[スポンサーリンク]

ケムステニュース

「サンゴ礁に有害」な日焼け止め禁止法を施行、パラオ

[スポンサーリンク]

太平洋の島国パラオは1日、「サンゴ礁に有害」な日焼け止めを禁止する先駆的な法律を施行した。同国は、他にも世界最大級の海洋保護区の設置など厳しい環境対策を導入している。  (引用:AFP通信1月2日)

2018年に、ハワイでサンゴ礁への有害性が指摘される成分を含んだ日焼け止めを禁止する法案が可決されたことが大きなニュースになりました。ハワイにおける法案の施行は2021年からですが、パラオでは、すでに今月から規制が始まっています。ルールもハワイよりも厳しく、サンゴに悪影響を及ぼす下記の成分を含む製品の販売だけでなく使用することも禁じていて、禁止された日焼け止めの輸入・販売に関与した者には1000ドル(約11万円)の罰金が科され、観光客が持ち込んだ日焼け止めは没収されるそうです。

  • Oxybenzone (benzophenone-3)
  • Ethyl paraben
  • Octinoxate (octyl methoxycinnamate)
  • Butyl paraben
  • Octocrylene
  • 4-methyl-benzylidene camphor
  • Benzyl paraben
  • Triclosan
  • Methyl paraben
  • Phenoxyethanol

ハワイと共通で規制された成分の構造

パラオでのみ規制された成分の構造

いくつかの紫外線吸収剤不使用の日焼け止めを見てみましたが、どの商品にも防腐剤であるPhenoxyethanolやフェロモンであるMethyl parabenが含まれていて、パラオの規制成分を全く含まない日焼け止めはとても少ないようです。

パラオで規制された成分含まれていない日焼け止め(引用:資生堂

話は少し変わりますが、日焼け止めには性能を示すSPFPAのスペックが商品に書かれています。SPFはUV-B(315~280nm)から、PAはUV-A(400–315 nm)から肌を守る性能を示す値で、それぞれ ISO 24444ISO 24442で測定方法が規定されています。具体的には、皮膚の病気等がない18歳から60歳までの男女の皮膚で実験を行って算出されます。日焼けのタイプは、すぐ赤くなる、黒くなるなど、なかなか色が変化しないなど人によって異なるため、複数のタイプの日が被験者になってもらうようです。実際に疑似太陽光源を使い、照射時間を変えて日焼け止めを塗ったところと塗っていないところの違いを観察し、肌の色の変化がみられた最小の線量を日焼け止めありなしで比較し値を算出します。SPFは、得られた値そのものとなりますが、50が最高でそれ以上の性能を持つ場合には50+と表記します。PAは性能に応じてPA+からPA++++にランク付けされます。

実験に使われる疑似太陽光源(引用:ウシオ電機

自分は室内にこもっているので日焼け止めの違いはわかりませんが、性能が高いものほど、高い濃度の紫外線吸収剤や紫外線を散乱させる酸化チタン酸化亜鉛が含まれていて、粘度が高かったり独特の白さが目立ちつけ心地が悪いそうです。そのため場面に応じて適切な性能の日焼け止めを使ったほうが良いそうです。

短期滞在の人が使って海に流れ出る日焼け止めの量はごく微量だと感じるかもしれませんが、「パラオの有名なダイビングやシュノーケリングのスポットでは来る日も来る日も、何リットルもの日焼け止めが海に放出されている計算になる。」とパラオの報道官は主張して規制の重要性を訴えています。日焼け止めに限らずビーチの環境汚染は世界中で問題になっていて、ビーチを閉鎖する場所も出始めています。貴重な自然を保護し、将来にわたって人々が楽しめるように、個人の意識と政府の対策が重要であること感じさせるニュースでした。

関連書籍

関連リンク

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 大村氏にウメザワ記念賞‐国際化学療法学会が授与
  2. 第二回触媒科学国際シンポジウム
  3. 周期表を超えて~超原子の合成~
  4. ヘリウム不足再び?
  5. 化学物質研究機構、プロテオーム解析用超高感度カラム開発
  6. がん細胞を狙い撃ち 田澤富山医薬大教授ら温熱治療新装置 体内に「…
  7. 超薄型、曲げられるMPU開発 セイコーエプソン
  8. プラスチックを簡単に分解する方法の開発

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 未来の車は燃料電池車でも電気自動車でもなくアンモニア車に?
  2. 分子間および分子内ラジカル反応を活用したタキソールの全合成
  3. 化学企業のグローバル・トップ50が発表【2021年版】
  4. 今さら聞けないカラムクロマト
  5. トルキセン : Truxene
  6. 橘 熊野 Yuya Tachibana
  7. 徒然なるままにセンター試験を解いてみた(2018年版)
  8. 【PR】 Chem-Stationで記事を書いてみませんか?【スタッフ募集】
  9. 株式会社ユーグレナ マザーズに上場
  10. バーゼル Basel:製薬・農薬・化学が集まる街

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年1月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

キシリトールのはなし

Tshozoです。 35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP