[スポンサーリンク]

一般的な話題

文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑯:骨伝導ヘッドホンの巻

[スポンサーリンク]

イヤホン・ヘッドホンは場所を問わず自由に音楽や動画を楽しんだり会議に参加できるため、必須のデバイスになりつつあります。その種類の豊富で、様々な形の商品が販売されています。そんな中、この記事では最近購入した骨伝導タイプのヘッドホンを紹介します。

購入の背景

筆者は場面に応じてイヤホン・ヘッドホンを使い分けており、動画視聴に集中したり積極的に発言するような会議に参加する場合は、インナーイヤー型のBluetoothイヤホンを使用し、作業が主でBGM的に音楽を聴いていたり聞いている場面が多いような会議の場合にはBluetoothヘッドホンを使用していました。しかしながら、Bluetoothヘッドホンは壊れてしまい今更有線のヘッドホンを普段使いにするのは不便だと思い、前から興味のあった骨伝導ヘッドホンを購入しました。

骨伝導の仕組み

通常、人間は音を聞くとき空気の振動で耳の鼓膜が振動し、それが耳小骨、蝸牛と伝わり音の情報に変換されて脳に伝達されます。一方骨伝導は、人間の骨を震わせその振動が蝸牛と伝わり音の情報に変換されて脳に伝達されます。骨伝導の活用は古く、18世紀に20代後半で難聴を患ったベートーベンは指揮棒を歯で噛みピアノに押し付けて骨伝導で音を聞き取っていたとされています。

骨伝導ヘッドホン・イヤホンは以前から販売されていましたが、製品数はかなり絞られていました。しかしながらここ数年で製品が増え、数千円のリーズナブルな商品から数万円の高級ヘッドホンまで様々なタイプの製品が発売されています。

購入した商品のレビュー

自分が購入したのは、SHOKZOpenRunというモデルです。

購入した実物の写真。全体がシリコンのような質感をしている。多機能ボタンも耳付近にある。

骨伝導イヤホンとしては高価な部類に入りますが、長い連続使用時間とデザイン、骨伝導ヘッドホンにおける知名度で購入を決めました。メガネを常用しており、うまく耳に引っ掛かるか気になったので、実物を試用してみてうまく使えることを確認してから購入しました。取り扱い店はそれなりにあるので、試してみてから購入することをお勧めします。

装着した時の様子。髪の毛で良く見えないが、メガネの上からヘッドホンをしても両者の装着は不自然にならない。

  • 着用感

初めて使用してみて思ったことは、ちゃんと聞こえるということです。骨伝導イヤホンの一番の売りは、耳を塞ぐことなく音を聞くことができる点で(当然ですが)周囲の環境の音もちゃんと聞こえる中でデバイスから出力される音も聞こえます。また耳を塞がないというのは自分にとってはかなり快適です。なぜなら自分の耳は湿っていてカナル型では長時間の使用で不快になり、インナーイヤー型では大体大丈夫ですが、やはり耳がかゆい時はやはりムズムズします。耳全体を覆うヘッドホンでも湿気を感じることがあります。その点、耳に当たらないこのヘッドホンはお風呂上りの耳が湿った時でも快適に使用でき、長時間の使用でも耳の湿りが気になることはありません。

普通サイズのマスクとの大きさ比較

  • 音質

あまり音質には詳しくないので他の機種との違いを表現するのは難しいですが、値段相応の音質というところでしょうか。ただし適度な音量では低音域が弱く聞こえます。周囲の音を遮断していていないからかもしれませんが、本気で音楽を楽しむ場合には別のタイプのヘッドホンが良いかもしれません。人の声に関しては、聞き取りづらいと感じることは今のところありません。

  • 長時間使用の不安

Bluetoothで接続できるため、長時間のWeb会議中に飲み物を取りに行ったりすることも可能です。接続を維持できる範囲も他のBluetoothイヤホンと変わらない位でした。耳への不快感はありませんが、こめかみはヘッドホンが密着するため長時間の使用では軽い押しつけを感じます。また骨を振動させるため、人によってはこめかみに痛みを感じるようです。

  • その他

カナルやインナーイヤー型では、スピーカー部に汚れが詰まって不潔に見えますが、このヘッドホンには耳の汚れがたまるところがなく、お手入れも簡単だと思います。

裏返した様子。電源ボタン兼音量ボタンと電源接続部がある。

場面別お勧めのイヤホン・ヘッドホン

骨伝導イヤホンの場合周囲の音が聞こえるのが特徴ですが、それがデメリットになる場面もあるわけであり、場面に応じてイヤホンを使い分けたほうが仕事や学習においては効果的だと思います。下記は、筆者がそれぞれのヘッドホン・イヤホンを使ってみたうえでのおすすめの使い方です。

  • ヘッドホン

じっくりと音楽を楽しんだり、ノイズキャンセリングを効かせて静寂の中でデスクワークや勉強に集中する。

  • カナルやインナーイヤー型イヤホン

電車での移動中やカフェなど、それなりに周囲の音をシャットダウンして音楽や動画を楽しむ。自宅のリビングやオフィスのデスクなど、雑音がある中で会議に参加する。

  • 骨伝導ヘッドホン

周囲のことを気にしつつも、会議に参加したり動画を視聴する。音楽は聴きたいが、その場で他の人に呼ばれても無視したくない。

骨伝導ヘッドホンの特徴である周囲の音がシャットダウンされないというのは、デメリットにもなり得ることであり、実際騒音が大きいところでは、ボリュームをかなり大きくする必要がありました。例えば化学実験室に近い場所では、ドラフトやNMRの冷凍機などからの重低音がありノイズキャンセリング付きのイヤホンやヘッドホンの方が重宝するかもしれません。

また骨伝導ヘッドホンでも、ボリュームを大きくしていくと音が空気を伝わって伝播するので、全く他の人に聞こえないわけではありません。さらに、ヘッドホンが密着していれば音が聞こえるとはいっても耳から遠いとあまり聞こえず、音量最大で顎に当ててやっと聞こえる程度です。そのため、こめかみ以外に当てて使用することは難しいです。

最後はデメリットをいくつか挙げましたが、耳を塞がないメリットは大きく場面を選えば便利なツールだと思います。イヤホン・ヘッドホンを買い替える時には骨伝導タイプも検討してみてはいかがでしょうか。

関連書籍

ガジェット紹介のケムステ過去記事

    Zeolinite

    投稿者の記事一覧

    ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

    関連記事

    1. 飲むノミ・マダニ除虫薬のはなし
    2. バイエルスドルフという会社 ~NIVEA、8×4の生みの親~
    3. 有機化学クロスワードパズル
    4. 第36回ケムステVシンポ「光化学最前線2023」を開催します!
    5. もし炭素原子の手が6本あったら
    6. 【マイクロ波化学(株) 石油化学/プラスチック業界向けウェビナー…
    7. 「新反応開発:結合活性化から原子挿入まで」を聴講してみた
    8. 極薄のプラチナナノシート

    コメント、感想はこちらへ

    注目情報

    ピックアップ記事

    1. その実験結果信用できますか?
    2. 好奇心の使い方 Whitesides教授のエッセイより
    3. 静岡大准教授が麻薬所持容疑で逮捕
    4. 学会に行こう!高校生も研究発表できます
    5. ポーソン・カーン反応 Pauson-Khand Reaction
    6. シャープレス不斉アミノヒドロキシル化 Sharpless Asyemmtric Aminohydroxylation (SharplessAA)
    7. 甲種危険物取扱者・合格体験記~cosine編
    8. ティフェノー・デミヤノフ転位 Tiffeneau-Demjanov Rearrangement
    9. 決め手はケイ素!身体の中を透視する「分子の千里眼」登場
    10. ケムステ新コンテンツ「化学地球儀」

    関連商品

    ケムステYoutube

    ケムステSlack

    月別アーカイブ

    2022年7月
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    25262728293031

    注目情報

    最新記事

    フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

    第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

    マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

    概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

    【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

    <求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

    国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

    ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

    大正製薬ってどんな会社?

    大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

    一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

    ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

    ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

    開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

    第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

    シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

    薬学部ってどんなところ?

    自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

    光と水で還元的環化反応をリノベーション

    第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

    実験器具・用品を試してみたシリーズ

    スポットライトリサーチムービー

    PAGE TOP