[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

ウィリアム L ジョーゲンセン William L. Jorgensen

[スポンサーリンク]

ウィリアム L ジョーゲンセン (William L. Jorgensen、1949年10月5日-)は、アメリカの計算化学者である。イェール大学化学科Sterling教授。2021年クラリベイト「引用栄誉賞」受賞者(写真出典:National Foundation for Cancer Research

経歴

1970 プリンストン大学卒業(B.A. 化学)
1975 ハーバード大学卒業(Ph.D 物理化学)
1975 パデュー大学化学科助教
1979 パデュー大学化学科准教授
1982 パデュー大学化学科教授
1989 ハーバード大学客員教授
1990 イェール大学化学科Whitehead教授
2009 イェール大学化学科Sterling教授

受賞歴

1994 アメリカ科学振興協会フェロー
1998 化学と創薬研究における計算科学ACSアワード
2004 量子生物薬理学学会計算生物学賞
2004 日本薬学会佐藤記念賞
2009 ACSフェロー
2012 ACS Joel Henry Hildebrandアワード
2014 ミシガン大学John G. Topliss Award
2015 Tetrahedron Prize
2021 クラリベイト「引用栄誉賞」:溶液中の有機および生体分子の計算化学的手法および研究で、合理的な薬剤設計および合成に貢献

研究業績

ジョーゲンセン教授は、抗がん剤の開発に特化して研究を行っており、コンピュータ支援によるドラッグデザインのためのソフトウェア開発で有名です。タンパク質と密に結合する薬をコンピューターモデルによってスクリーニングし、得られた有望な候補は研究チームのラボで合成し、生理活性や結晶化は共同研究チームにて行っています。これまでに抗HIVや抗炎症、抗がん剤として効能のある分子を発見してきたそうです。また、溶液中における有機分子や生体物質に関する計算化学的アプローチについても先駆けて創始してきており、反応メカニズムや溶液中での遷移状態、反応速度への媒質効果の根源について解明してきました。

HIV-1ゲノム逆転写阻害剤の分子デザインと反応活性・溶解性の解明

低い濃度でも高い活性を示す非核酸系HIV-1逆転写酵素阻害薬を開発するため、計算化学的アプローチによってカギとなる分子構造を推定しました。その得られた骨格に対して官能基が異なる誘導体を合成し活性と溶解性を調べ、高活性でかつ溶解性も高い分子構造を特定しています。

HIV-1逆転写酵素に対してその阻害活性を示すNaphthyl Phenyl Ethersが結合した時の結晶構造(出典:原著論文

自由エネルギー摂動法によるSARS-CoV-2メインプロテアーゼ阻害剤の分子デザイン

抗てんかん薬として認可されているペランパネルを出発分子として、自由エネルギー摂動法計算を使ってSARS-CoV-2メインプロテアーゼに対して阻害活性を示すような分子構造を推定しました。推定された候補分子を実際に合成し阻害活性を実測後、活性の違いを再度自由エネルギー摂動法計算を使って検証し、限られた実験時間でも活性の高い分子構造の探索に成功しました。

SARS-CoV-2メインプロテアーゼとペランパネルが結合した時の結晶構造(出典:原著論文

上記の通り様々なソフトウェアを開発しており、例えば、分子力学計算のためのBOSS(Biochemical and Organic Simulation System)、モンテカルロシミュレーションのためのMCPRO、力場を計算するLigParGenなどを発表し、研究室のWebサイトで公開しています。

名言集

コメント&その他

関連動画

参考文献

関連書籍

[amazonjs asin=”0897663608″ locale=”JP” title=”Computer simulation of chemical and biomolecular systems (Annals of the New York Academy of Sciences)”] [amazonjs asin=”0124332870″ locale=”JP” title=”The Organic Chemist’s Book of Orbitals”]

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. バリー・ハリウェル Barry Halliwell
  2. エドウィン・サザン Edwin M. Southern
  3. ウェルナー・ナウ Werner M. Nau
  4. ガボール・ソモライ Gabor A. Somorjai
  5. ヴァリンダー・アガーウォール Varinder K. Aggar…
  6. リチャード・ヘンダーソン Richard Henderson 
  7. チャオ=ジュン・リー Chao-Jun Li
  8. ウィリアム・ロウシュ William R. Roush

注目情報

ピックアップ記事

  1. 学振申請書を磨き上げる11のポイント [文章編・後編]
  2. 홍 순 혁 Soon Hyeok Hong
  3. 有機合成化学協会誌2018年11月号:オープンアクセス・英文号!
  4. ハニートラップに対抗する薬が発見される?
  5. 名古屋市科学館で化学してみた
  6. 錯体と有機化合物、触媒はどっち?
  7. マテリアルズ・インフォマティクスの普及に取り組む事業開発ポジションとは?〜最前線メンバー3人のキャリア選択と今について語る〜
  8. 材料費格安、光触媒型の太陽電池 富大教授が開発、シリコン型から脱却
  9. スピノシン Spinosyn
  10. 産総研より刺激に応じて自在に剥がせるプライマーが開発される

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年9月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP