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海外化学者インタビュー

第132回―「遷移金属触媒における超分子的アプローチ」Joost Reek教授

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第132回の海外化学者インタビューはジュースト・リーク教授です。アムステルダム大学ファント・ホッフ分子科学研究所に所属し、遷移金属触媒における超分子的アプローチの開発に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

物理や化学などの専門科目に興味を持っていましたが、その中でも化学は他の面も含まれていて魅力的だったようです。もちろん、この選択には高校の良い先生方の存在が重要な役割を果たしています。大学で修士号研究をしていたとき、化学の基礎研究にとてつもなく魅了されました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

科学と全く関係なさそうなものであれば、デザイナーとか、スポーツに関係する職業(プロのトレーナーやコーチなどは面白そう)がいいかもしれません。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

現在、遷移金属触媒と超分子化学の境界で化学を探求しています。触媒のリサイクルやコンビナトリアル触媒のための新たなツールを生み出しますし、最近では光誘起水素分子生成(集合体で進行)のための光触媒を開発しました。触媒カプセル化による活性サイト分離、二核触媒、二機能性触媒など、自然界でも頻繁に使われてる道具を使うことで、これまでにない選択性を示す触媒を作ることができます。我々のアプローチのいくつかは目立って成功を収めており、商業的な可能性を探るために2つの会社(cat-fix、InCatT)を立ち上げました。もちろん、これは学術的アイデアの究極的な試みです。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

疑問の余地無く、バラク・オバマです!

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

1998年にアムステルダム大学に赴任したときは、遷移金属触媒やデンドリマー型触媒に使えるポルフィリン集合体を作る実験をまだしていましたが、自ら実験をしていても効率が悪いことに気づいて以来、実験を大幅に減らしました。今でも実証実験はしていますが、最後の実験は、アムステルダムの熱帯博物館の古い講義室で、教員の誕生日を祝って行いました。素晴らしかったですよ。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

たった一枚の音楽アルバムだなんて時代遅れですね。私たちはiPod世代ですよ!でも、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『Californication』にするでしょうね。

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本については、E.O.ウィルソンが紹介している『From So Simple a Beginning: Darwin’s Four Great Books』を持っていきます。

[amazonjs asin=”B01K3NDOS8″ locale=”JP” title=”From So Simple a Beginning: Darwin’s Four Great Books (Voyage of the Beagle, The Origin of Species, The Descent of Man, The Expression of Emotions in Man and Animals) by Charles Darwin(2005-11-17)”]

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

ホワイトサイズレーンレベックは偉大な科学を成し遂げた方々なので素晴らしいですが、オットーグローリアスウェネマーズローワンホワイトリッターシェニングゾンマーダイクなどの若手科学者もまた素晴らしいでしょう。

原文:Reactions -Joost Reek

※このインタビューは2009年9月25日に公開されました。

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cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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