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日本人化学者インタビュー

第三回 北原武教授ー化学と生物の融合、ものつくり

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第3回目は第一回目の福山透先生からのご紹介で、帝京平成大学薬学部(東京大学名誉教授)の北原武先生にインタビューを行ないました。北原先生は博士研究員時代のダニシェフスキージエンの開発で有名ですが、東大時代に行われていた植物生理・ホルモン関連物質、植物保護物質を中心とした全合成研究を行って来ました。数々のすばらしい業績で今年度の日本学士院賞も受賞しております。それではご覧ください!

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

Q1とQ2は関連していますので、併せて答だと思って下さい。なお、東大教養学部進学情報センター2002年度シンポジウム“わたしが学問に目覚めた時”で話した骨子をまとめた小文“人生は偶然と出会い:私の選んだ道”がセンターニュースに載っており、ネット上(http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/agc/news/32/kitahara.html)で公開されておりますので,参照ください。田舎の山奥で育った貧しい時代に,偶然に大学まで進学させてもらえる幸運に恵まれた時、Q2 の答にあるような好きだった国語や歴史では飯が食えない、次ぎに面白いと思った理系の化学をやれば高度成長の波に乗って技術屋として豊かになれるのではという,不純な動機です。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

子供の頃から本を読むことにかけては、人後に落ちない自信があります。ひ弱だった中学2年の時に風邪を引いて2週間くらい学校を休んだ際、姉が買ってくれた司馬遷の“史記”物語を面白くて繰り返し読み、内容をほぼ完璧に暗記しました。その後、十八史略等を読んで中国史に興味を持った歴史大好き人間です。今なら歴史を選ぶかも知れませんが、中国史に限らず、シルクロードとか、トルコ周辺とか東西交流の要所で興亡の激しい地域も面白そうですね。

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Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

現在は,定年退官後いくつかの大学で、有機化学や基礎化学の講義をすることが主ですので、第一線からは離れているというのが正直なところです。 唯、どうしても続けていたい研究が二つあり、研究顧問をさせて戴いている企業の研究所で協力してもらっています。 1)不毛なアルカリ土壌での植物育成を目指すムギネ酸関連物質の合成と機能の開発。(植物生理学者との共同研究) 2)山羊の行動(性的も含めた)を支配するフェロモンの同定と機能の探求。(獣医生理学者との共同研究)

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

日本人では江戸時代の“名君、上杉鷹山”外国人ではルネッサンス期の“万能の天才、レオナルド・ダ・ウィンチ”です。 小学生の頃、非常に多くの偉人伝を読み,いずれも感動しました。(当時の本ですから脚色,誇張もあったかも知れない) 中でも,このお二人の伝記には非常に感銘を受けました。私は貧乏農家の子供でしたから,とくに養子であった鷹山(といっても藩の君主ですが)がほとんど破綻した藩財政を立て直していく強烈な苦闘の過程(弱者を犠牲にする現代のリストラとは志が違う)に感動したのです。大人になって、鷹山の伝記小説を色々読み直しましたが(特に藤沢周平著「漆の実のみのる国」が良い)やはり間違いありません。ダヴィンチの絵は本物はモナリザとその他の小品をルーブルで見ただけですが、最後の晩餐(徳島の大塚陶板美術館にある絵はすてきでした)を描く過程での苦悩などを伝記で読んで,会ってみたいと思った次第です。

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Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

私は50才くらいまで実験をしていました。最後は,キチナーゼ阻害剤である“アロサミジン”の疑似糖部分アロサミゾリンを合成する為に必要な置換ビニルシクロペンタンアルデヒドを、グルコサミン誘導体である6-ヨードメチルアセタールから亜鉛末還元により開裂して合成する反応です。

目的物の大量合成を目指し、先端を共同研究者である大学院生にしてもらい,私が得意とする中間体の大量供給をやりました。ところが、精製した亜鉛とエタノールでは,小スケールでは上手くいきますが、大量化すると極端に収率が低下すると報告を受けました。攪拌とか亜鉛の精製とか溶媒選択とか色々やりましたが、上手くいきません。ついに、業を煮やして、私自身で溶媒を思い切ってTHFにしてプロトン源に水を少し(1.5%;これを見つけ出した経緯が面白いが、ここでは述べません)入れてやったところ少量では80%、2-30グラムでも70%弱で進行することを見つけ、大量供給が可能となりました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本は一つは困りますが、藤沢周平の時代小説が大好きです。彼の死後これに代わる作家がいないのは残念。仕方がないので彼のは全部持って行って読み直します。 他には、史記、論語、十八史略、サマセットモームの全作品、夏目漱石全集を読み直します。一つでなくてまずいですか。 音楽は,昭和二十年代以降のヒット演歌懐メロ全集CDセットおよび永遠のバロック音楽全集CDセットがあれば結構です。両方必要です。

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Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

ピッツバーグ時代からの畏友、生涯のライバル西沢麦夫さんと言いたいけれど,Chem-Stationでもすでに取り上げておられるように逝去されてしまいました。
他にもいっぱい居ますが、私が敬愛する友人、知り合いのお三方を挙げておきます。
奈良坂紘一、香月勗、林民夫の三先生です。

関連リンク

東京大学大学院農学生命科学研究科有機化学研究室:現在渡邊秀典教授。Member内に北原教授の略歴有り。
日本学士院賞の決定について:日本学士院。
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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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