[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

【書籍】有機反応機構の書き方 第2版

[スポンサーリンク]

今回は書籍『有機反応機構の書き方 第2版』(Robert B. Grossman (著), 奥山 格 (翻訳), 丸善出版)をご紹介します。

有機反応機構の書き方 第2版: 基礎から有機金属反応まで

有機反応機構の書き方 第2版: 基礎から有機金属反応まで

Robert B. Grossman
¥5,500(as of 10/30 14:15)
Amazon product information

概要

本書は、有機化学の中級者向けのテキストで、有機化学変換の妥当なメカニズムの書き方を示しています。多くの教科書にあるような反応全体ではなく、メカニズムの種類と反応条件によって体系的に有機化学反応が解説されている。各章では、一般的な機構経路を論じ、それを描くための実践的なヒントを提案しています。また、学生を悩ませる落とし穴や誤解などの「よくある間違い」がテキスト中に散りばめられています。各章の最後には、難易度の高めな問題集が掲載されています。

13年前に発売された第1版の書籍レビューはこちら(ケムステ過去記事)

 

目次

  1. 基本的事項
    1.1 有機化合物の構造と安定性
    1.2 Brønsted酸性度と塩基性度
    1.3 反応速度論と熱力学
    1.4 反応機構を書く前に注意すること
    1.5 変換反応の種類
    1.6 反応機構の種類
  2. 塩基性条件における極性反応
    2.1 置換反応と脱離反応
    2.2 求電子性π結合への求核種の付加
    2.3 C(sp2)-Xσ結合における置換
    2.4 C(sp3)-Xσ結合における置換と脱離
    2.5 塩基で促進される転位反応
    2.6 2つの多段階反応
  3. 酸性条件における極性反応
    3.1 カルボカチオン
    3.2 C(sp3)-Xにおける置換とβ脱離反応
    3.3 求核性C=Cπ結合への求電子付加
    3.4 求核性C=Cπ結合における置換
    3.5 求電子性π結合における求核付加と置換反応
    3.6 イミニウムイオンを含む触媒反応
  4. ペリ環状反応
    4.1 はじめに
    4.2 電子環状反応
    4.3 付加環化
    4.4 シグマトロピー転位
    4.5 エン反応
  5. ラジカル反応
    5.1 ラジカル
    5.2 ラジカル連鎖反応
    5.3 非連鎖ラジカル反応
    5.4 その他ラジカル反応
  6. 遷移金属反応
    6.1 遷移金属の化学
    6.2 付加反応
    6.3 置換反応
    6.4 転位反応
    6.5 脱離反応
  7. 総合問題

本書籍は、標準的な有機化学の教科書を一通り勉強し、基本的な有機反応機構が理解できるようになった大学院生などが読むのに丁度よい内容です。書籍のまえがきにも同様の趣旨の記載がありますが、まさにその通りだと思いました。

一般的な教科書では置換反応、カルボニル基やオレフィンに対する付加反応のように、官能基ごとに反応を解説します。一方、本書は第一章で有機化学における反応式を書く上でのルール、いわばスキームや矢印の文法を解説し、その後の章で有機反応をカチオン反応、アニオン反応、ラジカル反応、ペリ環状反応、遷移金属触媒に分類し、反応機構と反応が起きる駆動力を独特な解説しています。一章では、説明文に図がついていない場合も多く、初学者には文章の意図を理解しきれないと思います。英語の原文を尊重してニュアンスを残している部分も理解しづらく感じる部分もあるでしょう。しかし、第二章以降は化学種をカチオン、アニオン、ラジカルに分類し、体系的に解説している上に、各項でかなり丁寧に反応機構が解説されています。第一章は、図がついていない部分を理解できなくてもあまり気にせず一度軽く読み進め、第二章から真剣に読んでみると楽しく読めると思います。また、近年光化学や電気化学の発展によりさらに脚光を浴びているラジカル反応や遷移金属の反応に関してもわかりやすく解説されているのでその道の難しい専門書を読むより入りやすいかもしれません。

 

感想

繰り返しにはなりますが、有機化学反応を他の教科書にない視点で分類している点と、その機構が極めて詳細に解説されている点が良いと思いました。また解説だけでなく、演習問題も独特の思考を問う問題が多く用意されているように感じました。難易度は少し高めで、解答解説は本書についていないため、有機化学を一通り勉強した学生の腕試し、大学院生の勉強会などに良い書籍です。

Macy

投稿者の記事一覧

有機合成を専門とする教員。将来取り組む研究分野を探し求める「なんでも屋」。若いうちに色々なケミストリーに触れようと邁進中。

関連記事

  1. 【書評】ストラウブ化学数学 / MATHEMATICAL MET…
  2. 生物活性物質の化学―有機合成の考え方を学ぶ
  3. 東大キャリア教室で1年生に伝えている大切なこと: 変化を生きる1…
  4. 誰も教えてくれなかった 実験ノートの書き方 (研究を成功させるた…
  5. 有機合成のための新触媒反応101
  6. マンガでわかる かずのすけ式美肌化学のルール
  7. 【書籍】セルプロセッシング工学 (増補) –抗体医薬から再生医…
  8. 【書評】化学への数学 基本への10章

注目情報

ピックアップ記事

  1. 2016年4月の注目化学書籍
  2. 嗚呼、美しい高分子の世界
  3. 2005年ノーベル化学賞『オレフィンメタセシス反応の開発』
  4. 有機合成化学総合講演会@静岡県立大
  5. ブレデレック オキサゾール合成 Bredereck Oxazole Synthesis
  6. 【21卒イベント 大阪開催2/26(水)】 「化学業界 企業合同説明会」
  7. 巻いている触媒を用いて環を巻く
  8. 三角形ラジカルを使って発光性2次元ハニカムスピン格子構造を組み立てる!
  9. 分子の磁石 “化学コンパス” ~渡り鳥の磁場観測メカニズム解明にむけて~
  10. 世界最大級のマススペクトルデータベース「Wiley Registry」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2023年4月
月 火 水 木 金 土 日
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

2026年ノーベル化学賞ケムステ予想当選者発表!

2026年のノーベル化学賞は、「不斉有機合成における非線形効果および自己触媒作用の発…

第64回ケムステVシンポ「データとともに進化する未来の化学」を開催します!

第64回ケムステVシンポの会告を致します。産業技術総合研究所主催の化学シンポジウムシリーズ(…

品質工学とマテリアルズ・インフォマティクス ― 両技術の概要と連携事例

開催概要材料開発やものづくりの現場では、探索すべき組成やプロセス条件が増えるほど組み合わせが爆発…

大学院留学してよかったこと, 悪かったこと【英語, 経済面, オーバードクターに関するお話】

海外の大学で、その大学に籍を置く大学 (院) 生として留学することは「学位留学」と呼ばれたりします。…

光前駆体法の活用によって、ヘプタセンで初の一重項分裂を観測!

第725回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 理学研究科化学専攻 有機元素化学研究室(山田研…

【スタッフ・寄稿募集】Chem-Stationで、化学を「伝える側」になりませんか?

Chem-Station(ケムステ)は2000年に開設された国内最大の化学ポータルサイトです。大学・…

第17回大津会議―とある参加者の記録―

2026年9月28日~29日に開催された第17回大津会議についての、とある参加者の記録です。この記事…

第17回大津会議 -Otsu Conference- 2026 開催報告 ~新体制で紡ぐ「有機合成の夢」~

第17回大津会議が2026年9月28日(月)〜9月29日(火)びわ湖大津プリンスホテルにて開催されま…

有機合成化学協会誌2026年10月号:医薬品プロセス開発・σ芳香族性・含窒素複素環・メロテルペノイド二量体・高歪み化合物

有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年10月号がオンラインで公開されています。…

時代は水だ! セメントのように水と混ぜるだけで成形・硬化できる「水硬性」高分子

第724回のスポットライトリサーチは、東京科学大学物質理工学院(大塚研究室)博士前期課程2年の徳満玲…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP