[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

試薬会社にみるノーベル化学賞2010

[スポンサーリンク]

 

12月10日に迫ったノーベル化学賞授賞式。なにやらメディア若干慌ただしくなってきました。受賞講演を理解するために、授賞式に参加してくださいという新聞社もいたり…いやいや普通に働いてるんで無理なんで(苦笑)。

それはそうとして、受賞テーマのクロスカップリング反応といえば、触媒をもちいて有機化合物と有機化合物をくっつけるものですから、元となる有機化合物(有機ボロン酸など)、パラジウム触媒や配位子が必須ですね。もちろん一から合成することもできますが、そんなのめんどくさいという人は試薬会社から購入するでしょう。ということは「原料」を供給している試薬会社はここぞとばかりアピールしているはずで、有用なコンテンツが多いのでは?と考えました。研究者の皆さんも試薬を毎日使っていますが、意外に試薬会社のホームページを精査したことはないのではないでしょうか(私もその一人ですが)。

そういうわけで、暇つぶしに(暇では全く無いですが)、「試薬会社にみるノーベル化学賞2010」と題して日本の試薬会社のホームページを覗いてみることにしました。

シグマアルドリッチ・ジャパン

言わずしれたアルドリッチおじさんがトレードマークの最大手試薬会社です。有機合成のページにいってみると既に遅かったか、確か特集がトップページにあった気がしましたが無くなっていました。うーん、悔しいのでいろいろと調べてみました。

すると、アルドリッチではChemistry Webiners(ケミストリーウェビナーズ)というウェブで講演が聞けるサービスをやっているらしく、なんとその中で根岸英一先生の講演(タイトル:Zirconium-catalyzed Asymmetric Carboalumination of Alkenes (ZACA Reaction) )が1時間も聴けるではないか!

webinar_negishi.png

ケミストリーウェビナーズ

 アクセスは簡単。こちらからウェビナーのサイトへ行き、簡単な登録を済ませるのみ。他にもイリノイ大学の若手でMIDAボロネートを開発したBurkeの講演も聴けます。動画ではないですが、 Krische、Organ、Trost、Molanderなどの講演スライドも見ることができるようです。知らなかった…

東京化成工業

日本を代表する試薬会社のひとつ試薬会社の1つ東京化成工業。このケムステも9年も前から応援してもらってお世話になっております。ここもトップページからはすでにノーベル化学賞関連の話題は消え、通常営業に戻っていました。関連する話を探してみると、一定期間で発行している試薬情報誌TCIメールの中に鈴木章先生による寄稿論文がありました。しかも執筆は1年半前と比較的新しいようです。なかなかうまくまとまっています。ところで、鈴木ー宮浦クロスカップリング反応をSMC反応とよんだことは有りませんが、本人がいっているのだから略してもいいのかもしれません。

Tcimail_suzuki.png

TCIメール:鈴木先生の寄稿論文

和光純薬工業

 和光純薬工業に関してはまだトップページに「祝ノーベル化学賞 鈴木章先生、根岸英一先生!」というバナーが掲載されていました。にはいってみると関連試薬とカタログが掲載されています。その中に和光純薬時報に掲載された根岸英一先生の論説を見つけました。どうやら3年ぐらい前のものですが、なかなかいい論説のようです。

negishi_ronsetu.png

根岸先生の論説

関東化学ナカライテスクには残念ながらなにもありませんでした。

 

というわけで時間の都合で3社しか探しませんでしたが、試薬を理解し利用してもらうために、かなり有用なコンテンツを持っているようです。こういうコンテンツを強化してもう少しアピールしたら良いサイトになるのではないかと思いました。特にアルドリッチのウェビナーズは頻繁に更新されればオススメですのでぜひ御覧ください。

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排…
  2. J-STAGE新デザイン評価版公開 ― フィードバックを送ろう
  3. ちっちゃい異性を好む不思議な生物の愛を仲立ちするフェロモン
  4. 学会ムラの真実!?
  5. タミフルをどう作る?~インフルエンザ治療薬の合成~
  6. プロセス化学ー合成化学の限界に挑戦するー
  7. リガンド革命
  8. 水素社会~アンモニアボラン~

注目情報

ピックアップ記事

  1. 「化学の匠たち〜情熱と挑戦〜」(日本化学会春季年会市民公開講座)
  2. Carl Boschの人生 その9
  3. 5配位ケイ素間の結合
  4. 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド : 1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiimide
  5. ヘリウム不足いつまで続く?
  6. 有機合成化学協会誌2023年8月号:フェノール-カルベン不斉配位子・カチオン性ヨウ素反応剤・水・アルコール求核剤・核酸反応場・光応答型不斉触媒
  7. ナイトレン
  8. 化学者のためのエレクトロニクス講座~めっきの原理編~
  9. 危ない試薬・面倒な試薬の便利な代替品
  10. 2021年ノーベル化学賞ケムステ予想当選者発表!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年12月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP