[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

[2+2]光環化反応 [2+2] Photocyclization

[スポンサーリンク]

 

概要

オレフィン間の付加環化反応は、ひずんだシクロブタン環と込み入った炭素骨格を一挙に構築できる強力な手法である。

[2π+2π]系は熱禁制なので、特殊な場合を除き光環化条件が用いられる。位置選択性を厳密に制御するため、分子内環化条件が頻用される。電子不足オレフィン+電子豊富オレフィンの組み合わせがよく用いられる。

 

基本文献

<Review>

 

開発の歴史

1908年にClamicianらがカルボンに1年間太陽光を当てるとカンファーが生成することを見出した。その後1950年代に光環化反応が精力的に研究され、複雑化合物の構築に非常に有効であることが明らかとなった。

Giacomo Luigi Ciamician

Giacomo Luigi Ciamician

 

反応機構

光照射によりビラジカル中間体を生じ、これが相方のオレフィンと段階的に反応することでシクロブタンが生じる。このため、オレフィンの幾何異性はシクロブタンの立体に必ずしも反映されない。(参考: Chem. Rev. 1993, 93, 3.

22_photo_2.gif

反応例

Saudinの合成[1]


22_photo_3.gif

Retro-Mannich反応と組み合わせたManzamine Aの骨格合成[2]


22_photo_4.gif

Pentacycloannamoxic acidの合成[3]


22_photo_5.gif

Quadricyclaneの合成[4]


22_photo_6.gif

Ginkgolide Bの合成[5]


22_photo_7.gif

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

パイレックス製容器は280nm以下の波長を透過しない。それ以下の短波長光を必要とする場合には石英製容器を用いる。

※高圧水銀灯は200-600nmの波長範囲で照射する。発熱するため、反応容器の温度上昇に注意。通常は水冷を同時に行う。

 

関連動画

参考文献

[1] Winkler, J. D.; Doherty, E. M. J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 7425. DOI: 10.1021/ja9916198
[2] Winkler, J. D.; Axten, J. M. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 6425. DOI: 10.1021/ja981303k
[3] Mascitti, V.; Corey, E. J. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 3118. DOI: 10.1021/ja058370g
[4] Smith, C. D. Org. Synth. 1971, 51, 133. DOI: 10.15227/orgsyn.051.0133
[5](a) Crimmins, M. T. et al. J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 10249. DOI: 10.1021/ja993013p (b) Crimmins, M. T. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 8453. DOI: 10.1021/ja001747s

 

関連書籍

 

関連リンク

関連記事

  1. 四酸化ルテニウム Ruthenium Tetroxide (Ru…
  2. 正宗・バーグマン反応 Masamune-Bergman Reac…
  3. [6π]光環化 [6π]Photocyclization
  4. カストロ・ステファンス カップリング Castro-Stephe…
  5. アラン・ロビンソン フラボン合成 Allan-Robinson …
  6. 福山アミン合成 Fukuyama Amine Synthesis…
  7. ネバー転位 Neber Rearrangement
  8. 藤原・守谷反応 Fujiwara-Moritani Reacti…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 投票!2017年ノーベル化学賞は誰の手に!?
  2. 高分子鎖デザインがもたらすポリマーサイエンスの再創造 進化する高分子材料 表面・界面制御アドバンスト コース
  3. ビュッヒ・フラッシュクロマト用カートリッジもれなくプレゼント!
  4. 松本和子氏がIUPACのVice Presidentに選出される
  5. 「アニオン–π触媒の開発」–ジュネーブ大学・Matile研より
  6. 1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン:1,3-Diiodo-5,5-dimethylhydantoin
  7. 立体選択的なスピロ環の合成
  8. 次世代型合金触媒の電解水素化メカニズムを解明!アルキンからアルケンへの選択的水素化法
  9. 論文投稿・出版に役立つ! 10の記事
  10. クルクミン /curcumin

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年9月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

キシリトールのはなし

Tshozoです。 35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP