有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年2月号がオンライン公開されました。
2月って怒涛の毎日ですよね。。。昨日のことも覚えてないレベルで大変な毎日ですが、有機合成化学協会誌を読んで気を落ち着かせます。
今月号も充実の内容です。
キーワードは、「有機触媒・ルイス酸触媒・近赤外光応答性ポルフィリン類縁色素・アリルパラジウム中間体・スルホン・ポリオキソメタレート」です。
今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。
巻頭言:平常心を保ち, 異常になれ!
今月号の巻頭言は、武田薬品工業株式会社 リサーチ ニューロサイエンス創薬ユニット アジアNCEプロダクション研究所 リサーチマネジャー 谷口孝彦 博士による寄稿記事です。柔道と化学、研究に通づるものがあるという点、深く共感します。必読です。
フェニルシクロプロパン型アミン有機触媒の設計および不斉反応への応用
プロリンを代表とする二級アミン触媒は、プロリンからプロリン誘導体へ、さらに、軸不斉化合物を基本骨格とするアミン触媒へと進化を遂げてきた。本論文では、実用性と汎用性を兼ね備えた最高峰のアミン触媒「フェニルシクロプロパン骨格を有するアミン触媒」への深化の過程が存分に紹介されている。
ルイス酸触媒を用いた有機変換反応に関する量子化学的研究
ルイス酸触媒を用いた有機変換反応の反応性や選択性におけるルイス酸の役割をまとめた総説です。軌道相互作用だけでなく、配位に伴う静電相互作用や分極も考えなければならないという、量子化学の観点から明快に説明した解説です。
N-混乱修飾法による近赤外光応答性ポルフィリン類縁色素の合成
構造有機化学玄人のみならず、ポルフィリンって何かいっぱいあるから何かよくわからない、、、そんな人にもオススメな九州大学石田先生の奨励賞受賞論文です。N混乱法による物性向上のアプローチや、エキゾティックなN混乱ポルフィリン分子の構造をコンパクトにまとまった記事の中で堪能できます。
アリルパラジウム中間体を求核剤として利用した環化反応の開発
*横浜薬科大学薬学部薬科学科(245-0066横浜市戸塚区俣野町601)
酢酸アリルの酸化的付加およびアレンのカルボパラデーションにより生成したアリルパラジウム中間体を求核剤として用いた環化反応について、その開発の経緯も含めて詳細に述べられています。反応開発を指向する研究者のみならず、有機合成化学を学ぶ大学院生にも一読をお勧めします。
スルホンを出発原料に用いたπ拡張アルキンおよびアルケンの合成
本論文では筆者らが開発したスルホンとアルデヒドを出発原料に用いた二重脱離反応を基盤として、光歪み型環状アセチレンの合成と続くジベンゾペンタレン合成、そして分子設計によるジベンゾペンタレンの発光特性の発現、光反応による低環境負荷型Juliaオレフィン化反応プロセス開発などの研究展開が躍動感たっぷりに紹介されている。まさに有機合成の力強さが感じられる総合論文である。
ポリオキソメタレートの精密設計と光触媒への応用
無機分子であるポリオキソメタレートの合成に対して有機化学を融合することで、自在に分子構造を設計し、光触媒としての機能を見つけてきた研究が紹介されています。基礎的な背景の丁寧な紹介にはじまり、触媒への応用研究まで広くカバーされていて、分野外の研究者・学生の方たちにも新しい発想をもたらしてくれると期待される論文です。無機分子を有機合成する醍醐味をぜひ味わってください。
Review de Debut
今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひ。
・固定化酵素を活用したフロー合成の新展開 (北海道医療大学薬学部創薬化学講座(医薬化学))坪郷 哲
感動の瞬間:人や化合物との一期一会
今月号の感動の瞬間は、九州大学・理事、副学長 久枝 良雄 教授による寄稿記事です。
思ったより人生って短いですよね。すぐ過ぎ去ってしまうからこそ、人や化合物との一期一会を大切に過ごしたいと感じます。必読です。
これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。