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化学者のつぶやき

男性研究者、育休を取る。

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初めましてjoeです。化学企業研究職5年目となります。

先日息子が生まれ、3カ月育児休業を取りました。男性研究者で育休を取った経験のある方は少ないと思い、育休の体験談や育休後の仕事復帰の様子などについて記事を書かせていただきます。

色々な将来設計を考える中で何か皆様の参考になれば幸いです。

男性の育休の実績は企業を選ぶ指標になる。

結婚もしていないので育休なんてまだ遠い話だと思っている学生の読者のみなさんにも聴いて欲しいことがあります。それは、あくまで傾向ですが「男性の育休実績がある」という会社は他の福利厚生もかなりしっかりしていることです。

なぜなら、男性の育休制度の推進は今まで後回しにされがちだったからです(今多くの企業が力を入れ始めた部分ですね)。労働時間や賃金、手当、女性の育児休業制度などが優先されるのは当然のことと思います。

また、悲しいことですが同じ会社でも部署によって取りやすさが異なります。忙しい繁忙期に違いがあったり、夜勤があったりと様々ですのでそこは仕方ないかもしれません(上司の当たりはずれもあります)。全部署がしっかり育休の取れる環境であるならばそれは素晴らしい企業です。

ちなみに研究職は比較的休みやすいです。これは長期的な視線で利益を求めるという仕事の性質が理由です。仕事の多い管理職も育休は取れると思います。私の部署で上司が二週間リフレッシュ休暇を取ったことがありましたが、仕事は回りました。

3カ月の育休のメリット

メリット1【育児面】

当然ですが育児を妻と二人でずっと行うことができたという点です。新生児、乳児の時期に育児をしなかった会社のおっさんは今でも奥さんに小言を言われ家で肩身狭いそうです。

3カ月家から出ずに世話していたわけではなく、たまにどちらかが外出してリフレッシュしたり、二人で公園やショッピングモールに行って楽しんだり充実していたと思います。家族三人でゆったりと過ごせることなんてそうないですし、何より育児を通して息子への愛情と「親」という自覚が強まりました。

育児をしていると常々一人ではきついなと感じました。大泣きした時が一番つらいですね。原因がわからないとこちらまでパニックになってしまいます。二人なら、「泣いちゃったね」と話しながら対応できますが、一人だとただただ焦りと苛立ちを感じます。

今回は研究者としての視点で書かせていただくので詳細は割愛します(調べるとイクメンブログが多くあります)が、大変ながら有意義な時間を過ごせました。

育休のメリット2【研究面】

仕事の進捗は会社用PCを持ち帰っていたのである程度把握できました。自己判断ですが同僚とのやり取りもできます。スマホやPCの持ち帰りに関しては、会社の方針によると思います。しかし、制度に「労使の話し合いの上」という文言があるので、会社と交渉すれば融通を聞かせてくれます。また、育休の法律は都度改定しているので仕事との折り合いがつきやすくなりました(条件が合えば二回取れたり、ある程度の勤務が許されたり)。そのため半育休なんてスタイルも可能になりました。

さて、研究に対するメリットはあったのかという点ですが、意外にもありました。

それは考える時間が得られたという点です(二人で育児ができたからこそです)。

泣いている時は別ですが育児中はずっと抱っこしているだけなど、体は動いていても考える時間はかなりあります。さらに会社を離れることで視野が広がりました。抱っこしながらふと浮かんだアイディアをメモして、子が寝静まった頃に気になった反応を調べたり、勉強したりできましたね。今までできなかった部分を育休中に補えた気がします。研究とは関係ないですが、私は育休中に投資を始めたり梅酒作りを始めたりしました。妻も育休中に菓子作りや家計整理など色々と挑戦していました。

「自分のテーマだけ見ていては良い研究はできない、視野を広く持て」とかつて教授に言われましたが、まさしくその通りだなと思いました。考える時間が得られて、自分を見つめ直す良い機会となりました。

休み明けには残酷な現実が……………

育休明けは久々すぎて入社初日のような緊張感がありましたが、部署の皆は暖かく迎え入れてくれました。私を見つけては「何か久々に見る奴いるんだけど!」と絡んでくる話しかけてくださる先輩方が沢山いてとても安心しました。

しかし、同時に残酷な現実も突き付けられてしまいます。

以前やっていたテーマに私の付け入る隙は微塵もありませんでした。引継ぎが問題なく終了し、実験検討も次のステージに進んでいたため、理想的なことなのですが、ヘコみます。さらに引き継いだ後輩がとても成長していて、焦ります。組織とはそういうものと頭で理解していても「自分がいなくても仕事が進む」現実に動揺することは間違いないと思います。悲しいですが100%あなたがいなくても仕事は進みます。でもそれは大変良いことで、あなたの引継ぎや教え方が良かった証拠でもあるのです……………。

そしてもう一点。私が戻ってきたら実験室も執務室も別物になって、まさに浦島太郎状態でした。年度を跨いでしまったので、新人が増えたり、別チームが同じ部屋に移動したりしたのですよね。そのため実験器具も整頓され場所がガラリと変わっていました。

あなたが戻ってきた時、部署は外面も内面も、以前とは別物になっていることを知っておいてください…….。

まとめ

「男性は育休を取るべき」です。副次的メリットとして会社から離れ、視点が変わり、視野が広がると思います。さらに時間も増えるため、アイディアが浮かんだり、今までを見直したりする良い機会にもなります。仕事疲れもリフレッシュにもなりますね。ですが、一番の理由は育児が一人では不可能に近いからです。

育児に休みはないのですよね。仕事中休憩がありますが、育児には休憩すらありません。精神的には会社で仕事をしている方が楽です。一人で育児をする時は分かれないカラム精製に挑戦し続ける気分です。

今は休日の方が仕事本番という感じがします(育休明けた時は、仕事に行きたくありませんでしたが)。すぐに子も成長し新たな育児が増えるので、習得すべきことが多いです。今は離乳食をあげるのに苦戦しています。ぼちぼち夜泣きも始まりそうです。妻に頑張ってもらっている分、家にいる時くらいはしっかり育児しなければいけません。

今回は私の実体験を元に企業研究員の育休についてお話ししましたがアカデミックでも男性育休取得は可能なのかなと思います。
それは研究室の女性の先生が育休を取っていたのを見たからです。
講義は他大の先生を代役に立てて、研究テーマは同研究室の教授が引き継いでいたため、スムーズに復帰できていました。

育児は大変ですが自分の子は想像を遥かに超えてかわいいです。毎日そばにいたからなついてくれますし、私の愛情もものすごくなりました。息子が笑うだけでもう幸せです。親になるという自覚にも繋がりますので、是非育休を取ってみてはどうでしょうか。

関連書籍

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joe

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ごく普通の企業研究者です。育児奮闘中。カメも育ててます。

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