[スポンサーリンク]

一般的な話題

アメリカで Ph. D. を取る –希望研究室にメールを送るの巻– (準備編)

[スポンサーリンク]

先日、米国大学院受験の準備に関するお話をしたところ、嬉しいことに反響をいただいたので続編を投稿いたします。この記事と次回の記事で、志望する研究室の教授にメールを送り自己 PR する方法について、私が実践したノウハウとともにお話しします。

ごあいさつ

記事冒頭にも書きましたが、先日、米国大学院受験に必要なテストである GRE subject のなかの Chemistry の受験報告をしました。日本人受験者が少なかったので、あまり読まれないだろうと思ってアクセス数を確認したところ、公開から 2 ヶ月ほどで合計 4000 以上のアクセスがあったことが分かりました。留学に興味がある人は少なくないけど、プロセスが謎すぎて実際に出願までたどり着く人が少ないのか、と勝手に分析しています。私の場合は、幸運にもケムステスタッフという立場を利用して、留学中のスタッフの方からアドバイスをいただける環境にあります 。具体的には、広い分野にアンテナを張りながら、スポットライトリサーチなどで勢力的に記事を書かれている、 Orthogonene さんにお世話になっています。その他にも、多くの方の力を借りています。この場かりて、感謝申し上げます。この恩を、今後留学を希望する読者の方々に還元できればという思いもあり、連載化にいたりました。

前置きが長くなりましたが、この記事の趣旨説明です。本連載は米国で学位を Ph.D することを目標に邁進している学生が、日記感覚で近況や心境を記録するためのものです。 (つまり、無事合格できた場合は、留学中の様子も報告します。留学できなかったら…今は考えていません。)ただし、前回「リアルタイムな状況をお伝えする」と宣言しましたが、記事化するまでに、若干、時間のラグがあることをご理解ください。では本題である、希望する研究室の教授にメールを送ってコンタクトの方法について、お話しします。

準備しておいたもの

実際にメールを送り始めたのは、7月頭からです。しかし、それまでにいくつか準備したことがあるので、紹介します。(ややダイジェスト的になります。また機会があれば詳細な別記事を作ろうと思います。)

テストのスコアを揃える

私は受験要件を満たしています

メールを送る際には、自分が合格する見込みがあることを示すことで、返信の確率を上げることができると思います。特に TOEFL や IELTS などの語学の試験は、足切りに使われるそうです。それらのテストの点数を持っていないと、メールを送っても相手にされない場合もありました。点数が高ければ合格率が上がるものではないと認識していますが、点数が低いのは問題だと思います。ちなみに私が第 1 志望の大学院の最低点である TOEFL iBT 90点を超えたのは、今年の 1 月のこと(といっても点数的にはギリギリ)。ネット上の他のブログなどを見た感じでは、留学を希望する人間にしては低いかもしれません。しかし、足切られることがないという安心感により、その他のことに一所懸命なので、それ以降のテストでは点数が伸びていません。中途半端に 90 点程度を狙うくらいなら、多くのトップ校が定める最低点である100 点を取る方がよいと思います。

GRE General & Subject

そのほかに必要な試験である GRE Subject (Chemistry) については、前回の記事でお話しした通りで、今年の 4 月に受験しました。GRE General はあまり重視されないという噂なので、Subject を受け終わってから 1 ヶ月半ほどかけて勉強し、5 月に受けました (単語だけは、本当に難解であると聞いていたので、3ヶ月ほどかけてダラダラと勉強していました)。全く自慢できる点数ではないですが、典型的 (?) な理系人間がどれくらい取れるかを紹介すると、V/Q/W = 142/165/3.5 でした (一応補足すると、V と Q は 170 点満点、W は 6 点満点)。低いかもしれません。しかし、後でメールを送った際に、この点数について特に批判されることはなかったので、よしとしています。

CV を作る

略さずにいうと、Curriculum Vitae で、履歴書のようなものです。CV の作り方については、ケムステ内に別記事がありますのでこちらを参考にしました (CV書いてみた : ポスドク編)。この記事のタイトルはポスドク編とありますが、書くべき項目はあまり変わらないと思います。私は、この記事を読んだ上で、学生の CV を公開している研究室を見つけたので、それらのいいとこどりをして作成しました (具体的にはこちらの研究室)。基本的に雛形のようなものはないのですが、その分、自由度が高いです。どうすりゃいいかよく分かんねえよという方の為に、私が作成したテンプレートをこちらに残しておきます (こんなのがあればどれだけ楽だったか…)。立派なものではないですが、公開して減るものではないので、これを改良してさらに良いものを作ってください。

CV_Template

メールの署名を英語へ

送り主の名前を日本語表記ではなくて英語表記に変更します。メールの最後の署名についても、所属大学などを英語に書き換えておきました。これは、迷惑メールとして無視される可能性を、少しでも低くするためです。例えば、いきなり送り主の名がハングルであるメールが来ると、一瞬、戸惑いませんか? 署名変更にどれくらい効果があるかはわかりませんが、設定を変更するだけなので、すぐにできます。無理に短所を挙げるなら、普通に日本人に連絡を取る際に若干イキっている感じが出ることくらいなので、実践することをオススメします。

コネを作る

田舎学生の僕/私に、そんなの作れるわけねぇよ!とか言わずにお聞きください。今の時代は留学が珍しいことではないため、「知り合いに留学している/いた人がいるから紹介しようか」と力を貸してくれる人が必ずどこかにいます。世界は狭いもので、希望する研究室と繋がる可能性もゼロではありません。そのような留学経験者の方とメールをすることで、研究室の状況について知ることができます。

もう一つの利点は、次のステップで教授にメールを送る際に、「〇〇さんとメールでお話しし、興味を持ちました」と書くことができる点です。この一言入れると、何処の馬の骨かわからない留学生というレッテルを貼られることを回避でき、返信率がアップします。さぁ、恥ずかしがることなくなく、夢を言いふらしましょう。

例文のテンプレートを作る

ようやく、コンタクトを取るためのメールの作成の話に移ります。まずは第一希望の研究室に送ることを想定して、文章の雛形をつくりました。書く内容については、インターネットを検索すれば、簡単に見つかります。一応、私が書いた英語を日本語にするとこんな感じです。(若干修正はしています)

Dear Professor 〇〇,

日本の〇〇大学(院)何年生の〇〇です。

〇〇年の秋入学向けて、××大学の〇〇科の Ph.D プログラムに出願しようと考えています。なので、あなたの研究室で研究をすることができれば、光栄です。

私は××大学では、△△の研究に取り組んでいます。これを通して、〇〇に興味を持ったので、〇〇の研究をしたいと思っています。なので、〇〇なあなたの研究室で〇〇に取り組みたいです。

〇〇年の秋に graduate students を取る予定はありますか。また、どんなプロジェクトが現在進んでいるかお聞きしてもいいですか。

私の small CV は次の通りです。正式なものはこのメールに添付したので、読んでいただければ幸いです。

返事をお待ちしております。

Sincerely,

〇〇

–––

Grade

GPA 4.00/4.00

TOEFL 120/120

GRE Chemistry 990

GRE General V/Q/W 170/170/6 (私の場合は、低かったので、わざわざ載せていません)

Research experience

Three years on organic chemistry laboratory

One poster presentation and one oral presentation (in Japan)

これを最低限のテンプレートに持っておいて、あとは研究室に応じて本文を少々いじりました。相手の名前だけを変えて使い回すことは、しませんでした。というより、使い回せるような薄っぺらいメールは送らないように心がけました。相手の研究に対して興味があることを示すために、いくつかの論文を読んで、勉強してからメールを送った場合もありますし、研究室のホームページをただチラ見しただけの場合もありました。

他のブログなどでは、先生方はお忙しい方もいるので、最初のメールはできるだけ短い方がよい、といった意見も書かれています。私は、(その研究室の志望度に応じて) 色々な長さのパターンで送ってみましたが、短いメールで返信が来ない場合もあれば、長くてもきちんと返信していただける場合もありました。本文の長さはあまり関係ないかもしれません。

前置きをダラダラと話して長くなってしまったため、今回はここまでにしようと思います。次回、実際にどんな返信が返ってきたかについて。そしてその返信に、どのように返信したかについてお話しします。

関連記事

関連書籍

[amazonjs asin=”4757418566″ locale=”JP” title=”理系大学院留学―アメリカで実現する研究者への道 (留学応援シリーズ)”] [amazonjs asin=”4759811516″ locale=”JP” title=”アメリカ大学院で成功を勝ち取る超★理系留学術”]
Avatar photo

やぶ

投稿者の記事一覧

PhD候補生として固体材料を研究しています。学部レベルの基礎知識の解説から、最先端の論文の解説まで幅広く頑張ります。高専出身。

関連記事

  1. フラーレン:発見から30年
  2. 「非晶質ニッケルナノ粒子」のユニークな触媒特性
  3. 部分酸化状態を有する純有機中性分子結晶の開発に初めて成功
  4. シクロデキストリンの「穴の中」で光るセンサー
  5. キノリンをLED光でホップさせてインドールに
  6. 高懸濁試料のろ過に最適なGFXシリンジフィルターを試してみた
  7. ガラス器具の洗浄にも働き方改革を!
  8. ひどい論文を書く技術?

注目情報

ピックアップ記事

  1. 博士課程学生の奨学金情報
  2. 韓国に続き日本も深刻化?トラック運送に必要不可欠な尿素水が供給不安定
  3. 【12月開催】第4回 マツモトファインケミカル技術セミナー有機金属化合物「オルガチックス」の触媒としての利用-ウレタン化触媒としての利用-
  4. 【産総研・触媒化学研究部門】新卒・既卒採用情報
  5. オキシ-コープ転位 Oxy-Cope Rearrangement
  6. 保護基の使用を最小限に抑えたペプチド伸長反応の開発
  7. ニッケル錯体触媒の電子構造を可視化
  8. ボラン錯体 Borane Complex (BH3・L)
  9. 安積徹 Tohru Azumi
  10. ピナー反応 Pinner Reaction

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年9月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

【11月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】 題目:アクリル含浸樹脂 ビステックスシリーズのご紹介

■セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物の“オルガチッ…

【日産化学 27卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で12領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

hERG阻害 –致死性副作用をもたらす創薬の大敵–

創薬の臨床試験段階において、予期せぬ有害事象 (または副作用) の発生は、数十億円以…

久保田 浩司 Koji Kubota

久保田 浩司(Koji Kubota, 1989年4月2日-)は、日本の有機合成化学者である。北海道…

ACS Publications主催 創薬企業フォーラム開催のお知らせ Frontiers of Drug Discovery in Japan: ACS Industrial Forum 2025

日時2025年12月5日(金)13:00~17:45会場大阪大学産業科学研究所 管理棟 …

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2027卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

欧米化学メーカーのR&D戦略について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、欧米化…

有馬温泉でラドン泉の放射線量を計算してみた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉は、日本の温泉で最も高い塩分濃度を持ち黄褐色を呈する金泉と二酸化炭素と放射性のラドンを含んだ…

アミンホウ素を「くっつける」・「つかう」 ~ポリフルオロアレーンの光触媒的C–Fホウ素化反応と鈴木・宮浦カップリングの開発~

第684回のスポットライトリサーチは、名古屋工業大学大学院工学研究科(中村研究室)安川直樹 助教と修…

第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」を開催します!

第56回ケムステVシンポの会告を致します。3年前(32回)・2年前(41回)・昨年(49回)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP