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化学者のつぶやき

農工大で爆発事故発生―だが毎度のフォローアップは適切か?

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警視庁などによると、22日午後9時15分過ぎ、東京農工大学の小金井キャンパス4号館、2階にある実験室で、ガラスのフラスコが爆発する事故があった。この爆発で、部屋で実験をしていた工学部の修士2年の男子大学院生が左手の親指と小指を失うなど、両手に大ケガをして病院に運ばれたが、意識ははっきりしているという。(引用:日テレNews24

ご存知の方も多いでしょうが、つい先日、東京農工大の化学系研究室で爆発事故がありました。
企業/大学を問わず、国内でも爆発事故・火災事故はまま起こります。
これは化学を生業とするかぎり、避けがたいリスクのひとつでもあり、根絶が難しいものです。

こういう事故が起こった場合、さすがにどこのメディアも速報は早いです。マスコミ間で競争原理が働いているためでしょう。

ただその後、往々にしてぱたりと続報が流れてこなくなる―この点が筆者には、大変気にかかります。単にマスコミが興味をなくしてしまったから、でしょうか?それとも・・・?


外部の身からしてみれば、事故の原因や状況などがまったくわからず、事情を判断しようがない現状です。2chなどでもいろいろ憶測が飛び交っているようですが、有効な情報がどこにもありません。

結局いつものごとく、業界の仲間うちだけで流れるうわさで判断するしかなくなるのか・・・と思うばかりです。

今回の件では、学生の命に別状はなかったらしく、大学側もことさら蒸し返したくない気持ちがあるのかもしれません。

ただ、起こってしまった事故を教訓とせず、(時には封じ込めて)うやむやにしてしまう―こういう姿勢はまったく建設的ではないように思われます。

事故再発にむけてできる取り組みは沢山あると思えます。事故当事者のプライバシーに触れる必要は、必ずしもないのです。

たとえば昨年末にUCLAで死亡事故がおきました。米国の大学ではそれ以来、事故再発に向けての取り組みが行われています。

代表的なひとつが、危ない試薬を使った実験操作をわかりやすく解説しているムービーの作成・公開です。当事者たるUCLAだけでなく、ほかの大学からも似たものが続々と公開されているあたり、さすがに意識の高さがうかがえます。

Working Safely With Organolithium Compounds (Yale University)

Pyrophoric Liquid Safety Video (UCLA)

Handling Pyrophoric Materials (Dartmuth University)

またC&ENブログのThe Safety Zoneというコーナーでは、安全管理に関する情報提供が熱心に行われています。Friday-Round Upと称して、世界中の化学事故ニュースへとリンクが毎週貼られてもいます。化学プロセス安全評価の専門家が管理するRisk and Safety Blogでも、同様の実際的な情報が更新されています。

これらは読者に対して日常的注意を喚起するという意味でも、貴重な情報源となっているのではないでしょうか。日本国内でもこういう取り組みは、もっとあって良いと思いますが、今の今までなぜ出てこないのでしょうか?

ブログや無料動画サイトをフル活用した情報発信の試みは、事故再発防止に向けた良きロールモデルとなってくれる―筆者はそう思います。全世界へと発信しうる力を持ったITメディアは、安全管理においても威力を発揮するはずなのです。

今回の事故例がどういう状況にあるのか筆者には知る由もありません。しかし事故を無理やり隠蔽しようとする姿勢は、このネット時代にあって、もはや無意味そのものと言ってよいでしょう。いまやニュースは視聴者単位で分散的にデジタル形式でアーカイブされています。TwitterやSNS、2chなどでも、有象無象のうわさが流れています。これは事実上抑止不可能な情報フローなのです。

このような時代にあっては、起こってしまったことを隠蔽しようとする姿勢は、むしろマイナスに働くとも思えます。そうではなく、再発防止のための合理的対策を打ち出し、それに公明正大かつ真摯に取り組む姿勢をアピールすること―それが信頼を取り戻せる唯一の方法となってくるのではないでしょうか?

ただ、何につけてもイメージと評判が先行するムラ社会・日本にあっては、化学領域に人材がこなくなる逆効果を引き起こしてしまう・・・という危惧があるのかもしれません。

しかし日本社会にマッチしたやり方も、きっとあるはずなのです。次なる犠牲者を出さないためにも、「こういう風にしたら良いんじゃないの」というアイデアを、皆さんもぜひ提案していただければ、と思います。

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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