[スポンサーリンク]

ケムステニュース

112番元素が正式に周期表の仲間入り

[スポンサーリンク]

element112_1.gif

 

ドイツ西部ダルムシュタットの重イオン研究所(GSI)が10年以上前に発見した極めて重たい化学元素がこのほど正式に認められ、あとは名前を付けるだけとなった。
GSIのジクルト・ホフマン教授のチームは、1996年、荷電した亜鉛イオンビームを鉛原子に衝突させることで、新しい元素を生成した。それから13年。国際純正応用化学連合(IUPAC)はこのほど、この元素を正式に認め、暫定名は「112」とされた。
IUPACは教授のチームに対し、6か月以内に正式名称をつけるよう要請。教授は数週間以内に名称を提出するとしている。なお、英BBC放送もネットユーザーから名前の候補を募っている。(引用:AFP BB News)

1996年にドイツの重イオン研究所にて生成された112番元素が、このほど正式にIUPACから承認されました。元素周期表に新たな項目が確定的に付け加えられるという、科学界においてのマイルストーン的な出来事と言えます。

 

112番元素は現在、仮称であるウンウンビウム(ununbium)
いう名前で呼ばれています。何だか良く分からないごにょごにょした名前に聞こえますが、実のところ由来は超適当。un=1、bi=2という意味なので、112(un-un-bi)を字面通り読んで、元素名を表す接尾語「ium」を付けただけ、というわけです 。

 

今回の承認を経てようやく、今後世界中で恒久的に使われ続ける命名がなされることになります。どんな名前が付けられるのでしょうかね?楽しみに待ちたいと思います。

ちなみに、113番元素以降は、すべてが未承認で仮称で呼ばれています。

お隣の113番元素ウンウントリウム(ununtrium)は、日本の理化学研究所で発見された元素です。こちらもどういう名前が付くのか、日本発なだけに楽しみなことといえるでしょう。日本産なのでジャポニウム(Jp)、はたまたニッポニウム(Np)、理研で作られたためにリケニウム(Rk)・・・いろいろ案があるようですが、この中ならばジャポニウムで無難に決まりに思えますが・・・どうでしょうね。

 

命名権を得るためには、何度か再現性を確保する必要があるようです。112番元素は、理研チームの追試によりほぼ確定したため今回の承認につながったようです。113番元素については、現在のところ1回の再現に成功してるとのこと。いずれにせよ、加速器を動かすためには億単位のお金がかかるので、そんなに簡単には行かないようです。気長に待ちたいとこですね。

 

ところでこのニュース、BBCなどの英語圏メディアではプレスリリース(6/10)後、即座に報道されていますが、日本語メディアでは、6/14現在ほとんど報道されていない現実のようです。翻訳の問題だとか、週末を挟むなどの都合もあるのでしょうが、国外でかつ即物的でない類のサイエンスは、やはり後回しにされがちなのかな・・・とか思えてしまったり。

 

  • 関連書籍
完全図解周期表―自然界のしくみを理解する第1歩 (ニュートンムック―サイエンステキストシリーズ)
ニュートンプレス
発売日:2006-12
おすすめ度:4.5
おすすめ度5 素晴らし過ぎる
おすすめ度2 さらなる改善を願う
おすすめ度5 現代社会において元素を理解する重要性はますます高くなっている
おすすめ度4 すごく分かりやすい
おすすめ度5 とにかくわかり易い
図解入門 よくわかる最新元素の基本と仕組み―全113元素を完全網羅、徹底解説 (How‐nual Visual Guide Book)
秀和システム
発売日:2007-02
おすすめ度:4.5
おすすめ度4 非常に良い内容だと思いますただし……
おすすめ度5 最近 手に入れました
元素周期 萌えて覚える化学の基本
PHP研究所
スタジオハードデラックス(編集)満田 深雪(監修)
発売日:2008-11-01
おすすめ度:4.0
おすすめ度3 大人には用がない本?中高生にはいいかも。
おすすめ度4 意外と参考になります
おすすめ度5 元素周期 萌えて覚える科学の基本はいいね!!
おすすめ度4 面白い仕立て
おすすめ度4 いろいろ載ってます
元素111の新知識 第2版 (ブルーバックス)
講談社
桜井 弘(編集)
発売日:2009-01-21
おすすめ度:4.5
おすすめ度5 ボ?・・と眺め、ホ?!!と驚く☆☆
おすすめ度4 生物・化学寄りの解説。他書と併せて読みましょう。
  • 関連リンク

112番元素が正式に認められ、周期表の仲間に (slashdot.jp)

Visual Element Periodic Table

一家に一枚周期表 (文部科学省)

超重元素研究室112番元素の同位体2原子を合成──GSI(ドイツ)の初合成の追試に成功 (理研ニュース)

A New Chemical Element in the Periodic Table (GSIプレスリリース)?

New Chemical Element In The Periodic Table (ScienceDayly.com)

日本発・113番元素登場 (1) (2) (有機化学美術館)

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. エーザイ、医療用の処方を基にした去たん剤
  2. 酢酸エチルの高騰が止まらず。供給逼迫により購入制限も?
  3. 甘草は虫歯を予防する?!
  4. 科学論文を出版するエルゼビアとの購読契約を完全に打ち切ったとカリ…
  5. 森林総合研究所、広葉樹害虫ヒメボクトウの性フェロモン化学構造を解…
  6. 走り出すグリーンイノベーション基金事業~採択テーマと実施企業が次…
  7. 緑茶成分テアニンに抗ストレス作用、太陽化学、名大が確認
  8. 三井物と保土谷 多層カーボンナノチューブを量産

注目情報

ピックアップ記事

  1. モリブドプテリン (molybdopterin)
  2. 求電子的トリフルオロメチル化 Electrophilic Trifluoromethylation
  3. 学術オンラインコンテンツ紹介(Sigma-Aldrichバージョン)
  4. 第153回―「ネットワーク無機材料の結晶学」Micheal O’Keeffe教授
  5. 【書評】奇跡の薬 16 の物語 ペニシリンからリアップ、バイアグラ、新型コロナワクチンまで
  6. オーストラリア国境警備で大活躍の”あの”機器
  7. 手術中にガン組織を見分ける標識試薬
  8. Carl Boschの人生 その9
  9. 吉岡里帆さんが出演する企業ブランド広告の特設サイト「DIC岡里帆の研究室」をリニューアル
  10. 砂糖水からモルヒネ?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP