[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

シャープレス不斉ジヒドロキシル化 Sharpless Asyemmtric Dihydroxylation (SharplessAD)

[スポンサーリンク]

概要

・Sharplessらはcinchona alkaloid(キニジン、キニーネ)由来の不斉配位子((DHQD)2PHALもしくは(DHQ)2PHAL)を用い、四酸化オスミウムによる実用的触媒的不斉ジヒドロキシル化を達成した。

・NMOも再酸化剤として用いられるが、水系溶媒中にフェリシアン化カリウムK3Fe(CN)6を用いると、より高い不斉収率が実現できる。

・一般に芳香環を有する化合物が反応性・選択性ともに良い傾向がある(おそらく遷移状態におけるπ-π相互作用による。反応機構参照)。

メタンスルホンアミド(MsNH2)の添加によってエナンチオ選択性が向上することが知られている。

・ 合成に必要な試薬キットは、AD-mix-α、AD-mix-βという名称で市販されている。選択性は以下の経験則に従う。

sharpless_ad_8.gif

・配位子の比率を増加させて反応性を向上させた”Super-AD-mix”もNicolaouらによって使用されている。

sharpless_ad_3.gif
・本法およびSharpless-香月不斉エポキシ化の開発による触媒的不斉酸化反応への貢献で、Scripps研究所のK.B.Sharpless2001年ノーベル化学賞を受賞している。

基本文献

 

反応機構

Osからのジオール解離(加水分解過程)が遅いと2nd cyce経由で進行し、エナンチオ選択性の低下が起きる。これを防ぐため、共酸化剤としてフェリシアン化カリウムを用い、水系反応にするとよい。
sharpless_ad_4.gif
OsO4のオレフィンへの付加機構は、[3+2}機構(Corey)と[2+2}→転位機構(Sharpless)の両主張で長く論争が続いていたが、最終的にはCoreyの提唱する[3+2]機構で進行するということで一応の決着を見た。
sharpless_ad_5.gif
Coreyは以下に示す遷移状態モデルを提唱し、リガンド構造のチューニングを種々行っている。
sharpless_ad_6.gif

反応例

Zaragozic Acidの合成[1]:高度に酸素官能基化された化合物の立体選択的合成に威力を発揮する。
sharpless_ad_7.gif

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

※オスミウムは揮発性であり、毒性が強いので取り扱いには十分注意すること。

 

参考文献

[1] Nicolaou, K. C. et al. Chem. Eur. J. 19951, 467. doi:10.1002/chem.19950010712

 

関連反応

 

関連書籍

 

外部リンク

関連記事

  1. ピナコールカップリング Pinacol Coupling
  2. 永田試薬 Nagata Reagent
  3. 触媒的C-H酸化反応 Catalytic C-H Oxidati…
  4. ボイヤー・シュミット・オーブ転位 Boyer-Schmidt-A…
  5. オキシ水銀化・脱水銀化 Oxymercuration-Demer…
  6. クネーフェナーゲル ピリジン合成 Knoevenagel Pyr…
  7. 炭素-炭素結合活性化反応 C-C Bond Activation…
  8. ショッテン・バウマン反応 Schotten-Baumann Re…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 南 安規 Yasunori Minami
  2. サイエンスアワード エレクトロケミストリー賞の応募を開始
  3. 第84回―「トップ化学ジャーナルの編集者として」Anne Pichon博士
  4. アステラス製薬、抗うつ剤の社会不安障害での効能・効果取得
  5. 【書籍】英文ライティングの基本原則をおさらい:『The Element of Style』
  6. DMFを選択的に検出するセンサー:アミド分子と二次元半導体の特異な相互作用による検出原理を発見
  7. 書物から学ぶ有機化学 1
  8. ミヤコシンA (miyakosyne A)
  9. 株式会社ナード研究所ってどんな会社?
  10. 個性あるTOCその③

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

細谷 昌弘 Masahiro HOSOYA

細谷 昌弘(ほそや まさひろ, 19xx年xx月xx日-)は、日本の創薬科学者である。塩野義製薬株式…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP