[スポンサーリンク]

K

ケテンの[2+2]環化付加反応 [2+2] Cycloaddition of Ketene

[スポンサーリンク]

概要

オレフィン-ケテン間の付加環化反応は、シクロブタノン環と込み入った炭素骨格を一挙に構築できる強力な手法である。不安定中間体であるケテンは系中で生成させる。位置異性の制御が難しいため、分子内反応条件下で用いられることが多い。

基本文献

  • Staudinger, H. Chem. Ber. 1905, 38, 1735. doi:10.1002/cber.19050380283
  • Wilsmore, N. T. M. J. Chem. Soc. 1907, 91, 1938.
  • Chick, F.; Wilsmore, N. T. M. J. Chem. Soc. 1908, 946.

<Reviews>

開発の歴史

1902年にはウォルフによってウォルフ転位が報告された。現在はケテンを経由していることが明らかとなっているが、当時詳細は不明であった。一方、1905年にシュタウディンガー(1953年ノーベル賞受賞者)は偶然にもケテン(ジフェニルケテン)をはじめて合成した。さらに1907年に、Wilsmoreが無水酢酸に加熱した白金を作用させることでケテンの発生に成功している。

ヘルマン・シュタウディンガー

ヘルマン・シュタウディンガー

 

反応機構

協奏的な[2+2]機構で進行する。オレフィンとケテンがねじれの位置関係から接近する遷移状態モデルが受け入れられている。これはcisオレフィンがtransオレフィンよりも高反応性を示す実験事実を上手く説明する。(参考: J. Org. Chem. 1980, 45, 4483.

22_ketene_5

 

反応例

Ginkgolide Bの合成[1]:本合成においては、嵩高いt-ブチル基との反発がジアステレオ選択的環化におけるカギとなっている。 22_ketene_2.gif Antheliolide Aの合成[2] 22_ketene_3.gif

一般にケテンはジエンと[2+2]付加を優先させるが、アセトキシアクリロニトリルはDiels-Alder反応を進行させるケテン等価体として捉えることができる。[3]

22_ketene_6

クロムFisherカルベンを光照射することでケテンを系中生成させ、反応に用いることができる。[4]

22_ketene_7

実験手順

ケテンの発生法:ケテンは酸ハライドを嵩高い塩基で処理する、α-ハロ酸ハライドを還元的に処理することで系中生成できる。ケテンダイマーを加熱もしく光照射で分解することでも得られる。Wolff転位経由でも得ることができる。

22_ketene_4

実験のコツ・テクニック

参考文献

[1] Corey, E. J.; Kang, M. C.; Desai, M. C.; Ghosh, A. K.; Houpis, I. N. J. Am. Chem. Soc. 1988, 110, 649. DOI: 10.1021/ja00210a083
[2] Mushti, C. S.; Kim, J.-H.; Corey, E. J. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 14050. DOI: 10.1021/ja066336b
[3] Bartlett, P. D.; Tate, B. E. J. Am. Chem. Soc. 1956, 78, 2473. DOI: 10.1021/ja01592a035
[4] Moser, W. H.; Hegedus, L. S. J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 7873. DOI: 10.1021/ja9537585

関連書籍

関連リンク

関連記事

  1. ムレキシド反応 Murexide reaction
  2. 溝呂木・ヘック反応 Mizoroki-Heck Reaction…
  3. 金属カルベノイドを用いるシクロプロパン化 Cyclopropan…
  4. 触媒的C-H酸化反応 Catalytic C-H Oxidati…
  5. フリードレンダー キノリン合成 Friedlander Quin…
  6. クレーンケ ピリジン合成 Kröhnke Pyridine Sy…
  7. ヘンリー反応 (ニトロアルドール反応) Henry Reacti…
  8. スナップ試薬 SnAP Reagent

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. “アルデヒドを移し替える”新しいオレフィン合成法
  2. 含窒素有機化合物の触媒合成について
  3. 【速報】ノーベル化学賞2013は「分子動力学シミュレーション」に!
  4. CRISPRで薬剤分子-タンパク相互作用を解明する
  5. 研究者xビジネス人材の交流イベント 「BRAVE GATE Meetup」 参加申し込み受付中
  6. ご注文は海外大学院ですか?〜準備編〜
  7. Reaction and Synthesis: In the Organic Chemistry Laboratory
  8. 【書籍】新版 元素の小辞典
  9. 掃除してますか?FTIR-DRIFTチャンバー
  10. 旭化成 繊維事業がようやく底入れ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年9月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御

第582回のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究…

有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年11月号がオンライン公開されています。…

高懸濁試料のろ過に最適なGFXシリンジフィルターを試してみた

久々の、試してみたシリーズ。今回試したのはアドビオン・インターチム・サイエンティフィ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP