[スポンサーリンク]

ケムステニュース

2011年文化功労者「クロスカップリング反応の開拓者」玉尾皓平氏

政府は25日、2011年度の文化勲章受章者、文化功労者を発表した。化学分野から有機金属化学の玉尾皓平京都大学名誉教授(現・理化学研究所基幹研究所所長)が文化功労者に選ばれた。

今年の文化勲章は「ドクタークロスカップリング」である玉尾皓平先生が選ばれました。パラジウム触媒として用いたクロスカップリング反応で2010年のノーベル化学賞はリチャード・ヘック、鈴木章、根岸英一氏に与えられましたが、その先駆けとなるニッケル触媒を用いたクロスカップリング反応「熊田ー玉尾ーCorriuクロスカップリング」反応を発見され、クロスカップリング反応の開拓者として知られる玉尾先生が文化功労者に選ばれることはとても喜ばしいことです。

すでに、2011年ノーベル化学賞発表前後に玉尾先生の特集は以下のものを中心にして何度か行いましたが

記事参照 「ノーベル化学賞を担った若き開拓者達」「クロスカップリングの研究年表」「2009年ノーベル化学賞は誰の手に?

、その内容と最新の研究も含めまして簡単に紹介したいと思います。

「ドクタークロスカップリング」

pioneer3.png

勝手に名付けさせていただきましたが、冒頭にも述べたように、玉尾氏は触媒的クロスカップリング反応の開拓者として非常に有名な化学者です。

発見当時29歳の玉尾皓平は京都大学の熊田研究室の助手(今の助教)になったばかりでした。玉尾は東工大の山本明夫先生が報告したニッケル錯体で展開されていた化学に魅せられていました。論文を読んでいると、ふと上記に示した1961年の歴史的論文からニッケル触媒によりクロスカップリング反応が進行するのではないかと気づき、すぐに当時の学生にやってもらいました。

数日後、予想通りクロスカップリングは進み、生成物が得られたのです。これは現在のクロスカップング反応の礎となっています。しかし、実はほぼ同時期に、フランスのCorriuらにより同様の反応が発見されており、今ではこの反応は師匠である熊田誠教授(故人)と彼らの名前を冠して

 熊田-玉尾-Corriuクロスカップリング

と呼ばれています。 反応がどのように進行するかという理由も示すことができたため、ここ歴史的結果から怒涛のように効率性やさらなる反応性の高いクロスカップリング反応が生まれてくることはいうまでにもありません。

 

有機ケイ素化学の第一人者

玉尾氏は、この熊田・玉尾・コリューカップリング反応の発見の他にもたくさんの有機化学、有機金属化学に関する発見をしています。特に有機ケイ素(Si)化学に関する化学に関しては世界でも第一人者の化学者としてしられています。

例えば、形式的に”ケイ素を酸素にかえる”玉尾酸化も同様に発見者の名前がつけられた有機合成化学反応です(人名反応という)。

m-ol-14.gif

玉尾酸化

さらにその後、山口茂弘氏(現名古屋大学教授)と共に開発した、環状ケイ素化合物「シロール」の新規合成法の開発、さらにはシロール誘導体の有機エレクトロニクス材料(電子輸送材料)の展開を行なっています。

9-2.jpg

シロール誘導体(http://www.sci.nagoya-u.ac.jp/kouhou/08/p8_9.htmlから転載)

現在は京都大学を定年退職され、理化学研究所の基幹研究所所長です。それでも研究は続けられ、最近サイエンス誌に「テトラシラシクロブタジエン」という不安定な新規ケイ素化合物の合成を報告されたばかりです(記事:含ケイ素四員環-その2-)。

 

「一家に一枚周期表」サイエンスコミュニティーへ一助

ikkaniitimaisyuukihyo.png

一家に一枚周期表

化学者としても一流ですが、サイエンスコミュニティーの一助となる「一家に一枚周期表」という、元素の用途などについての写真やイラストを盛り込んだユニークな周期表を作成しました。このような化学を広めるため活動も非常に大事なことですので、筆者個人的にはこの貢献はすばらしいと考えています。現在では最新の2010年ノーベル化学賞の結果をとりいれた第6版が文科省のページからダウンロード可能です。

というわけで、簡単に玉尾氏の業績を紹介させていただきました。次年度から日本化学会会長という職も兼任されるようで、ますますお忙しくなると思われます。最後にお弟子さんからのお祝いの一言を紹介して終わりたいと思います。

「玉尾皓平先生の文化功労者への選出,心よりお慶び申し上げます.今月末に古希を迎えられる先生への素晴らしい誕生日プレゼントですね.有機金属化学,有機元素化学における数々のご功績が評価されてのことと存じます.その一端に少しでも共に関わることができたことを幸せに思います.これからも,何歳になっても,いつものように目をキラキラ輝かせながら化学を語っていただきたいです.本当におめでとうございます!」

おめでとうございます!

関連書籍

The following two tabs change content below.
webmaster
Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院准教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 国際化学オリンピック2016でもメダルラッシュ!
  2. ダイセル化学、有機合成全製品を値上げ
  3. EUで化学物質規制のREACHが施行
  4. 配糖体合成に用いる有機溶媒・試薬を大幅に削減できる技術開発に成功…
  5. 同仁化学研、ビオチン標識用キットを発売
  6. 秋の褒章2009 -化学-
  7. 世界初!うつ病が客観的に診断可能に!?
  8. 「日本化学連合」が発足、化学系学協会18団体加盟

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 理系のための就活ガイド
  2. メルク、主力薬販売停止で15%減益
  3. 信越化学、排水・排ガスからの塩水回収技術を開発
  4. ジャクリン・バートン Jacqueline K. Barton
  5. 第28回 錯体合成から人工イオンチャンネルへ – Peter Cragg教授
  6. 「花粉のつきにくいスーツ」登場
  7. 玉尾皓平 Kohei Tamao
  8. シクロプロパンの数珠つなぎ
  9. 医薬各社、アルツハイマー病薬の開発進まず
  10. グラフェンの量産化技術と次世代デバイスへの応用【終了】

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

アルキルラジカルをトリフルオロメチル化する銅錯体

中国科学院 上海有機化学研究所のChaozhong Liらは、アルキルハライドから系中生成させた炭素…

Baird芳香族性、初のエネルギー論

第126回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科(相田卓三教授) 博士後期課程1年の…

N末端選択的タンパク質修飾反応 N-Terminus Selective Protein Modification

N末端はタンパク鎖の中で1箇所しか存在しないため、これを標的とする修飾反応は必然的に高い位置・化学選…

デヒドロアラニン選択的タンパク質修飾反応 Dha-Selective Protein Modification

デヒドロアラニン(dehydroalanine, Dha)はセリンもしくはシステインから誘導される特…

DNAを切らずにゲノム編集-一塩基変換法の開発

ゲノム編集といえば、今流行りのCRISPR/Cas9を思い浮かべる方が多いと思います。CRISPR/…

文献管理ソフトを徹底比較!

今や、科学者向けの文献管理ソフトはよりどりみどりだ。その中から代表的な8つを検討した。タイト…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP