[スポンサーリンク]

ディスカッション

アマゾン・アレクサは化学者になれるか

[スポンサーリンク]

音声認識の進歩により、機械が人間の声を認識しアクションを起こすことが家庭用の機器で手軽にできる世の中になっています。そこで化学に関する言葉もちゃんと認識されるか、アマゾン・アレクサにいろいろな化合物や化合物を伝える実験を行いました。

はじめに

Amazon アレクサをインストールしたスマホやホーム機器では、声で物事を調べたり、家電の操作、ネット注文ができます。これは、人間の声を音声認識によって文字に変換し、それを元にネットを検索したり、別の機器の指示信号の出力を行うことができるからです。筆者は、ManomaというSonyのスマートホームサービスでアレクサの機能を使用しておりますが、日常で使う言葉は大抵認識してくれ、テレビやエアコンをつけるときに声で操作でき重宝しています。日常の用語ではなく、分子名や反応名、分析機器の名前などもちゃんと認識してくれるのでしょうか。ということで実際にアレクサにいろいろな用語を話しかけてどのような反応になるのか調べてみました。

スピーカーの音をスマホで録音したので雑音が入ってしまっています、申し訳ございません。またヘリウムを吸ってしまい声が高くなっています(嘘)。

物質名の場合

まず、化合物の名前を認識して調べてくれるかを確かめるために「XXXって何?」と聞いてみました。

まずエタノールですが、しっかりと認識されました。

一般的な溶媒(アセトン・メタノール)も問題なく認識されますが、解説文の漢字の読みが誤っているときがあります。

「アセトン」

「メタノール」最後は何言っているかよくわかりません。

次にDMSOを試しました。「ジメチルスルホキシド」と「D・M・S・O」では正しく認識されましたが、

「ジメチルスルホキシド」

「D・M・S・O」

「ディムソー」では、正しく認識されませんでした。自分の発音が悪いのかもしれません。

THFの場合「テトラヒドロフラン」少し嚙んでも認識されましたが、

「T・H・F」は二回やってもダメでした。残念。

元素名も調べてみました。元素記号の下の方も認識されますが、

「オスミウム」

「タングステン」

「フランシウム」

元素であれば認識されましたが、「ホルミウム」や「ジスプロシウム」といったマイナーな希土類元素は認識されませんでした。ジスプロシウムは磁石に使われているほど有名です!

次にハロゲン化物を調べました。フルオロスルホン酸は認識されましたが、

フッ酸は、人名関連の言葉に間違えられることもあります。

フルオロメタンは、認識されませんでした。ゆっくりしゃべりましたが結果は変わりませんでした。

1-ブタノールはうまくいきませんでした。よく考えたらハイフンは読まないので認識されなくて当然かもしれません。

慣用名の場合、有名な化合物であれば認識されますが、Wikipediaがトップに検索されない化合物は認識されませんでした。

「メラトニン」

スピノシン」「アスパラプチンアレクサ、ケムステ読んで勉強してね!

ギンコライド」銀行ではありません。

反応名・化学用語の場合

まずは成功例から

「核磁気共鳴分光法」

「ヘック反応」認識はされますが、有機ハロゲンばけもの(笑)

残念ながら有名な反応や用語でも認識されませんでした。

「スワーン酸化」

「円二色性」間違った引用元のリンクを読み上げるほうが長い・・・

このようにある程度有名な言葉は、正しく認識されて調べた結果が出力されますが、すこしマイナーな化合物や用語になると一般的な用語を当てつけるような挙動がみられました。また、Wikipediaに掲載されているような言葉でも単語が長いと正しく認識されませんでした。専門用語の音声で完璧に理解するにはもう少し技術の発達が必要なのかもしれません。

翻訳機能を試す

アレクサには日本語の単語を英語に翻訳する機能があり例えば、

という風にネイティブな発音で返してくれます。これを化合物でやってみました。長くなってきたので失敗例のみ紹介します。塩化メチレンえんかみちこいになってしまいました。

注文機能を試す

アレクサにはAmazonに注文できる機能があります。これで試薬や実験器具を注文できないか試してみました。酢酸ナトリウムは問題なく注文できるようです。

[amazonjs asin=”B07BKTPV7Y” locale=”JP” title=”酢酸ナトリウム500g(無水)【食品添加物】”]

ビーカーも注文できます。

[amazonjs asin=”B07CZN91N1″ locale=”JP” title=”柴田科学 ビーカー 目安目盛付き 100mL 6-214-03″]

しかし、ロータリーエバポレーターは認識されませんでした。

[amazonjs asin=”B06XXJVX7D” locale=”JP” title=”DLABDLAB ロータリーエバポレーター 縦型 /3-7048-01″]

最後にAmazonで売っている、とんでもなく高価な器具も注文できるのか試してみました。エアシャワーは、まさかの100万円越えですが淡々と金額を読んでカートに入れてしまいました。

[amazonjs asin=”B07WZBTWLC” locale=”JP” title=”アズワン エアシャワー PSAS-T91PSL-E”]

今回は、予め売っている製品の名前をAmazonで調べてからアレクサに問いかけたので、正しい認識が多かったのかもしれません。そのため、AmzonのCMのように漠然と実験中に足りなくなったものを声で注文するのは難しそうです。

アレクサの逆襲

偉そうにアレクサをテストしているが、そういうお前はちゃんと化学を知っているのか?ということでアレクサの逆襲が始まりました。

まじめな話、スマホにアプリをインストールするようにアレクサにもスキルを追加する機能があります。その中に、進研ゼミ高校講座さんが作成した「放課後、わたしと化学1問1答」というスキルがあり、これをインストールすると化学のクイズで遊ぶことができます。あなたは憧れのセンパイが作った「化学クラブ」への入部するために、アレクサが出題するクイズに100問連続正解しなくてはなりません。

[amazonjs asin=”B07BHC1XZJ” locale=”JP” title=”放課後、わたしと化学1問1答”]

問題は、センター試験基礎レベルの化学だそうです。2回連続の不正解でチャレンジは終了となります。緊張の第一問は、簡単な二択で助かりました。ほとんどが2択ですが、ときどき自由回答の問題も出題されます。

5問目以降はテンポになれ、第十問まで難なくクリアしました。センパイ、化学好きです(笑)。

第15問で2択問題を間違えました。アレクサは淡々と指摘します。

これなら100問まで余裕だろと思っていたら、まさかの電気親和力を答えられず挑戦終了。ああ、恥ずかしい。

レビューには苦戦しているコメントが寄せられているので、化学を専門にしていても簡単ではないようです。自分のアレクサにはモニタが無いので、聞き取りだけである状況がより難しくしています(言い訳)。モニタがあるデバイスを使うと読み上げるスクリプトが画面に表示されるようです。また、レビューにはアレクサが正しく認識してくれず不正解になったとの声もあり、問題の解答によっては上記で試したように認識が難しいのかもしれません。

まとめ

結果をまとめると、アレクサはまあまあ化学を知っているといったところでしょうか。これは大変くだらない企画でしたが、まじめなことを考えると専門用語の音声認識は、日常会話よりも使われる頻度はずっと少なく需要は高くないと思います。しかし、専門用語が人の理解や行動を妨げている場合もあり、音声認識によってその壁を取り除くことができると予想されます。また、一つの音声認識システムが全ての専門用語をカバーする必要はなく、状況に応じて専門分野を認識し、分野に応じてシステム自体が変われば、誤認識や誤発声も少なくなるかもしれません。

関連書籍

[amazonjs asin=”4478107300″ locale=”JP” title=”アマゾン化する未来 ベゾノミクスが世界を埋め尽くす”] [amazonjs asin=”B07KX9X3JC” locale=”JP” title=”Amazon Alexaプログラミング入門 impress top gearシリーズ”]

実験器具に関するケムステ過去記事

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. タンパク質の定量法―ビューレット法 Protein Quanti…
  2. 第7回日本化学会東海支部若手研究者フォーラム
  3. 君はホンモノの潤滑油を知っているか?:自己PRで潤滑油であること…
  4. 【12月開催】第4回 マツモトファインケミカル技術セミナー有機金…
  5. アルコールをアルキル化剤に!ヘテロ芳香環のC-Hアルキル化
  6. 超塩基に匹敵する強塩基性をもつチタン酸バリウム酸窒化物の合成
  7. 電池で空を飛ぶ
  8. 化学系ラボでSlackを使ってみた

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機合成から無機固体材料設計・固体物理へ: 分子でないものの分子科学を求めて –ジャン ロッシェ材料研究所より
  2. アウグスト・ホルストマン  熱力学と化学熱力学の架け橋
  3. H-1B ビザの取得が難しくなる!?
  4. 生物に打ち勝つ人工合成?アルカロイド骨格多様化合成法の開発
  5. CASがSciFinder-nの画期的逆合成プランナーの発表で研究・開発の生産性向上を促進
  6. 嘘か真かヒトも重水素化合物をかぎわける
  7. 金子 弘昌 Hiromasa Kaneko
  8. タミフルの新規合成法
  9. 化学者の単語登録テクニック
  10. 第2回慶應有機合成化学若手シンポジウム

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年5月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

「MI×データ科学」コース 〜LLM・自動実験・計算・画像とベイズ最適化ハンズオン〜

1 開講期間2026年5月26日(火)、29日(金) 計2日間2 コースのねらい、特色近…

材料の数理モデリング – マルチスケール材料シミュレーション –

材料の数理モデリング概要材料科学分野におけるシミュレーションを「マルチスケール」で理解するた…

第59回天然物化学談話会@宮崎(7/8~10)

ごあいさつ天然物化学談話会は、全国の天然物化学および有機合成化学を研究する大学生…

トッド・ハイスター Todd K. Hyster

トッド・カート・ハイスター(Todd Kurt Hyster、1985年10月10日–)はアメリカ出…

“最難関アリル化”を劇的に加速する固定化触媒の開発

第 703回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院 理工学府 博士課程前期で…

「ニューモダリティと有機合成化学」 第5回公開講演会

従来の低分子、抗体だけでなく、核酸、ペプチド、あるいはその複合体(例えばADC(抗体薬物複合体))、…

溶融する半導体配位高分子の開発に成功!~MOFの成形加工性の向上に期待~

第702回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理学部(田中研究室)にて助教をされていた秋吉亮平 …

ミン・ユー・ガイ Ming-Yu Ngai

魏明宇(Ming-Yu Ngai、1981年X月XX日–)は米国の有機化学者である。米国パデュー大学…

第55回複素環化学討論会

複素環化学討論会は、「複素環の合成、反応、構造および物性」をテーマとして、化学・薬学・農芸化学など幅…

逐次的脱芳香族化と光環化付加で挑む!Annotinolide B初の全合成

Annotinolide Bの初の全合成が報告された。キノリンの逐次的な脱芳香族化と分子内光環化付加…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP