[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

マーティン・カープラス Martin Karplus

[スポンサーリンク]

 

マーティン・カープラス(Martin Karplus、1930年3月15日(ウィーン、オーストリア生) – 2024年12月28日、94歳没)は、アメリカの理論化学者である。ハーバード大学名誉教授。

「複雑な化学システムのためのマルチスケールモデルの開発」の業績にて2013年ノーベル化学賞を受賞。

経歴

1950 ハーバード大学 卒業
1953 カリフォルニア工科大学 博士号取得(Liuns Pauling教授)
1953-55 オックスフォード大学 博士研究員 (Charles Coulson教授)
1957-60 イリノイ大学
1960-66 コロンビア大学
1979 ハーバード大学化学科 Theodore William Richard Professor

兼任
ストラスブール大学 生物物理化学研究所 所長

 

 受賞歴

1987 Langmuir Award
1993 ACS Award in Theoretical Chemistry
2001 Christian B. Anfinsen Award
2013 ノーベル化学賞

研究概要

核磁気共鳴分光法におけるKarplus式の提唱[2]

ビシナル位二面角(φ)からカップリング定数(3J値)を見積もれるKarplus式を提唱した。この式が教えることは、二面角が90°になるとJ=0となり、0°もしくは180°のときにJ値は最大になるということである。

M_Karplus_5.gif

3J(φ)= Acos2φ + Bcosφ + C

量子力学/分子力学(QM/MM)法の原型に関する研究 [3]

Karplusとノーベル賞を同時受賞したArieh Warshelは、平面π共役系分子の物理特性を高精度で予測できる計算手法を共同開発した。本法では精度の要求されない立体構造に絡む部分を分子力学法、高精度が必要なπ電子系の振る舞いを量子力学法で計算するという発想により、現実的な計算量に落としこみつつ高精度で物性をシミュレーションことに成功した。

M_Karplus_3.png

(画像はNobelprize.orgのプレス資料より)

この成果は後にQM/MM法と呼ばれる、巨大生体高分子などの計算手法へと発展を遂げていくことになる。

 

生体高分子の分子動力学的シミュレーション

生体分子、たんぱく質等のモデリング及びシミュレーションを行うためのソフトウェアパッケージCHARMMを開発[4]し、現在もアップデートを行っている。

 

コメント&その他

  1. 写真を趣味としており、世界各所で撮影したものをウェブで一般公開している。
  2. 兄であるRobert Karplus(故人)はカリフォルニア大学バークリー校で教鞭を執った理論物理学者。

 

名言集

 

関連動画

 

関連文献

[1] Autobiography: Karplus, M. Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 2006, 35, 1. doi: 10.1146/annurev.biophys.33.110502.133350
[2] Karplus, M. J. Am. Chem. Soc. 1963, 85, 2870. DOI: 10.1021/ja00901a059
[3] Warshel, A.; Karplus, M. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 5612. DOI: 10.1021/ja00771a014
[4] (a) Brooks, B.R.; Bruccoleri, R.E.; Olafson, B.D.; States, D.J.; Swaminathan, S.; Karplus, M. J. Comp. Chem. 1983, 4, 187. doi:10.1002/jcc.540040211 (b) Brooks, B.R.; Brooks, C. L., III; Mackerell, A. D., Jr; Nilsson, L.; Petrella, R. J.; Roux, B.; Won, Y.; Archontis, G.; Bartels, C.; Boresch, S.; Caflisch, A.; Caves, L.; Cui, Q.; Dinner, A. R.; Feig, M.; Fischer, S.; Gao, J.; Hodoscek, M.; Im, W.; Kuczera, K.; Lazaridis, T.; Ma, J.; Ovchinnikov, V.; Paci, E.; Pastor, R. W.; Post, C. B.; Pu, J. Z.; Schaefer, M.; Tidor, B.; Venable, R. M.; Woodcock, H. L.; Wu, X.; Yang, W.; York, D. M.; Karplus, M. J. Comp. Chem. 2009, 30, 1545. doi:10.1002/jcc.21287

 

関連書籍

有機化合物のスペクトルによる同定法 (第8版): MS,IR,NMRの併用

有機化合物のスペクトルによる同定法 (第8版): MS,IR,NMRの併用

Silverstein,Robert M., Webster,Francis X., Kiemle,David J.
¥5,060(as of 07/29 00:45)
Amazon product information
Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 飯島澄男 Sumio Iijima
  2. ネイサン・ネルソン Nathan Nelson
  3. ドナルド・トマリア Donald Tomalia
  4. カリコ― カタリン Karikó Katalin
  5. 金子 弘昌 Hiromasa Kaneko
  6. 高知和夫 J. K. Kochi
  7. 長谷川 靖哉 Yasuchika Hasegawa
  8. Wen-Jing Xiao

注目情報

ピックアップ記事

  1. ルイス酸/塩基でケイ素を操る!シリレンの原子価互変異性化
  2. 化学研究ライフハック: Evernoteで論文PDFを一元管理!
  3. 骨粗鬆症、骨破壊止める化合物発見 理研など新薬研究へ
  4. 日本薬学会第144回年会「有機合成化学の若い力」を開催します!
  5. 科学探偵 シャーロック・ホームズ -警察やFBIに先駆けて犯罪捜査に科学を取入れた探偵
  6. 免疫応答のシグナル伝達を遮断する新規な免疫抑制剤CPYPP
  7. クリーギー グリコール酸化開裂 Criegee Glycol Oxidative Cleavage
  8. サイコロを作ろう!
  9. E.・ピーター・グリーンバーグ E. Peter Greenberg
  10. パーソナライズド・エナジー構想

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年11月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

フィーゼルマン チオフェン合成/Fiesselmann Thiophene Synthesis

概要フィーゼルマン チオフェン合成(Fiesselmann Thiophene Synthesi…

“とび跳ねる水滴”に潜む物理 〜接触時間とエネルギー源で読む撥水・防氷のテク〜

熱したフライパンに落ちた水滴が、玉になってコロコロと走り回り、冷えた面では、結露水が合体した瞬間に跳…

AI時代に研究者がすでに持っている力・これから伸ばしたい力

論文要約や文献検索など、研究現場でもAI活用が日常化する一方、「自分の仕事の先行き」に漠然とした不安…

miHub®を活用した探索的データ解析の実践

開催概要研究開発においてデータ活用が進む中、機械学習モデルの構築や予測解析に…

“ある特効薬”のはなし ~本田宗一郎氏の回想から

Tshozoです。最近実家に戻っては色々と廃棄するなどの店じまいを少しずつ進めているのですが、中…

高分子鎖を束ねた新しい共重合体「束状共重合体」が誕生

第715回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科(植村研究室)に所属されていた亀谷…

2026年「有機溶媒危機」へのアンサー。北大発・メカノクロスが挑む、溶媒に依存しない新たな合成法 = “メカノケミカル有機合成”の社会実装

株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発の…

“壊れないよう” に作ってきた半導体ポリマーを、あえて “壊れるよう” に作る化学

半導体ポリマーは長いあいだ、「いかに壊れにくく、長持ちさせるか」といったような安定性を競って進歩して…

有機合成化学協会誌2026年7月号:固体高分子電解質・電子ドナー・アクセプター錯体・機械学習法・trichodermamide類・エナンチオ選択的スキップジエン合成法

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年7月号がオンラインで公開されています。…

第62回Vシンポ「見えない空気を科学する~センサによる室内環境・臭気の見える化と快適空間デザインの最前線~」を開催します!

こんにちは、Macyです。第62回Vシンポのご案内をさせていただきます。今回は、前回同様…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP