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日本の化学産業を支える静岡県

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東海道新幹線のあるあると言えば、寝て起きてもまだ静岡県にいることですが、起きて外を眺めると頻繫に化学工場が見えると思います。そこで静岡県と化学産業の関係について少し調べてみました。

静岡県の基本情報

まず化学産業に入る前に静岡県の経済全体を見ていきます。主要な項目をまとめると下記のようになり、人口、面積、総生産額などが他県と比較して上位に来ているのが分かります。特に第 2 次産業や製造品出荷額は全国トップクラスであり、日本の製造業の根幹を担っていることが分かります。

静岡県の主要経済指標 (参考:静岡県の産業・金融面の概要)

次に業種別製造品出荷額を見ていきます。飲料・たばこ・飼料木材・木製品パルプ・紙・紙加工品は第一位のシェアを誇っています。飲料に関しては、豊富な水資源を活かして飲料の製造拠点が集積しているようです。紙加工品についても富士市周辺に多くのメーカーが集積しており全国有数の紙産地となっています。

業種別製造品出荷額の抜粋 (参考:静岡県の産業・金融面の概要)

肝心の化学関連の業種については、どれも5位以内と高いランクとなっており、静岡県のシェアは極めて高いと言えます。

静岡県に製造・研究拠点を持つ化学企業

では、実際にどれ程の企業が静岡県に事業所を持っているのでしょうか。東証プライムに上場している化学医薬品に分類される企業について事業所の場所を調べてみました。結論から言うと非常に高いわけではありませんが、数多くの企業が静岡県に製造拠点を持っていることが分かりました。

東証プライムに上場している化学企業の静岡県に事業所を持つ割合

東証プライムに上場している医薬品企業の静岡県に事業所を持つ割合

このうち、中枢を担っていると考えられる静岡県の拠点をいくつか紹介します。まずは旭化成についてで、静岡県富士市に研究所と製造拠点を持ちます。製造しているのはエレクトロニクス材料、感光材、機能膜であり、付加価値製品の生産拠点と紹介されてます。研究拠点としては前述の分野だけでなく、旭化成グループ全社の事業創出や事業発展をリードしていく事をミッションとした基盤技術研究所が置かれています。

さらに旭化成グループにてヘルスケアビジネスを担当している旭化成ファーマは、富士市に加えて伊豆の国市に工場と医薬生産センター、医薬研究センターを持ち創薬研究を行っています。

次に紹介するのはクミアイ化学工業です。クミアイ化学工業は、農薬の製造を中心に事業を行っている企業です。静岡県富士市には工場があり、研究所については、ほとんどが静岡県にあります。

  • プロセス化学研究センター:富士市
  • 製剤技術研究センター:静岡市
  • 創薬研究センター:磐田市
  • 農薬研究センター・生命環境研究センター:菊川市

最後は富士フイルムです。工場は静岡県富士宮市と吉田町にあり、エレクトロニクス マテリアルズ研究所とグラフィックコミュニケーション研究所が吉田町にあります。富士宮では、レントゲンフィルムや写真印画紙用支持体に加えて、圧力測定用プレスケールや光学調整フィルムといった機能性フィルムを製造しています。

上記で紹介した企業は一部であり、この他にもたくさんの企業の拠点が静岡県にあります。東京、名古屋などの大消費地に近く、東海道の主要幹線が東西に走るといった利点があることから、歴史的に産業が集積してきました。しかし2008年のグローバル金融危機や東日本大震災以降は、生産拠点の海外シフトや業務継続体制の強化を意識した企業の県外移転の動きが活発になり、静岡県の産業の空洞化が加速しました。それでも近年では新東名高速道路開通による交通利便性の向上などにより、工場立地件数はトップ5に入る勢いがあるそうです。

静岡県で化学産業に従事されている方や出張で頻繁に訪れる方は、日本の化学を支えているという気持ちを持って仕事に励んでほしいと思います。また静岡に縁が無い方でも新幹線などで通過する際には、様々な化学品が作られていることを思い出してほしいと思います。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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