishihara, K. Science2014345, 291.

DOI: 10.1126/science.1254976

 

反芳香族性のメビウスの輪をつくる 東野智洋さん

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東野さんは京都大学大須賀研究室出身。現在は同大学大学院工学研究科助教(今堀研究室)となっています。研究対象はメビウス芳香族性分子(メビウスの帯のような表裏の区別のないトポロジー上に共役系を持つ化合物)。ヒュッケル則と異なり、4nで芳香族性、4n+2で反芳香族性を示すことが理論計算によって明らかになっており、メビウス芳香族性(4n)をもつ分子が多く合成されてきましたが、研究当時、反芳香族性(4n+2)を示す分子は単離されていませんでした。そこで、[28]ヘキサフィリンから誘導して[30]ヘキサフィリンを合成・単離し、反芳香族性を示すことを明らかにしました。

“Möbius Antiaromatic Bisphosphorus Complexes of [30]Hexaphyrins”

Higashino, T.; Lim, J. M.; Miura, T.; Saito, S.; Shin, J. Y.; Kim, D.; Osuka, A. Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 4950.

DOI: 10.1002/anie.201001765

 

プロスタグランジンの3ポット合成 梅宮 茂伸さん

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梅宮さんは東北大学林研究室出身。他に東北大学の化学専攻賞や日本化学会の学生講演賞などを受賞し、現在はスクリプス研究所のBaran研究室で博士研究員をしています。ファイナリストに選ばれた研究はプロスタグランジンの3ポット合成。短工程、同一容器で行なうことによって超工程で合成を完了する「ポットケミストリー」の好例です。多段階を要していた合成化学のマイルストーンであるプロスタグランジンを7工程、3ポット、総収率14%で合成することに成功しています。

“Pot Economy in the Synthesis of Prostaglandin A1 and E1 Methyl Esters”

Hayashi, Y.; Umemiya, S. Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 3450.

DOI: 10.1002/anie.201209380

 

融解する配位高分子結晶 梅山大樹さん

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梅山さんは京都大学北川研究室出身。現在はスタンフォード大のKarunadasa研究室で博士研究員をしています。学生時代の研究は融解する配位性高分子結晶の合成。合成した多孔性錯体PCPは、固体ー液体の相転移がみられ、さらに可逆的であることを明らかとしました。この研究を始めとした研究成果により京都大学総長賞を受賞しています。

“Reversible Solid-to-Liquid Phase Transition of Coordination Polymer Crystals”

Umeyama, D.; Horike, S.; Inukai, M.; Itakura, T.; Kitagawa, S. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 864.

DOI: 10.1021/ja511019u

 

改良ローダミンで生きた細胞をみる 宇野 真之介さん

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宇野さんは東京大学浦野研究室出身。現在も博士研究員として浦野研究室に勤務しています。蛍光色素ローダミンの酸素原子に化学スイッチ機能をつけケイ素をに変え性能を上げた”改良ローダミン”を合成して、微小管の動く様子を約50ナノメートルの高い空間分解能で観察する(超解像蛍光イメージング)ことに初めて成功しました。その成果により、全分野の博士課程学生を対象とする日本学術振興会の育志賞を受賞しています。

” A spontaneously blinking fluorophore based on intramolecular spirocyclization for live-cell super-resolution imaging”

Uno, S.-N.; Kamiya, M.; Yoshihara, T.; Sugawara, K.; Okabe, K.; Tarhan, M. C.; Fujita, H.; Funatsu, T.; Okada, Y.; Tobita, S.; Urano, Y. Nature Chem. 2014, 6, 681. DOI: 10.1038/nchem.2002

 

固定化触媒で1,4-付加 安川知宏さん

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安川さんは東京大学小林研究室出身。現在は同大学のグリーン・サステイナブル ケミストリー社会連携講講座で特任助教をしています。研究は固定化金属触媒による反応開発。林民生先生(京大名誉教授)らによって開発されたキラルジエン配位子を用いたRh触媒による1,4付加反応を固定化触媒化し、アリールボロン酸類のエノンへの不斉1,4-付加反応を達成しています。反応は高収率・高選択性で進行し、均一系触媒に比べ反応性が高く、かつ触媒の回収・再利用が可能です。

“Polymer-Incarcerated Chiral Rh/Ag Nanoparticles for Asymmetric 1,4-Addition Reactions of Arylboronic Acids to Enones: Remarkable Effects of Bimetallic Structure on Activity and Metal Leaching”

Yasukawa, T.; Miyamura, H.; Kobayashi, S. J. Am. Chem. Soc.  2012134, 16963.

DOI: 10.1021/ja307913e

 

日本人以外のファイナリスト

日本人に限定したので記載しませんでしたが、ファイナリストに残っているマセセ・タイタスさんはケニア出身ですが京都大学の内本研究室で学位をとり、現在は産業総合技術研究所で勤務しているようです。

またそれファイナリスト達も強者揃い。米国UCバークレーのHartwig研究室でピリジンのC-Hフッ素化(DOI:10.1126/science.1243759)を達成したPatrick Fierさんや、スクリプス研究所のYu研究室でsp3C–Hアリール化、アルケニル化反応(DOI: 10.1126/science.1249198)を報告したJian Heさん、ペンシルバニア大学のMolandar研のフォトレドックスニッケル触媒で有機ホウ素クロスカップリング( DOI; 10.1126/science.1253647)に成功したJohn Tellisさんなどは受賞者の有力候補でしょう。

なんとなく今年は日本人の受賞はありえそうな気がします。なにはともあれ、ファイナリストに選ばれた皆様おめでとうございます!

 

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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