[スポンサーリンク]

一般的な話題

海外機関に訪問し、英語講演にチャレンジ!~① 基本を学ぼう ~

[スポンサーリンク]

筆者は年1~2回ほど海外学会へ参加し、研究成果を対外的に発表しています。ここ数年はそれに数日の滞在を追加し、近郊機関に訪問したうえで、現地PIとのディスカッションおよび英語講演もさせてもらっています。

意識的に続けた結果、既に10機関以上訪れることが出来ました。自己アピールと人脈作りが大半の目的ですが、年1ペースでも続けることでプレゼン度胸がつきますし、英語のやりとりにも抵抗が減ってきます。次世代化学者の皆さんにも、都合が許す限りで是非実践して欲しいと思い、今回筆を執っています。

「そんなこと考えたこともない、知り合いもいないし、レクチャーシップ賞や招待状も無しに、機関訪問なんてしていいの!?」と思ってしまう若手の方々、かなーり多いんじゃないでしょうか。しかし経験上、いくつかのポイントを押さえておけばOKで、意外と実施ハードルは低いです。

本シリーズ記事では、そのための要領を解説していきます。書いていくうち長くなってしまったので、3回に分割します。第1回は【基本を学ぼう】編です。

海外機関訪問、どのタイミングではじめよう?

筆者は海外機関訪問を、着任5年目からはじめました。アカデミックポストに就いてカラーの違う研究を始め、対外的に話せる結果が溜まってきた頃合いです。

具体的にどれぐらいの結果があればいいのでしょうか?後述しますが、現地で割当てられる講演時間は45-60分がほとんどです。そのため、60分のプレゼンを構成可能な研究成果が最低でも必要です。この長さのプレゼンが難しいようなら、講演は控えておきましょう。翌年以降もチャンスはあります!

こういった事情ゆえ、本シリーズは筆者と同年代の研究者(35~40歳ぐらい)向けの話になるかも知れません。しかしもっと若手の方でも、同様のアピールを考えるタイミングはきっと来るはずです。そのときの参考資料として、本稿を活用頂ければ幸いです。

ポスター発表って、埋もれちゃわないですか?

冒頭で書いたとおり、海外国際学会への参加ついでに、周辺日程で近郊機関に訪問してしまう。これが一番コスパが良いと思います。

というよりは、むしろこれぐらいしないと、貴重な研究費や出張時間の使い方としてコスパが悪いのでは?と最近は感じるようにもなりました。こう考えるに至った理由を以下に述べます。

海外学会では、皆さんどんな形式で発表をしていますか?

若手であれば、ほとんどポスター発表だと思います。確かに研究の宣伝にはなりますが、人が入れ替わり立ち替わりすることも手伝って、自らのキャラクターや研究思想をアピールしづらいという欠点があります。また人数も件数も多いので埋もれがちですし、発表者とゆっくり話して知り合いになったり仲良くなることも、案外難しかったりします。いずれby nameで仕事をしたいなら、自己アピールとしてはやや弱いように感じられるのです。

一方で口頭発表はどうでしょう。英語というハードルはあるのですが、そもそも発表者数が限られているので目立てます。ストーリーを伴って研究を理解してもらいやすい、Coffee Breakなどで発表したネタで話しかけて貰いやすい・・・などなど、意外な利点もあったりします。

この事実に気づけた時点で筆者は、ポスター発表ではなく、口頭発表に積極的に応募するようになりました。

ただ、現実的に口頭発表枠はかなり限られています。マイナーな学会でもない限り、審査で弾かれポスターに回されることが少なくありません(というか若いうちは、ほとんどそうなります)。一旦ポスターに採択されたら、学会には参加しなくてはなりません。高額な旅費を払って一日つっ立って終わり・・・というのは勿体ない気が段々してきたのです。

そこで海外学会のついでに現地機関を訪問する計画にしておくと、ポスター発表だけで終わりになりません。もっと言うなら、現地の人に顔と名前を覚えて貰う機会を、自ら増やすことができるのです。高い出張費を払って大したアピールにならない、という悲しい事態が防げます。

どの機関を訪問するのが良い?

一回の出張で訪問する機関数は、予算と滞在可能日数によりますが、1~3機関が適切だと思えます(先日、新学術レクチャーシップでイギリス5機関を訪問する機会に恵まれましたが、そのようなケースはむしろ例外かと思います)。

海外学会は、似たようなトピックが世界各地で開催されています。訪問したい機関が世界のどこにあるかまで見越したうえで、参加学会を選ぶぐらいしても、全く悪くないでしょう。とはいえ近郊機関と一口でいっても、無数にあるように思えます。どこを選べばいいのでしょうか?

筆者自身もかつてアドバイス頂いたことなのですが、慣れないうち/威張れる成果のないうちは、一流機関を避けて訪問するほうがいいと思えます。

馴染みのない研究機関でも、訪問して実際に話して見ると、面白い研究をしている人は意外といたりするものです。昨年はギリシャの学会参加ついでに、アテネ大学に立ち寄って講演してきました。ギリシャ最高の大学であり、スマートな人材が多く在籍している事実は、実際ディスカッションしてみて良く分かりました。一方で国家的財政危機があったため、研究設備はおぼつかない様子でもあり、いろいろな苦労や工夫が必要とされていることも伺い知れました。海外機関訪問は世界の現実を肌感覚で知ることができる、貴重な機会でもあるのです。

アテネ大学・合成化学研究室の様子。

もちろん一般的知名度は低いながらも、自分の研究テーマと密接に関わってくる業界内で知る人ぞ知る研究機関をご存じでしたら、そこを選ぶのも有益だと思います。きっと濃いつながりを作れるでしょう。一方で世界最高峰のハーバード大学は、一生に一度しか講演機会を持たせてくれないという話も耳にしたことがあります。おそらくは希望者が多すぎるからなのでしょうが、そのような例外的機関は、長い人生です、特別な機会に取っておきましょう。

次回は、現地機関へのアポイントメントをどう取るか?について触れてみたいと思います。

海外機関に訪問し、英語講演にチャレンジ!シリーズ一覧

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 化学の学びと研究に役立つiPhone/iPad app 9選
  2. 第94回日本化学会付設展示会ケムステキャンペーン!Part I
  3. ポンコツ博士の海外奮闘録⑫ 〜博士,今と昔を考える〜
  4. 化学研究ライフハック:化学検索ツールをあなたのブラウザに
  5. サムライ化学者高峰譲吉「さくら、さくら」劇場鑑賞券プレゼント!
  6. 光照射によって結晶と液体を行き来する蓄熱分子
  7. Reaxys Ph.D Prize2014ファイナリスト45名発…
  8. マテリアルズ・インフォマティクスの導入・活用・推進におけるよくあ…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 夏の必需品ー虫除けスプレーあれこれ
  2. アコニチン (aconitine)
  3. ゲルマニウムビニリデン
  4. 【十全化学】新卒採用情報
  5. 化学者のためのエレクトロニクス講座~無電解卑金属めっきの各論編~
  6. シュレンクフラスコ(Schlenk flask)
  7. 新しい選択的ヨウ素化試薬
  8. 有機化学1000本ノック【反応機構編】
  9. 独バイエル、世界全体で6100人を削減へ
  10. 理系のための口頭発表術

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年3月
月 火 水 木 金 土 日
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

ケムステ人気新着記事 トップ 5【2026年8月版】

2026年8月にケムステでは22本の新しい記事を公開しました。この記事では、その新着記事の中から、ペ…

シュライナー チオウレア触媒/Schreiner’s Thiourea Catalyst

⏱ 30秒サマリー 何をする反応か — 2本の N–H による二座水…

タリンにいってきました BOS2026 後編

前編では、BOS2026とタリンについて、また今回訪問した理由、そして実際に講演するところまでお話し…

「そっちが切れちゃうの!?」 〜弱い結合を残し、強い結合を切断する HAT 反応の開発〜

第721回のスポットライトリサーチは、金沢大学 大学院医薬保健学総合研究科(平野研究室)博士前期課程…

SNS予想で盛り上がれ!2026年ノーベル化学賞は誰の手に?

2026年秋、今年も怒涛のノーベル賞ウィークが到来します!化学賞は日本時間 20…

予想外から!cis-クレロダン型ジテルペノイド類の発散的不斉全合成

TEMPO⁺BF₄⁻を用いたラクトン化および付加環化反応による骨格構築と酸素官能基の導入により、ci…

【書評】ストラウブ化学数学 / MATHEMATICAL METHODS for MOLECULAR SCIENCE

内容化学を学び、研究するうえで必要になる数学の知識を懇切丁寧に教えるテキスト。化学の…

化学コミュニケーション賞2026、候補者募集開始!

化学コミュニケーション賞は、日本化学連合が2011年に設立した賞です。「化学・化学技術」に対する社会…

高感度・高速で複数の分子を読み分ける、染色不要の分子イメージング法を開発【BER-CARS/CSRS】

第720回のスポットライトリサーチは、九州大学 光物理化学研究室 (当時 筑波大学) 村上優介 さん…

K. C. Nicolaou が引退を宣言 – 全合成の巨塔と「最後の怪物」

有機合成化学、とりわけ天然物全合成の世界を長年牽引してきた Kyriacos Costa Nicol…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP