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石油・化学プラントのスマート保安推進に向けて官民アクションプランを策定

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経済産業省は、7月10日(金曜日)に「スマート保安官民協議会 高圧ガス保安部会」を開催し、スマート保安推進に向けて、先進的な取組を行う事業者と共に官民アクションプランを策定しました。 (引用:7月10日経済産業省プレスリリース)

今年の2月に、ドローンを使って石油化学プラントの設備内部を調べる実証事業を紹介しましたが、ドローンだけでなくいろいろな先進的なツールを使ってプラントのメンテンナンスを効率的に行うための官民のアクションプランが発表されました。

そもそもの目的ですが、日本の石油化学プラントは高度経済成長期に造設された設備を現在まで維持しているものがほとんどであり老朽化しています。

国内エチレン生産設備の軽年数(出典:日本の石油化学工業 50 年データ集(重化学工業通信社))

一般的に老朽化すればするほど、事故や不具合といったトラブルの頻度は多くなり、メンテナンスの手間と費用が増大します。また、環境規制への対応、省エネの推進、国際競争力強化のための効率性向上を求められていて保安管理の仕事は増えている一方、ベテラン人材の引退、採用難、働き方改革の影響などがありマンパワー不足も顕著であるようです。このような現状を解決するために、限られた人員でより効率の良い保安業務を行う新しい技術を開拓することを目的としてこのスマート保安官民協議会が官民で活動を始めました。検査には、法令で定められている保安検査と自主的に行う自主検査がありますが、このスマート保安によってこれまでの保安検査と自主検査をより効率化すると同時に、新たな観点の自主検査で新たな要求満たすことを目指しています。巨大なタンクや長いパイプといった設備を有しているのは石油化学だけでなく、電力・ガス・鉄鋼関連の会社にも当然あるため、このスマート保安を他の業界にも広げていくことを構想としているようです。

保安の種類とこれから求められる保安のコンセプト

では実際に企業側はどのようなアクションを計画しているかですが、大きく分けて1. 情報の電子化 2.  現場作業効率化 3. 意思決定の高度化の項目があり、具体的にそれぞれ下記のようなアクションを検討しています。

1、情報の電子化

  • データの取得:検査・点検の際に人が読み取っているデータの取得(計器の値や設備の様子)を遠隔化・自動化・電子化していつでも常に情報が自動的に取得できるようにする。
  • データベースの構築・共有:作業記録なども含めてすべてのデータが統合されたデータベースの構築し、社内外におけるデータの共有を促進する。
  • 情報の可視化と閲覧:タブレット端末を使った作業の効率化を行ったり、ARを活用したシミュレーターを構築して保安作業の教育に役立てる。

2、現場作業効率化

  • 知識データベースの活用:過去の事故事例の原因や対策を学習させたAIを使って、課題が発生した時に原因と解決策を引き出せるようにする。
  • 運転・点検の遠隔操作:ドローンやロボットを使って点検や作業の自動化、遠隔操作化を推進する。

3、意思決定の高度化

  • 異常検知による事故・故障等の未然防止、予兆検知による O&M 改善:過去の結果や新しい検出技術によって得られたデータをもとにAIが、異常や予兆を検知し未然に運転トラブルや作業員の事故を未然に防ぐ

これらのアクションに対して部会の構成員の各社は、すでにトライアルを行っています。

ENEOSでは、AI技術を活用したプラント自動運転を検討していて、ベテラン運転よりも優れたオペレーションを行うAIを開発しているようです。また、三菱重工と共同で防爆型巡回点検用ロボットを開発しています。

防爆型巡回点検用ロボット:EX ROVR(出典:三菱重工

JSRでは、釜の中のポリマー液レベルの管理を人の手からカメラ画像の解析で定量化、音声認識による点検記録の作成、ドローンによる点検を試行しているようです。旭化成では、腐食や機械の異常を事前に予測するためのモデル開発やスマートグラスによる作業・教育の効率化を行っています。またデータ分析人材育成プログラムを行い、積極的なデータエンジニアの育成を行っているようです。

現場での活用が期待されるスマートグラス(エプソン EPSON BT-300

出光興産では、統合データベースの作成や多変数プロセスデータ解析によるプラントの異常予測、画像解析による腐食予想を行っているようです。

複数社の予兆診断システムの導入を検討し、最も異常予兆を検知できた日立製の解析ソフト

三菱ケミカルでは、プロセス/テキストデータを活用してプラントの可視化・異常検知技術を開発する予定で、技術スタッフ全員対象とした育成プログラムを行う予定だそうです。

このような民間の活動に対して経済産業省としては、点検・保安検査等の規制を先進技術でカバーできるように見直すことを行っています。また、AI活用を推進すべくAI活用の実証事業の支援を行う一方でAIの信頼性評価のガイドラインを整備して信頼性を確保することも行うそうです。

法令の再検討によってドローンの飛行空域が広くなりより接近して撮影できる例

スマート保安についていろいろなアクションが提案されていますが、各社の活動を見る限りやはり、要はドローンとAIのように感じられます。ドローンによる高所や隠れた場所へのアクセスは、人が立ち入るための準備が必要なくなるためコスト・期間・安全性において大きなメリットがあります。保安検査には「目視」で異常がないことを確認する項目が多数あります。目視の代替は、例えばドローンに搭載されているカメラ映像ですが、十分な解像度が得られているかや多方面から撮影されているかなどが代替とする際の定義に入ってくるのでは予想されます。しかしながら、目視という検査方法も人が判断する限り曖昧であり、人によって、あるいは同じ人でも体調などによっても正常か異常かの判断は変わるわけであり、映像の品質を議論するよりも異常/正常の定義を明確にしてそれをドローンのカメラで判定できるかの議論することが重要であると思います。AIについては、応用例が日進月歩で報告されていて、様々な場面でプラントオペレーションの最適化や危険予知に役立つと考えられます。一方、安全に関わる判断をAIに任せることについては慎重になる必要があり、あるAIが信頼できるかできないかを認証する仕組みは必要だと思います。例えば画像解析による配管の腐食の危険性判断などについて、いくつかの試験画像をAIに答えさせてそのの正答率が一定以上でないと使うことはできないなどのことが予想されます。いくつかの会社では、全社的にデータ分析の基礎知識を教えることを行っていますが、AIが吐き出す結果の理由を理解するにはデータ分析の知識が必要であり、AI全部を理解することはできなくても基礎をユーザーが理解できるようにする方針は大きな意味があると思います。実用化を急げば、検討不足による問題が起きる一方、慎重になりすぎると実用化が遅くなってしまいます。今、ホットな技術を採用するからこそ安全性を確保しながら技術開発を官民で協力して進めてほしいと思います。

関連書籍

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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