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有機合成化学協会誌2018年10月号:生物発光・メタル化アミノ酸・メカノフルオロクロミズム・ジベンゾバレレン・シクロファン・クロミック分子・高複屈折性液晶・有機トランジスタ

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2018年10月号がオンライン公開されました。

巻頭言は静岡大学のきのこ博士こと、河岸洋和教授。静岡県立大学の合成化学者菅教授とのきのこにまつわる共同研究で有名ですが、巻頭言でも「物取り」と「物作り」のタッグの重要さを説いています。

さて今月号の総合論文キーワードは、

「生物発光・メタル化アミノ酸・メカノフルオロクロミズム・ジベンゾバレレン・シクロファン・クロミック分子・高複屈折性液晶・有機トランジスタ」

です。有機合成化学の関わる様々な分野からの記事が公開されています。

さらには、Review de Debut 2件とラウンジ、若手PIの語るMyPR、大御所による感動の瞬間と盛りだくさんの内容です。

なお、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。ぜひ御覧ください。

生物発光を担う天然有機分子:セレンテラジン・デヒドロセレンテラジン類の化学合成

神戸大学大学院農学研究科 久世雅樹*、森口舞子、井庭早耶香

査読者によるコメント:生物発光メカニズムの解明に向けた有機合成化学者のアプローチ。セレンテラジン、デヒドロセレンテラジン類の多様な合成法。

メタル化アミノ酸・ペプチドの合成と機能開拓

京都大学化学研究所 高谷光*,磯﨑勝弘,吉田亮太,横井友哉,尾形和樹,社納貴文,安田伸広,岩本貴寛,中村正治*

査読者によるコメント:「組成・配列・空間配置」を制御して金属を自在に集積するという夢のような技術の実現を目指して,生体分子の最大の特徴とも言える“配列制御”特性を利用した金属錯体集積システムを考案して,機能材料や触媒への応用に挑戦しました。

D-π-A型蛍光性色素のメカノフルオロクロミズム

広島大学大学院工学研究科 大山陽介

査読者によるコメント:本総合論文では、摩砕などの機械的刺激に応答した可逆な発光色の変化、すなわち「メカノフルオロクロミズム」を示すD–π–A型発光色素に関する先駆的な研究が述べられています。近年注目を集めているメカノフルオロクロミズムの物質設計コンセプトがどのように発展してきたか、ぜひご覧ください。

ジベンゾバレレン骨格に組み込まれた1-カルコゲノ-1,3-ブタジエン誘導体およびその関連化合物の合成と光物性

埼玉大学大学院理工学研究科 石井昭彦*、中田憲男

査読者によるコメント:本総合論文では、ジベンゾバレレン骨格とカルコゲン置換ブタジエン骨格が融合した、3次元的π共役系を有する有機発光色素の開発について述べられています。筆者らの開発した合成手法により、特異な3次元的分子骨格が鮮やかに構築されるとともに、その詳細な構造・物性相関が明らかにされています。

面性不斉[2.2]パラシクロファンを基盤とする光学活性π共役系分子の合成

関西学院大学理工学部 森崎泰弘*

京都大学名誉教授 中條善樹*

査読者によるコメント:シクロファンは古くから研究されている歴史的な化合物ですが、著者らの創り出す面不斉化合物は、優れたキラル光学特性を持つ有機化合物のブレイクスルーとなりました。「美しい構造には優れた性質が宿る」の典型例です。その構造美をとくとご覧ください。

外部刺激に応答して色と吸収・蛍光波長が大きく変化するクロミック分子の開発

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 神野伸一郎*、谷岡 卓、澤田大介*

査読者によるコメント:古典的な色素合成からの新発見。150年もの歴史を有するキサンテン系色素において、著者らは細やかな観察と分析から新しい多段階応答型クロミック色素ABPXを発見した。長波長光吸収および近赤外発光を示す新しい化合物であり、反応条件の最適化により良好な収率で合成可能である。今後注目を集めていく色素となるでしょう。

次世代の光学材料を指向した高複屈折性液晶の開発

 豊橋技術科学大学大学院工学研究科 荒川優樹

東京工業大学物質理工学院 小西玄一

査読者によるコメント:複屈折性液晶材料の設計指針について、構造有機化学的な観点から詳細に記述されている。分子内のどの構造が、異常光屈折率(ne)および通常光屈折率(n0) にどの程度影響を与えるのか、具体的な値として示されているため、分子設計上の参考となる。液晶に関する専門的語句に関しても、その都度説明があるため、液晶についてなじみのない読者にもよく理解できるように書かれている。

有機トランジスタをプラットフォームとした超分子センサデバイスの開発

東京大学生産技術研究所 南 豪*、南木 創、佐々木由比

査読者によるコメント:有機薄膜トランジスタにホスト・ゲスト化学のエッセンスを取り入れることで、画期的な人工センサーデバイスを作り出すことに成功した研究が紹介されています。有機薄膜トランジスタの基本的な動作原理から分子設計、デバイス設計の考え方まで丁寧に解説されており、有機エレクトロニクスをこれから学びたい読者にもオススメです。

Review de Debut

今月のReview de Debutは以下の2つ。オープンアクセスですのでぜひ御覧ください。

(九州大学大学院工学研究院)小出太郎

近年発表されたパラジウムナノ粒子・パラジウムコロイドを利用したボロン酸およびボロン酸エステル同士の酸化的カップリング反応について紹介しています。

(中央大学理工学部)桑原拓也

Radosevich らによって展開されている遷移金属のように振る舞う有機リン化合物に関する最近の成果を紹介する。筆者の桑原氏は拙サイトのスポットライトリサーチで第4回目にインタビューされています。

ラウンジ:生化学者に好まれる化合物ライブラリーの構築を目指して

(金城学院大学薬学部)市丸 嘉*、藤原裕未、林 一彦

医薬品の構造的特徴や,化合物の医薬品らしさの指標を概説し,特にアカデミアの合成化学者が,どのようにして生化学者達を魅了できる化合物ライ ブラリーを構築していけばよいのかを述べる。

 MyPR:私は有機合成化学者である!

若手PIに熱く語ってもらうコーナーMyPRでは今回、理化学研究所主任研究員である田中克典先生です。「生体内合成化学治療」という新しい有機合成化学の活躍の場を開拓されて活躍されています。

感動の瞬間:ドナー・アクセプター二官能性触媒の開発-DAIB-Zn化学からルテニウム遷移金属・ブレンステッド酸混合不斉触媒へ-

最後の記事、感動の瞬間は名古屋大学の北村雅人教授です。野依研究室時代にビナフチルをカットした話題(笑)や遷移金属/ブレンステッド酸ハイブリッドキラル触媒の開発などについて当時の実験ノートを示しながら臨場感たっぷりに語っています。北村先生の語っているStork研究室のゲルミン合成の話はこちらの記事もどうぞ:Gilbert Stork最後の?論文

なお、この感動の瞬間もオープンアクセスです。ぜひご覧ください。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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