[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第31回 ナノ材料の階層的組織化で新材料をつくる―Milo Shaffer教授

[スポンサーリンク]

第31回の海外化学者インタビューは、ミロ・シェファー教授です。インペリアルカレッジの化学科に在籍し、ナノチューブとナノロッドの合成・修飾・応用に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

私は父から科学的学習法を学んだと思います―おそらくは遺伝的側面と彼の怒りっぽさが混ざった形で。若い頃は、「お前はどう思う?」だとか、数値予測の質問に答えなければ成らなかったので。最終的に他の科学分野ではなく化学を選び取った理由はおそらく、現実世界の問題と創造性の発揮機会が大変良く融合しているからだと思います。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

家族の伝統ではありますが、芸術をやりたいがために科学/工学を放棄したくなることがしばしばあります。私は十代前半に建築家になろうと計画しましたが、地に足の付いた選択肢ではあり、実際なっていたらもっと満足いく人生だったかもしれません。 時間や条件次第で変わっていくダイナミック効果を使い、可能な限りたくさんのテクスチャ・陰影・角度を盛り込もうとするでしょうね。

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

とりわけ持続可能性とエネルギーに関する技術的解決を必要とする多くの問題に、社会が直面していることは明らかです。代替案は、暗黒時代への回帰かもっと悪いことしかありません。化学者は、分子/材料の活用・理解を促すという重要な役割を担っています。それと同時に、堅苦しすぎる研究を推し進めることも、最適戦略ではないことを認識すべきです。劇的なブレークスルーを生み出すには、純粋かつ自由な発想の研究が必要です。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

アリストテレスです。自然哲学の父、雄弁な語り手でもある彼の探求心は、言うまでも無く我々の世界における豊かな政治的・文化的視点の源泉となっています。彼の料理の好みについてはわかりませんが、おそらくオーギュスト・エスコフィエの料理がいいでしょう。

アリストテレス(BC 384 – BC 322)

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

およそ1ヵ月前に、「構造的スーパーキャパシタ」と我々が呼んでいる電気化学インピーダンス分光法の測定を行いました。これはエネルギーの蓄積と機械的強度・剛性を同時に提供しうる多機能材料に基づく発明です。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

私の叔父(ジョン・ベル)のライブパフォーマンスが収められているぼろぼろのカセットテープ2巻をCDにコピーしていいなら、これを持っていきます。寂しくなった時に彼の歌を聴くと、とても元気づけられます。

本については、ヘラーの「キャッチ=22」を持っていくかもしれません。読み返すたびに面白くなっていくお気に入りです。

[amazonjs asin=”4151200835″ locale=”JP” title=”キャッチ=22〔新版〕(上) (ハヤカワepi文庫 ヘ)”]

しかしおそらくは、「マンダリン(標準中国語)の良い教科書」に落ち着くでしょう。この勉強はきっと忙しいでしょうし、新しいことを学ぶのが大好きなので。漢字は美的にも楽しめます。島から​​出る頃には、中国語が世界言語になっているやもしれません。

原文:Reactions – Milo Shaffer

※このインタビューは2007年9月21日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第159回―「世界最大の自己組織化分子を作り上げる」佐藤宗太 特…
  2. 第111回―「予防・診断に有効なナノバイオセンサーと太陽電池の開…
  3. 第48回―「周期表の歴史と哲学」Eric Scerri博士
  4. 第157回―「メカノケミカル合成の方法論開発」Tomislav …
  5. 第66回「機能的な構造を探求する」大谷亮 准教授
  6. 第七回 生命を化学する-非ワトソン・クリックの世界を覗く! ー杉…
  7. 第163回―「微小液滴の化学から細胞系の仕組みを理解する」Wil…
  8. 第51回―「超分子化学で生物学と材料科学の境界を切り拓く」Car…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 熱前駆体法を利用した水素結合性有機薄膜の作製とトランジスタへの応用
  2. 【速報】2010年ノーベル物理学賞に英の大学教授2人
  3. 大村 智 Satoshi Omura
  4. Brevianamide Aの全合成:長年未解明の生合成経路の謎に終止符
  5. ベン・フェリンガ Ben L. Feringa
  6. 元素の和名わかりますか?
  7. ケムステV年末ライブ2021開催報告! 〜今年の分子 and 人気記事 Top 10〜
  8. 特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来
  9. スナップ試薬 SnAP Reagent
  10. 安全なジアゾ供与試薬

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年12月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP