[スポンサーリンク]

ケムステニュース

モータースポーツで盛り上がるカーボンニュートラル

[スポンサーリンク]

11月13日、マツダは岡山県の岡山国際サーキットで開催されるスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook第6戦『スーパー耐久レースin岡山』の会場内で、今回からST-Qクラスに参戦する37号車マツダ・デミオ・ディーゼルが、ユーグレナ社の100%バイオディーゼル燃料『サステオ』で走行していることを明らかにした。 (引用:auto sport 11月13日)

11月13日、岡山県の岡山国際サーキットで開催されているスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook第6戦『スーパー耐久レースin岡山』の会場内でマツダ、トヨタ、スバル、ヤマハ、カワサキの5社の社長が出席しカーボンニュートラル実現へ内燃機関活用のさらなる広がりへ向けた取り組みを発表し、このなかで2022年のスーパー耐久シリーズに、スバルBRZ、トヨタGR 86がバイオマス由来の合成燃料を使用し参戦することが発表された。(引用:auto sport 11月13日)

一秒でも速く走るために、燃料をガンガン使って環境に悪い排ガスをたくさん排出しているイメージがモータースポーツにはあるかもしれませんが、そんなモータースポーツを舞台にカーボンニュートラルな燃料を使用してレースを行うことが発表されました。

一つ目のニュースでは、ユーグレナが製造するバイオディーゼル燃料を使用していることが発表されました。ユーグレナのバイオディーゼルについてはケムスケニュースでは何度か紹介しており、バス、消防車、船舶、航空機と様々なモビリティに対して使用済み食用油や微細藻類油脂というサステイナブルな原料から製造される100%代替可能な燃料を供給しています。今年の6月にはバイオ燃料のブランド名をサステオ(SUSTEO)とすることが発表され、一般消費者にも認知度を高め、バイオ燃料の普及を目指しているようです。自動車会社であるマツダではひろしま自動車産学官連携推進会議に参画しており、同会議とユーグレナが共同で進める「ひろしま “Your Green Fuel” プロジェクト」では、2020年8月にバイオ燃料が石油由来の軽油と同等性能になることを確認し、ディーゼルエンジンを搭載したマツダの社用車で利用を開始しました。

バイオ燃料使用によるカーボンニュートラルへの貢献(出典:ユーグレナプレスリリース

次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」のロゴ(出典:ユーグレナプレスリリース

レースでは市販車をベースにした車両MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIOが使用されました。次世代バイオディーゼル燃料を使ってもエンジン自体を変更することなく十分な性能を発揮できるそうです。この車両を使用したスーパー耐久レースは11月13日(土)と14日(日)に岡山国際サーキットで開催され、大きなトラブルなく最後まで走り切ることができました。今年はこれで終わりですが、マツダでは2022年のシーズンには最初から参戦することを目指しているそうです。

サステオを燃料に使用してレースに参加した車両、ヘッドライトの上にユーグレナのロゴが貼られている。(出典:マツダプレスリリース

二つの目のニュースに移りますが、上記で取り上げたレース会場にマツダ、トヨタ、スバル、ヤマハ、カワサキの5社の社長が集まりカーボンニュートラル実現に向け、燃料を「つくる」「はこぶ」「つかう」選択肢を広げる取り組みに挑戦することを発表しました。具体的には下のような各社の取り組みが示されました。

  1. カーボンニュートラル燃料を活用したレースへの参戦
    • 次世代バイオディーゼル燃料を使用する SKYACTIV-D1.5 でレースに挑戦(マツダ:上記内容)
    • バイオマス由来の合成燃料を使用し、来年のスーパー耐久シリーズに挑戦(SUBARU、トヨタ)
  2. 二輪車等での水素エンジン活用の検討
    • 水素エンジン開発の共同研究の可能性について検討を開始(川崎重工、ヤマハ発動機)
  3. 水素エンジンでのレース参戦継続
    • 水素エンジン車両の「スーパー耐久レース in 岡山」への参戦(トヨタ、ヤマハ発動機)

発表された各社の取り組み(出典:SUBARUプレスリリース

その中で自動車メーカーであるSUBARUとトヨタでは、バイオマス由来の合成燃料を使用して2022年シーズンのスーパー耐久シリーズに参戦することを表明しています。バイオ燃料の具体的な情報は公開されておらず、どのようなタイプの燃料が使われるかは不明ですが、使われる車両はガソリンエンジンを搭載するSUBARU BRZ、トヨタGR 86とのことで、マツダとは異なるバイオ燃料が使用されると予想されます。具体的には、ガソリン車向けのバイオ燃料として実用化されているバイオエタノールや藻類が生成する炭化水素などかもしれません。

実はトヨタでは、すでにカーボンニュートラルな燃料を使ってレースに参戦しており、それが水素エンジンを搭載したトヨタ カローラです。

トヨタはMIRAIという燃料電池車を発売していますが、このレース車両では水素をエンジンにて燃焼させて動力を発生させています。動力がエンジンである以上、既存の技術を活かすことができるため、電気自動車でも燃料電池でもないカーボンニュートラルの選択肢として、トヨタは水素エンジンでのレース車両の開発とレース参加を決断したようです。水素を燃焼させるときには水しか排出されませんが、電気同様作り出す過程での二酸化炭素排出が重要であり、本件ではできるだけカーボンニュートラルな方法で製造された水素を使用し、この岡山でのレースでは水素を運ぶトラックの燃料には、上記のユーグレナのバイオディーゼルを使うほどカーボンニュートラルを追求しました。

水素エンジン車の走行の様子(出典:SUBARUプレスリリース

上記の車両がレースに参加とはいっても、ガソリン車と競うわけではなく大会が参加を認めたメーカー開発車両、または各クラスに該当しない車両が参加するST-Qクラスで参戦しています。それでも速く走ることを追及しており、車両改造はもちろんのこと、水素の充填時間を短縮すべく技術開発を行い、この岡山のレースでは、初回参加から半分の時間で充填できるようになったようです。水素は極めて単純な構造の単体ですが、他のガスにはないユニークな性質を持っています。産業ガスを製造・販売している企業もこのプロジェクトには関わっているので、水素のハンドリングに関して技術的なサポートをしていると予想されます。

水素がレーシングカーに供給されるまでの流れ(出典:トヨタプレスリリース

モータースポーツは自動車の技術進化を支えてきており、この場合においてもレースという過酷な状況でカーボンニュートラルな燃料が問題なく使用できることをアピールする狙いもあると考えられます。ユーグレナのバイオ燃料に関しては、すでにバスなどに使用しているため、日常の使用で問題ないことは明らかですが、高負荷が続くレースでも使用できたということは、正常な燃焼が起き続けエンジンに悪い影響がほとんどないことの証明になったと考えられます。トヨタとSUBARUのバイオマス由来の合成燃料を使用した取り組みでも、同様の観点が技術的には着目できると思います。最後の水素エンジンに関しては、水素をレース用のエンジンに使用するという観点での試行であり、エンジンでの水素燃焼に問題が無いことの証明になったと考えられます。バイオ燃料は高価であり、水素エンジンも現在は商品化されていない技術であり、すぐに新たなカーボンニュートラルな方法として広まるわけではありませんが、電気自動車だけではない他の可能性を広げるためにこのような取り組みを続けてほしいと思います。

関連書籍

[amazonjs asin=”4759813756″ locale=”JP” title=”次世代のバイオ水素エネルギー (CSJカレントレビュー)”] [amazonjs asin=”4781312233″ locale=”JP” title=”海藻バイオ燃料 (バイオテクノロジーシリーズ)”]

バイオ燃料、水素に関するケムステ過去記事

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 米社が液晶パネルのバックライトにカーボン・ナノチューブを採用
  2. 四角い断面を持つナノチューブ合成に成功
  3. 静岡大准教授が麻薬所持容疑で逮捕
  4. つり革に つかまりアセる ワキ汗の夏
  5. タンニンでさび防ぐ効果 八王子の会社
  6. 相原静大教授に日本化学会賞 芳香族の安定性解明
  7. カラス不審死シアノホス検出:鳥インフルではなし
  8. 製薬会社5年後の行方

注目情報

ピックアップ記事

  1. メチレン架橋[6]シクロパラフェニレン
  2. 治療応用を目指した生体適合型金属触媒:① 細胞内基質を標的とする戦略
  3. Christoph A. Schalley
  4. 高分子を”見る” その1
  5. ジェイコブセン速度論的光学分割加水分解 Jacobsen Hydrolytic Kinetic Reasolution (Jacobsen HKR)
  6. 第七回 生命を化学する-非ワトソン・クリックの世界を覗く! ー杉本直己教授
  7. マーク・レビン Mark D. Levin
  8. ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)
  9. NICT、非揮発性分子を高真空中に分子ビームとして取り出す手法を開発
  10. スピノシン spinosyn

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年11月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

CIPイノベーション共創プログラム「有機電解合成の今:最新技術動向と化学品製造への応用の可能性」

日本化学会第106春季年会(2026)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「有機電解合…

CIPイノベーション共創プログラム「世界を変えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第106春季年会(2026)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「世界を変え…

年会特別企画「XAFSと化学:錯体, 触媒からリュウグウまで –放射光ことはじめ」

放射光施設を利用したX線吸収分光法(XAFS)は、物質の電子状態や局所構造を元素選択的に明らかにでき…

超公聴会 2026 で発表します!!【YouTube 配信】

超公聴会は、今年度博士号を取得する大学院生が公聴会の内容を持ち寄ってオンライン上で発表する会です。主…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part II

さて、Part Iに引き続きPart II!年会をさらに盛り上げる企画として、2011年より…

凍結乾燥の常識を覆す!マイクロ波導入による乾燥時間短縮と効率化

「凍結乾燥は時間がかかるもの」と諦めていませんか?医薬品や食品、新素材開発において、品質を維…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part I

まだ寒い日が続いておりますが、あっという間に3月になりました。今年も日本化学会春季年会の季節です。…

アムホテリシンBのはなし 70年前に開発された奇跡の抗真菌薬

Tshozoです。以前から自身の体調不良を記事にしているのですが、昨今流行りのAIには産み出せな…

反応操作をしなくても、化合物は変化する【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか温度を測ること…

ジチオカーバメートラジカル触媒のデザイン〜三重項ビラジカルの新たな触媒機能を発見〜

第698回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(大井研究室)博士後期課程1年の川口…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP