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プラスチックを簡単に分解する方法の開発

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An Efficient Method To Depolymerize Polyamide Plastics: A New Use of Ionic Liquids
Kamimura, A.; Yamamoto, S.Org. Lett.2007, 9, 2533. DOI:10.1021/ol070886c

 

山口大学大学院医学系研究科上村教授らは、イオン性液体を溶媒とし、プラスチックを簡単に分解する方法を開発しました。彼らが、分解したのはナイロン繊維等でよく知られる6-ナイロン。6-ナイロンをイオン性液体中で300℃に加熱するだけで、モノマー(単量体)であるカプロラクタムに分解し、収率85%で得られることを発見しました。この結果はアメリカ化学会の有機化学専門誌Org. lett.に掲載されました。

6-ナイロンの分解(重合に対して、モノマーに分解することを解重合という)は分解物がカプロラクタムだけであるため、精製が容易であり、いくつかの方法が知られていて、さらに工業的プロセスとしてもすでに行われています。

 

工業的なプロセスにおいては、りん酸などの触媒存在下で、加熱水蒸気で解重合されますが、その際触媒を利用することや特別な装置を必要とすることが問題です。収率は90%前後。それに対して今回上村教授らが開発した方法は、イオン性液体を用いることにより、加熱水蒸気や触媒を一切用いることなく、まぜて熱するだけでカプロラクタムが得られるということです。またイオン性液体は、揮発性はほとんどなく、回収することができます。例えば5回繰り返し利用しても収率に変化はなかったそうです。

 

PETなどの解重合プロセスは確立されていますが、今後このイオン性液体を用いた解重合反応が、他の解重合に利用できるかが注目です。

 

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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