【2025/10/08 速報】
2025年ノーベル化学賞は「新しいタイプの結晶構造ーMOFの開発 (速報記事公開中)」を対象に、
北川 進 先生(日本・京都大学)、リチャード・ロブソン 先生(オーストラリア・メルボルン大学)、オマー・ヤギー 先生(アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校)の3名が受賞されました!
おめでとうございます!
ケムステ予想も見事的中しました!
当選者発表まで今しばらくお待ちください。
さて2025年秋、いよいよ今年もノーベル賞シーズンが到来します!
化学賞は日本時間 2025年10月8日 (水) 18時45分に発表予定です。
昨年 2024 年のノーベル化学賞は「タンパク質の計算による設計・構造予測」という理論化学 (AI) の分野を対象に、David Baker、Demis Hassabis、John M. Jumper の 3 名が受賞しました。
昨年は、化学賞の前日発表のノーベル物理学賞でも「人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的な発見と発明」に貢献した John Hopfield とGeoffrey Hinton が受賞しており、まさかの AI 関連 W 受賞という類を見ない年で、リストアップしておりながらも完全に予想を外しました…。
一方、SNSでの予想企画においては、昨今の AI ブームや直近のクラリベイト引用栄誉賞の影響もあり、3名を完全的中させたアカウントが16名と過去最高?の的中者数となりました。
2024年版の当選者発表記事はコチラ。
そして、もちろん今年もやりますケムステノーベル化学賞予想企画!
5年前より SNS ハッシュタグでの応募形式を採用していますので、お気軽にご参加いただけます。
「この化学者に違いない!全くわかんないけどこの化学者っぽい!」・・・とする各自の予想を、
というハッシュタグをつけて、SNS(X・Facebook・ケムステSlack)でつぶやいて頂きます!
後ほどハッシュタグを足がかりに的中者を追跡し、当選者10 名 (抽選)にAmazonギフト券 10,000 円をプレゼントします。
毎年恒例、
『SNS予想で盛り上がれ!2025年ノーベル化学賞は誰の手に!?』
参加方法
下記の受賞予想と2025年の候補者リストを参考にしながら、お持ちのSNSアカウント(X・Facebook)またはケムステSlackで、
というハッシュタグを付け、受賞が予想される「化学者名」と「受賞理由」を併記してつぶやいて下さい。
化学賞はなかなかズバッと当てられないので、今年も 1 アカウントあたりの予想投票数は上限無しとします。つまり気軽につぶやけばつぶやくほどチャンスは増えます!! アカウント種の個人・団体は問いません。
見事予想的中に至ったつぶやきは、可能な限りケムステスタッフが収集して抽選に附し、当選者にAmazonギフト券 10,000 円をプレゼントします!今年は当選者 最大 10 名です!
昨年のような全員的中はまず難しいと思うので、1名でも的中していれば当選可能性はあります!
ケムステのリストには全ての候補者が網羅されているわけではありませんので、自分が予想する化学者がリストになくても、自由につぶやいていただいて OK です。良さそうな候補者は、こちらでも適宜リストに追記させていただくことがあります。
発表直前(日本時間 2025年10月8日(水) 18時44分59秒)までに行われた投稿を有効投票とします。滑り込みでもOKですので、ぜひぜひご参加ください!
※受賞理由・ハッシュタグが書かれていないと有効投票にはなりませんので、必ずご記載くださいね!
以下、いつものようにいくつかの資料・ケムステ独自の考察と予想を、投票の参考資料として記載します。
受賞分野の周期表 (1970-2024)
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例年掲載している受賞分野一覧表、2024年の業績は理論化学 (構造生物学でもあるかもしれませんが) として、上記のとおりアップデートしています。例年、傾向として見て取れるのは下記の通り。
1. 圧倒的に有機化学、生化学分野からの受賞が多い
2. 有機化学は4〜5年に一度のペースで受賞している (2021、2022年は連続受賞)
3. 生化学は近年だと10年で4~5回の受賞ペース、うち半数は構造生物学領域 (2024年の関連分野でもある)
4. 分析化学や理論化学は授賞間隔が長い
5. 物理化学、無機化学は少ない
6. ここ数年は、単一分野に当てはめにくい研究業績が増えている
7. 発見・開発から受賞までの間隔が比較的短い場合も多い (10~20年程度…不斉有機触媒、クリックケミストリー、Al など)
2023年 (量子ドット) は2019年のリチウムイオン電池以来の無機 (材料) 化学からの受賞、そして昨年2024年の AI (理論化学) 分野の受賞と、周期性はますます読みづらくなっています。ただ、2021年の有機触媒、2022年のクリックケミストリーと2年連続の有機化学分野からの受賞例もあり、材料科学の分野で MOF (有機化学でもありますが) が 2023 年以来あまり間を開けずに来ても驚きではありません (昨年は外しましたが)。
多様性・ジェンダーの考慮は近年の社会的潮流からも読み取れますが、昨年・一昨年の化学賞は男性研究者3氏であったことを考えると、サイエンスとしての話題性・注目性・発展性がやはり選考において重要な割合を占めているのではないかと考えます。なお、女性の受賞者が少ないことに関しては、読売新聞からこういった記事も出ています。
登竜門賞の受賞者
ノーベル賞の対象となる学者には、その前に有名国際賞を授与されることがよくあります。受賞者をチェックしておけば、可能性の高い化学者が絞れるかも!? 化学賞と親和性の高い賞に加え、存命日本人化学者(受賞年)の一覧も記しておきます。
日経新聞の調査では、以下のような調査結果もあります。後述のクラリベイト引用栄誉賞も含め、参考にしやすいかと思います。
「ノーベル賞の前哨戦」とされる世界の41の有名な科学賞とノーベル賞の両方を手にした研究者を日本経済新聞が分析したところ、前哨戦から5年以内に6割がノーベル賞を受賞していた。
化学系
- ウルフ賞:菅裕明(2023)、藤田誠(2018)
- ロジャー・アダムス賞:山本尚(2017)
- プリーストリーメダル
- ベンジャミン・フランクリンメダル:澤本光男(2017)
- ロバート・ウェルチ化学賞
総合系
生命・医学系
他メディアの予想:2025年版
① クラリベイト・アナリティクス社 「引用栄誉賞」
毎年発表されている賞 (旧・トムソン・ロイター引用栄誉賞) で「各分野の論文引用数が上位0.1%である」という客観的データをもとに、現在注目を集める分野を育てた化学者を選び出しています。受賞予想企画の一面もあるとされています。過去の受賞者からもノーベル賞受賞者が多く出ていますので、参照価値は高いでしょう。これまでは「受賞後すぐさまノーベル賞」という性質でもない印象がありましたが、2024年に受賞した3名は直後に全員ノーベル化学賞受賞の運びとなりました。とは言えその例は少し特殊とも言えそうですので、少し前に受賞した化学者をチェックするのが的中の近道かも?
2025年の引用栄誉賞・化学賞の受賞者は以下の5名となりました。
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・細胞内の生化学的構造の形成における、相分離した生体分子コンデンセートの役割に関する発見
Clifford Paul Brangwynne (プリンストン大学・アメリカ)
Anthony A. Hyman (マックス・プランク分子細胞生物学・遺伝学研究所・ドイツ)
Michael K. Rosen (テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター・アメリカ)・エネルギーの蓄積および変換技術における基礎的な進展と新規応用の開拓
Jean-Marie Tarascon (フランス高等師範学校)・単原子触媒の開発とその応用における先駆的貢献
Zhang Tao (中国科学院 大連化学物理研究所)
また、昨年 2024 年の引用栄誉賞化学部門は以下の3分野が選ばれています。
- タンパク質の3次元構造と機能の予測・設計への貢献 (Rosetta@home、AlphaFold の開発) → 2024年ノーベル化学賞!
David Baker (ハワード・ヒューズ医学研究所・ワシントン大学)
John M. Jumper (Google DeepMind)
Demis Hassabis (Google DeepMind)
- 水分解用光触媒と太陽光水素製造システムの構築に関する基礎研究
堂免 一成 (信州大学アクア・リジェネレーション機構・東京大学)
- 計算化学に革命をもたらしたカー・パリネロ法による ab initio 分子動力学計算法
Roberto Car (プリンストン大学)
Michele Parrinello (スイスイタリア大学・スイス連邦工科大学チューリッヒ校)
②各種メディアの論評記事(随時追記予定)
今回もリンクだけをご紹介します。各自でお読み頂き、予想にお役立て下さい (10/2 更新)。
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ニコニコ生放送・YouTube Live
2025年10月6日(月)(生理学・医学賞)、7日(火)(物理学賞)、8日(水)(化学賞)
各日17:30~19:00 ※放送時間延長の場合あり - ノーベル賞候補者での日中比較 (中国の科学技術 Science and Technology in China)
- 2025年のノーベル賞AI予想 (データ分析ラボ | 生成AI 最新トレンド)
- ノーベル賞は「周期性」「時代性」で予想 過去には自分の受賞を当てた人も 2年連続的中ライター、今年の注目点は? (東京新聞/有料会員限定記事)
- 10月6日からノーベル賞ウイーク 自然科学は坂口、佐川、北川氏ら注目ペロブスカイトも (産経新聞)
- ノーベル化学賞、有機合成・太陽電池が有望 41科学賞を独自分析 (日本経済新聞/有料会員限定記事)
- 2025年「ノーベル賞」発表間近、動兆エネルギー蓄積中の銘柄群 <株探トップ特集>
- 【2025年ノーベル賞予想】今年はどうなるの?ノーベル賞(化学賞・物理学賞)編ー過去の受賞を振り返って (innovaTopia)
③ケムステ版ノーベル化学賞候補者リスト:2025年版
いつもの通り、各媒体の情報を総合した上で、分野別にリストアップしています。今年も別ページにまとめました。→ こちら
全ての候補者が網羅されているわけではありませんので、良さそうな候補者は随時リストに追記させていただきます。
ノーベル賞委員会の審査員リストから洞察する
ケムステでは9年前から、「受賞発表を担当する委員会メンバーの専門分野」が的を絞るための情報として有効と考え、予想に活かしています。
関連サイト: 今年はだれが?専門家がノーベル化学賞を大胆予想…「ケムステ」 (讀賣新聞オンライン)
これまでの発表担当者と専門分野、受賞成果の対応関係は下記の通り。きわめて良い一致を見せています。
- 2015:Claes Gustafsson(生化学・遺伝子工学)→「DNA修復機構」
- 2016:Olof Ramström (有機化学・超分子化学) →「分子マシンの設計と合成」
- 2017:Peter Brzezinski(生化学・生物物理)→「クライオ電子顕微鏡」
- 2018:Sara Snogerup Linse(生化学・タンパク質科学)→「進化分子工学研究への貢献」
- 2019:Olof Ramström(有機化学・超分子化学)→「リチウムイオン電池」
- 2020:Claes Gustafsson、Pernilla Wittung-Stafshede(生化学)→「ゲノム編集」
- 2021:Peter Somfai(有機化学・有機合成化学)→「不斉有機触媒」
- 2022:Olof Ramström(有機化学・超分子化学)→「クリックケミストリーと生体直交化学」
- 2023:Heiner Linke (ナノ物理化学) →「量子ドットの発見と合成」
- 2024:Johan Åqvist (理論化学・生化学) →「タンパク質の計算による設計・構造予測」
2024 年の Award Ceremony 説明担当者である Johan Åqvist については、昨年のケムステ予想で以下のように言及しました。
Johan Åqvist は昨年議長でしたが、今回は役職なしということに加え、長年 committie に加わっていながらスピーチをしていないという理由で、彼の専門とする理論化学分野が来るのではとの予想もできます。
実際の説明者 (Expert) は、Johan Åqvist でした。予測は見事的中し、受賞分野も見事一致しました。例年通り、選考委員会メンバーからの予測は期待どころです。
そして、今年も以下のルールに則り、受賞発表担当者を予想します。
- 議長・主事メンバーの分野からは選ばれることがない(2020年はサポートメンバーが説明者となり選ばれました)
- 就任1年目の委員が説明者になることはない
- 残りのメンバーの分野に近いものがノーベル賞として選ばれる
さて、今年の化学賞審査委員会のメンバーは、
Peter Brzezinski (主事) :Professor of Biochemistry「クライオ電子顕微鏡」
Andrei Chabes :Professor of Medical Biochemistry
Heiner Linke (議長) :Professor of Nanophysics「量子ドットの発見と合成」
Peter Somfai :Professor of Organic Chemistry「不斉有機触媒」
Xiaodong Zou :Professor of Inorganic and Structural Chemistry
以上 5 名です。昨年スピーチを務めたJohan Åqvist は Co-opted members というサポート役 (後述) に周り、今年の 5 名は昨年からの継続 (役職も一緒) です。就任1年目のメンバーは今年はいませんでした。
今年も、2023年にコミッティーへ初参画した Xiaodong Zou に注目です。彼女の専門は無機構造化学ですが、類縁分野である MOF で注目を集めている 藤田誠 氏 や Omar M. Yaghi 氏、北川進 氏は毎年ケムステでも予想に挙げています。また2024年にクライリベイト引用栄誉賞を受賞した 堂免一成 氏も有力候補の一人として考えられます。
2024年からコミッティーメンバー入りしたAndrei Chabes はライフサイエンスが専門なので、2023年にクラリベイト引用栄誉賞を受賞している、睡眠関連物質オレキシンの発見での 柳沢正史 氏の可能性もあると昨年から予想しています (柳沢氏は生理学・医学賞の可能性もありますが)。他に今年のリストアップ記事では、タンパク質分解誘導薬 (PROTAC/分子糊) の開発で Craig Crews、Raymond J. Deshaies、Nathanael S. Gray の3氏を新たに追加しました。PROTAC はまだ臨床応用まで進んではいませんが、その医薬化学分野における影響の大きさから受賞の可能性は充分あると考えます。また、創薬応用という意味も込めて前述の MOF が選ばれるかもしれません。
また、5年前から追加された Co-opted members というコミッティーメンバーのサポート役も確認しておく必要があります。今年は以下の通り。
Olof Ramström : Professor of Chemistry「分子マシンの設計と合成」「リチウムイオン電池」「クリックケミストリーと生体直行化学」
Pernilla Wittung-Stafshede : Professor of Chemical Biology 「ゲノム編集」
Johan Åqvist : Professor of Theoretical Chemistry「タンパク質の計算による設計・構造予測」
今年の Co-opted members は、既にスピーチを行っているベテラン3名が名を連ねています。
となると、これらの3名の登壇は期待薄でしょうか。
筆者の独断では、2025年の説明者として、就任3年目となる Xiaodong Zou を第一候補、2年目となる Andrei Chabes を次点として予想します。となると ①材料化学分野 と ②生命科学分野 からの受賞可能性があるとの予想になります。
(コミッティーメンバーのリストはコチラから確認できます)
ケムステ版予想:2025年ノーベル化学賞はこれだ!?
受賞者の特定はいつもながら難しいですが、昨年の受賞対象分野との被り、及びコミッティーメンバーからの予測を踏まえ、例年挙げていた”計算化学に革命をもたらしたカー・パリネロ法による ab initio 分子動力学計算法:Roberto Car、Michele Parrinello” は敢えて外し、
毎年恒例の日本人の受賞の期待も込めて材料科学から
多孔性金属-有機構造体 (MOF) の合成法および機能開拓:
藤田誠、Omar M. Yaghi、北川進
を予想します。また今回は大胆予想、大穴として、生命科学から AI イチオシの
タンパク質分解誘導薬 (PROTAC/分子糊) の開発:
Craig Crews、Raymond J. Deshaies、Nathanael S. Gray
を第二候補として挙げてみます。
次点で同じく生命科学分野からの候補として、今年、ケミカルバイオジーの先駆的研究でウェルチ化学賞を受賞したStuart L. Schreiber、Peter G. Schultz、ならびに構造生物学分野でラスカー基礎医学賞を受賞した Dirk Görlich、Steven McKnight もあり得るのでは、と追記しておきます。と言いつつ、クラリベイト引用栄誉賞・慶應医学賞の受賞から相分離が来るのでは…と、どんどん分からなくって参りました。ただ、当初の予想は変えないでおこうと思います。
今年はこそはどれかしら的中してほしい… (できれば MOF!)
#ケムステ化学賞予想
読者の皆様も、
タグ (+名前・理由) とともに、今年もX (旧 Twitter)、Facebook、ケムステSlack で盛り上がっていただければ幸いです。
それでは日本時間 10 月 8 日 (水) 18時45分を楽しみに待ちましょう!
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