[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第75回―「分子素子を網状につなげる化学」Omar Yaghi教授

[スポンサーリンク]

第75回の海外化学者インタビューは、オマー・ヤギー教授です。カリフォルニア大学ロサンゼルス校 化学・生化学科(訳注:現在はカリフォルニア大学バークリー校に所属)の教授であり、分子ビルディングブロックを結合させ、クリーンエネルギー応用に役立つ結晶を作る化学に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

発見のスリルと分子の美しさからです。分子に恋をしたのは10歳のときで、学校の図書館で偶然見つけた教科書に、二つの分子(水とメタン)がball-and-stick表記で描かれていたのを見たときです。それが分子の構造図やパターンに興味を持つきっかけになり、後にReticular Chemistry(強い結合によって分子をネットワーク状につなぎ合わせること)の発展に至りました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

ピアニストか庭師です。これらの職業(仕事)は孤独であり、労働と自然の果実が美しく現われる数少ない仕事です。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

分子内の原子一つ(または複数)を交換し、それを毒から薬に変えてしまえる点で、化学者はユニークな存在です。そういった小さな変化と大きなインパクトは、原子がどのように結合しているか、その結合パタンを様々な用途に合わせどのように変えていくかという知識の結果です。私たちは化学者としてこの目標を念頭に置き、重要な貢献を続けなければなりません。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

ガリレオです。信じられないほど説得力があり、シンプルなディフェンス(…心にもないことを書きました)が、功を奏したことについて話をしたいです。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

ハーバード大学のポスドクとして25歳の時に行った実験は、Re/Seクラスタの固体合成に関するものでした。一般に、ビーカー、フラスコ、試験管などすべてのものが怖くて、研究室から遠ざかっていました。特にこれらの物体や、ここに挙げることができない数多くの物体に対する、不合理な恐怖でした。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

オックスフォード英語辞典とトゥーランドットにします。

原文:Reactions – Omar Yaghi

※このインタビューは2008年8月1日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第48回―「周期表の歴史と哲学」Eric Scerri博士
  2. 第七回 巧みに非共有結合相互作用をつかうー Vince Rote…
  3. 第23回「化学結合の自在切断 ・自在構築を夢見て」侯 召民 教授…
  4. 第153回―「ネットワーク無機材料の結晶学」Micheal O&…
  5. 第52回「薬として働く人工核酸を有機化学的に創製する」和田 猛教…
  6. Christoph A. Schalley
  7. 第99回―「配位子設計にもとづく研究・超分子化学」Paul Pl…
  8. 第72回―「タンパク質と融合させた高分子材料」Heather M…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ヤマハ発動機、サプリメントメーカーなど向けにアスタキサンチンの原料を供給するビジネスを開始
  2. ケミストリー四方山話-Part I
  3. 諸藤 達也 Tatsuya Morofuji
  4. Passerini反応を利用できるアルデヒドアルデヒド・イソニトリル・カルボン酸・アミン(
  5. 共有結合性リガンドを有するタンパク質の網羅的探索法
  6. 2017年12月14日開催: 化学企業4社によるプレミアムセミナー
  7. ベンジル保護基 Benzyl (Bn) Protective Group
  8. ストーク エナミン Stork Enamine
  9. デニス・ドーハティ Dennis A. Dougherty
  10. ロンドン・サイエンスミュージアム

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

モータータンパク質に匹敵する性能の人工分子モーターをつくる

第640回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所・総合研究大学院大学(飯野グループ)原島崇徳さん…

マーフィー試薬 Marfey reagent

概要Marfey試薬(1-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル-5-L-アラニンアミド、略称:FD…

UC Berkeley と Baker Hughes が提携して脱炭素材料研究所を設立

ポイント 今回新たに設立される研究所 Baker Hughes Institute for…

メトキシ基で転位をコントロール!Niduterpenoid Bの全合成

ナザロフ環化に続く二度の環拡大というカスケード反応により、多環式複雑天然物niduterpenoid…

金属酸化物ナノ粒子触媒の「水の酸化反応に対する駆動力」の実験的観測

第639回のスポットライトリサーチは、東京科学大学理学院化学系(前田研究室)の岡崎 めぐみ 助教にお…

【無料ウェビナー】粒子分散の最前線~評価法から処理技術まで徹底解説~(三洋貿易株式会社)

1.ウェビナー概要2025年2月26日から28日までの3日間にわたり開催される三…

第18回日本化学連合シンポジウム「社会実装を実現する化学人材創出における新たな視点」

日本化学連合ではシンポジウムを毎年2回開催しています。そのうち2025年3月4日開催のシンポジウムで…

理研の一般公開に参加してみた

bergです。去る2024年11月16日(土)、横浜市鶴見区にある、理化学研究所横浜キャンパスの一般…

ツルツルアミノ酸にオレフィンを!脂肪族アミノ酸の脱水素化反応

脂肪族アミノ酸側鎖の脱水素化反応が報告された。本反応で得られるデヒドロアミノ酸は多様な非標準アミノ酸…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP