[スポンサーリンク]

一般的な話題

アメリカで Ph. D. を取る –希望研究室にメールを送るの巻– (実践編)

[スポンサーリンク]

本連載は米国で学位を Ph.D することを目標に邁進している学生が、日記感覚で近況や心境を記録するためのものです。前回、希望する研究室の教授にメールを送ってコンタクトを取る際の準備や、実際に送ったメールのテンプレートについて紹介しました。今回は、幸運にも返信をいただけたときの建設的な返信方法についてお話しします。

いざ、ファーストコンタクト

実際に送ります。初めの頃は英語のメールに慣れていなかったので、1 通ずつ送りました。時差を考慮して、相手側がメールを受け取る時間が朝か昼になるように、日本の深夜か早朝に送りました。この思いやりに意味があったかはわかりませんが、うまいタイミングで送ると、最短であれば15分くらい返信が来ました。どうせ簡単には返信こないだろうと思ってメールを投げた後にすぐ寝ようとしたら、返事が来てしまい、寝れなくなります。実際、最初のうちは、返信が来たことの嬉しさよりも、むしろ戸惑いや驚きの感情が先に来ます (実際どう返信したかは、後ほど)。なので、第 3 志望くらいから順に送り、徐々に志望度の高い先生へ送るようにしました。段々英語のメールに慣れてきたので、このやり方は正解でした。

ちなみに、返信がくる場合は、大抵 24 時間以内に来ると思います。一度だけ、メールを送った 2 日後に返信が来ましたが、基本的に1日で返信が来なければ 1 週間待っても来ないという認識でいいと思います。返信がこない場合は催促のメールを送ります。

返信が来たら?

実は困ってしまうのは、どう返すかです。最初のメールはテンプレートに沿って書けば、なんとかなります。個人的にはその後どんな対応を取るかの方が大事な気がしています。この場面では化学知識はもちろんですが、マメな性格とコミュニケーション能力も問われます。というわけで、コンタクトをする際のイメージトレーニングになるよう、実際にどんな返信が返って来たかを何パターンかに分けて紹介します。

ぜひ応募しなさい・歓迎パターン

一瞬テンションが上がる返信です。具体的には You look to have strong background. とか I strongly recommend to apply 〇〇 university. とかそんな感じです。この返信がくれば素直に嬉しいのですが、リップサービスである可能性も否めません。実際、返信の口調は、送り主の性格によるものなので、ぬか喜びはしないように心がけました。ここから志願者の選別は始まっているものだと考えて、自分がいかに意欲と能力を持っているかを示していきます。というわけで、そのアピール方法について紹介します。

まずは現在の研究事情を知る

まず、この種の返信では、ファーストコンタクトを取るときの「どんなプロジェクトがありますか?」という質問に対して、丁寧に答えてくださります。大体は研究室のホームページに書かれている通りですが、今一番ホットなのはこれで、国際的にやってるのはこれで、最近始めたのがこれで、というように内部事情を教えてくださる場合があります。ときどき、研究室のホームページにはまだ載ってないんだけど、こういったテーマのものがもうすぐパブリッシュされるんだよね、と教えてくださる場合もありました。

研究アイデアを提案する

そこで、送られて来た情報を元に、「〇〇のプロジェクトに興味があります。こういった研究をすることは可能ですか。」などと返しました。つまり、自分で研究課題を見つけ出す能力があることを見せつけてやります。といっても、私の場合はこれができたのは第一志望の研究室の一例だけ。具体的な研究計画が見当たらなければ、素直に「その研究を行うにあたって、読んでおくべき論文はありますか」と返して、勉強熱心なことをアピールしました。もちろんアピールするだけでなくて、きちんと勉強します。

学生と連絡を取る

特に聞くこともなければ、「学生と連絡取ってもいいですか」と返しました。逆に、こいつから話を聞いといてくれ、という感じで 最初のメールに対する返信をいただくときに、cc に学生のアドレスが含まれていることもあります。

学生からは、ぶっちゃけた話を聞き出しました。PI の指導スタイル、学生の仲のよさ、学校生活などなど。例えば PI の指導スタイルについては、He is more of a “hands-off” PI, meaning we interact with him mainly during once a week group meetings. とか He is a very hands-on adviser and likes to talk about the research a lot. と教えてくれます。対照的ですね。これらの情報は、研究室を選ぶ判断材料になるので、聞いておいて損はないと思います。

返信はくれるけど、そっけないパターン

具体的には、「学生は取るつもりだよ。頑張ってね。」という感じです。一行で返されます。一発目で返信をくれずに、2回目以降に返信をくれた場合は、このパターンでした。

この返信が来て、なお研究テーマについて知りたければ、うまく聞き出さなければなりません。しかし、1通目のメールで研究テーマについて聞いているにも関わらず、それについて無視されているということは、次も無視される確率が高いと思います。一度だけ、粘り強く返信したことがありますが、あまり態度は変わりませんでした。なので、あまり志望度が高くない相手からこの返信が来た場合は、深追いしない方がよいかもしれません。

返信が来ないパターン

3回までチャレンジしました。10人に送って2人ありました。そもそも返信がもらえることの方が珍しいそうでなので、あまりへこむことはないと思います。ただし、なんとしてもメールの返信が欲しいという場合は、同様のメールを送り続けることは無意味だと思います。例えば、これまでの自分の研究や、興味のある研究の要約を送るなどの手立てが考えられます。私はまだここまで手が回っていませんが、そのうち実践したいと思います。

ちなみに、私は返信をいただけた割合が高い方だと思います。高い返信率に対する確かな理由はわかりませんが、テストのスコアを揃えていたことは、一つの要因であったと思います。特に学部卒からの応募の場合は、研究業績よりも、今後のポテンシャルを見るために、学校の成績や GRE のスコアを重視するという噂も聞いています。なので、スケジュールに余裕のある人は、夏の前までに全ての試験のスコアを揃えておくことをお勧めします。

振り返り

このように教授にメールを送ったところで、合格を確約してくれるような言葉はもらえませんでした。そして、複数の研究室にメールを送ることは手間がかかりました。そもそも日本語のメールであっても、目上の方とのメールは気を使います。それを英語で 3, 4 人同時期に相手するというのは、相当に神経を使います。しかし、この活動には次のようなメリットがありました。

  1. 内部事情や最新の研究プロジェクトがわかる
  2. モチベーションが上がる

1つめに関しては、志望研究室を見極める材料になりました。Ph.D を取得するまでには 5 年かそれ以上はかかるでしょう。研究室との相性を調べ、希望する研究テーマに取り組めるかを知っておくことは重要だと思います。特に Nature や Science に載ったようなテーマでは、実際には accept までに数年かかっているらしいです (今の自分には無縁なので、聞いた話です)。ということは、それらの研究をやりたいと思っても、自分が留学する頃には、関連するプロジェクトは終わっていることもあるかもしれません。逆に、現在の研究テーマを聞き出すことができ、その研究背景について知識を深めておくと、奨学金を申請で研究計画を書く際に武器になります。奨学金の申請書作成の奮闘ぶりについては、また改めて記事を作ろうと思います。

2 つめに関しては、完全に気持ちの問題です。しかし、重要です。私は、学生さんとメールのやり取りをする中でと「この研究室に行きたいんだ」と再認識することができました。遠い国にある憧れのグループであっても、実際には、年がそう離れてはいない学生が研究しているという、当たり前のことを確認できます。勇気を出して連絡してみると、夢が少し現実味を帯び、モチベーションが上がるのでオススメです。

以上、完全に個人的な経験に基づいたお話でした。この記事が、教授にメールを送る際のイメージトレーニングの一環になれば幸いです。次回は奨学金の申請書作成についてお話しします。 (有機反応も俯瞰したいところですが、一旦ペースダウンしています。ごめんなさい。)

関連記事

関連書籍

[amazonjs asin=”4757418566″ locale=”JP” title=”理系大学院留学―アメリカで実現する研究者への道 (留学応援シリーズ)”] [amazonjs asin=”4759811516″ locale=”JP” title=”アメリカ大学院で成功を勝ち取る超★理系留学術”]
Avatar photo

やぶ

投稿者の記事一覧

PhD候補生として固体材料を研究しています。学部レベルの基礎知識の解説から、最先端の論文の解説まで幅広く頑張ります。高専出身。

関連記事

  1. Chemistry Reference Resolverをさらに…
  2. ケムステイブニングミキサー2017ー報告
  3. 祝100周年!ー同位体ー
  4. シリコンバレーへようこそ! ~JBCシリコンバレーバイオ合宿~
  5. 抗体を液滴に濃縮し細胞内へ高速輸送:液-液相分離を活用した抗体の…
  6. 触媒がいざなう加速世界へのバックドア
  7. 不活性アルケンの分子間[2+2]環化付加反応
  8. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑧:ネオジム磁…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 三共と第一製薬が正式に合併契約締結
  2. 第25回「ペプチドを化学ツールとして細胞を操りたい」 二木史朗 教授
  3. マイクロリアクターによる合成技術【終了】
  4. ケテンの[2+2]環化付加反応 [2+2] Cycloaddition of Ketene
  5. アスタキサンチン (astaxanthin)
  6. 第78回―「膜タンパク質の分光学的測定」Judy Kim教授
  7. シリンドロシクロファン生合成経路の解明
  8. 【第一回】シード/リード化合物の創出に向けて 1/2
  9. サラダ油はなぜ燃えにくい? -引火点と発火点-
  10. BASF、新規のキラル中間体生産プロセスを開発!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年9月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

「MI×データ科学」コース 〜LLM・自動実験・計算・画像とベイズ最適化ハンズオン〜

1 開講期間2026年5月26日(火)、29日(金) 計2日間2 コースのねらい、特色近…

材料の数理モデリング – マルチスケール材料シミュレーション –

材料の数理モデリング概要材料科学分野におけるシミュレーションを「マルチスケール」で理解するた…

第59回天然物化学談話会@宮崎(7/8~10)

ごあいさつ天然物化学談話会は、全国の天然物化学および有機合成化学を研究する大学生…

トッド・ハイスター Todd K. Hyster

トッド・カート・ハイスター(Todd Kurt Hyster、1985年10月10日–)はアメリカ出…

“最難関アリル化”を劇的に加速する固定化触媒の開発

第 703回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院 理工学府 博士課程前期で…

「ニューモダリティと有機合成化学」 第5回公開講演会

従来の低分子、抗体だけでなく、核酸、ペプチド、あるいはその複合体(例えばADC(抗体薬物複合体))、…

溶融する半導体配位高分子の開発に成功!~MOFの成形加工性の向上に期待~

第702回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理学部(田中研究室)にて助教をされていた秋吉亮平 …

ミン・ユー・ガイ Ming-Yu Ngai

魏明宇(Ming-Yu Ngai、1981年X月XX日–)は米国の有機化学者である。米国パデュー大学…

第55回複素環化学討論会

複素環化学討論会は、「複素環の合成、反応、構造および物性」をテーマとして、化学・薬学・農芸化学など幅…

逐次的脱芳香族化と光環化付加で挑む!Annotinolide B初の全合成

Annotinolide Bの初の全合成が報告された。キノリンの逐次的な脱芳香族化と分子内光環化付加…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP