[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

ロルフ・ヒュスゲン Rolf Huisgen

[スポンサーリンク]

ロルフ・ヒュスゲン(Rolf Huisgen;1920年6月13日-2020年3月26日)は、ドイツの有機化学者であった。ミュンヘン大学名誉教授。ヒュスゲンが開発した1,3-双極子環化付加反応(ヒュスゲン反応)は、クリックケミストリーの中心的反応とされるアジド-アルキン環化付加反応の原型である(写真:Wikipedia)。

経歴

1943 ミュンヘン大学 博士号取得(指導教官:ハインリッヒ・ヴィーラント教授)
1947 教授資格認定(habilitation)
1949 テュービンゲン大学 准教授
1952 ミュンヘン大学 教授
1988 ミュンヘン大学 名誉教授(emeritus)

受賞歴

1961 Liebig Medal
1965 Lavoisier Medal(フランス化学会)
1979 Otto Hahn Prize for Chemistry and Physics
1987 Adolfo Quilico Medal(イタリア化学会)
2019 クラリベイト・アナリティクス 引用栄誉賞

研究業績

1,3-双極子環化付加反応(ヒュスゲン反応)

キャリア初期の頃、ヒュスゲン教授はニトロソ・アゾ・ジアゾニウム化合物やベンザイン合成の研究に取り組んでいた。1950年代になり、彼は、一見無関係だと思われる複数の反応が、同様の反応機構にて進行していることに気がついた。そこで彼が提唱したのが、1,3-双極子環化付加反応(ヒュスゲン反応)である(1960年、ロンドンにて)。

図1. (a) 1,3-双極子の共鳴構造。(b) 1,3-双極子の具体例。

1,3-双極子(1,3-dipole)とは、三原子からなる4π電子化学種であり、図1aのように正電荷と負電荷が分離した共鳴構造を持つ。具体的には、アジド・ニトリルオキシド・ニトロン・オゾンなどが挙げられる。

図2. 1,3-双極子環化付加反応。

Huisgen教授は、1,3-双極子がアルケンやアルキンなどの親双極子(dipolarophile)と付加環化反応を起こし、5員複素環化合物を生成することを示した。この反応は、熱許容の[4π+2π]環化付加であり、協奏的・立体特異的に進行する。

2000年代になり、MeldalやSharplessによって、この反応をもとにした銅触媒存在下アジド-アルキン環化付加反応(CuAAC)が開発された。この反応は、他の官能基の存在に影響を受けない生体直交型の反応であり、100%に近い高収率で反応が進むことから、クリックケミストリーの中心的反応として幅広い分野で用いられている。

名言集

 

コメント&その他

 

関連動画

 

関連文献

  1. R. Huisgen, Angew. Chem., Int. Ed. 1963, 2, 565. DOI; 10.1002/anie.196305651

関連書籍

[amazonjs asin=”4781309542″ locale=”JP” title=”クリックケミストリー―基礎から実用まで (ファインケミカルシリーズ)”]

関連リンク

Avatar photo

kanako

投稿者の記事一覧

アメリカの製薬企業の研究員。抗体をベースにした薬の開発を行なっている。
就職前は、アメリカの大学院にて化学のPhDを取得。専門はタンパク工学・ケミカルバイオロジー・高分子化学。

関連記事

  1. トーマス・レクタ Thomas Lectka
  2. 田中耕一 Koichi Tanaka
  3. 村橋 俊一 Shun-Ichi Murahashi
  4. 吉見 泰治 Yasuharu YOSHIMI
  5. 佐藤 伸一 Shinichi Sato
  6. ジョアンナ・アイゼンバーグ Joanna Aizenberg
  7. 八木 政行 Masayuki Yagi
  8. エドウィン・サザン Edwin M. Southern

注目情報

ピックアップ記事

  1. ランバーグ・バックランド転位 Ramberg-Backlund Rearrangement
  2. 混合原子価による芳香族性
  3. 科学雑誌 Newton 2019年6月号は化学特集!
  4. 有機化学美術館へようこそ―分子の世界の造形とドラマ
  5. 製薬各社の被災状況②
  6. フェノール類を選択的に加水素分解する新触媒を開発:リグニンから芳香族炭化水素へ
  7. 光照射下に繰り返し運動をおこなう分子集合体
  8. 有機合成化学協会誌2022年11月号:英文特別号
  9. 伊丹健一郎 Kenichiro Itami
  10. 武田、フリードライヒ失調症薬をスイス社と開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年9月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

欧米化学メーカーのR&D戦略について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、欧米化…

有馬温泉でラドン泉の放射線量を計算してみた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉は、日本の温泉で最も高い塩分濃度を持ち黄褐色を呈する金泉と二酸化炭素と放射性のラドンを含んだ…

アミンホウ素を「くっつける」・「つかう」 ~ポリフルオロアレーンの光触媒的C–Fホウ素化反応と鈴木・宮浦カップリングの開発~

第684回のスポットライトリサーチは、名古屋工業大学大学院工学研究科(中村研究室)安川直樹 助教と修…

第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」を開催します!

第56回ケムステVシンポの会告を致します。3年前(32回)・2年前(41回)・昨年(49回)…

骨粗鬆症を通じてみる薬の工夫

お久しぶりです。以前記事を挙げてから1年以上たってしまい、時間の進む速さに驚いていま…

インドの農薬市場と各社の事業戦略について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、インド…

【味の素ファインテクノ】新卒採用情報(2027卒)

当社は入社時研修を経て、先輩指導のもと、実践(※)の場でご活躍いただきます。…

味の素グループの化学メーカー「味の素ファインテクノ社」を紹介します

食品会社として知られる味の素社ですが、味の素ファインテクノ社はその味の素グループ…

味の素ファインテクノ社の技術と社会貢献

味の素ファインテクノ社は、電子材料の分野において独創的な製品を開発し、お客様の中にイノベーションを起…

サステナブル社会の実現に貢献する新製品開発

味の素ファインテクノ社が開発し、これから事業に発展して、社会に大きく貢献する製品…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP