[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第86回―「化学実験データのオープン化を目指す」Jean-Claude Bradley教授

[スポンサーリンク]

第86回の海外化学者インタビューは、ジャン=クロード・ブラッドリー教授です。ドレクセル大学化学科に在籍し、Open Notebook Scienceを用いて新たな抗マラリア化合物の合成に取り組んでいます(訳注:2014年に逝去されています)。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

カナダのオンタリオ州にあるローレンシアン大学で神経科学を専攻していました。2年目の夏から、化学実験室で面白い反応実験を始めました。化学の最もやりがいのある面は、朝に新しいアイデアを思いつくと、一日の終わりまでにうまくいくかどうかがわかることです。神経科学では、結果を知るまでに通常数週間から数カ月の実験が必要でした。ネズミを殺すのも好きではありませんでした。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

化学に移る前は、神経外科医になる途中でした。神経科学は意識の現象に直接関係しているので、今でも興味深いと思います。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

端的な答えは、より多くのデータをより迅速に共有することによってです。多くの場合、これはIPやコラボレーションの問題のため不可能だと理解しています。とはいえ惰性によらず、データが共有できる場合もあります。私のアプローチは、グループの実験ノートを常に公開することです。データの共有について話すときには、実験がどのように行われ、どのように観察されたかの詳細も含めます。人々が成功し、また失敗する様子を観察することで、多くのことを学ぶことがでます。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

Wilder Penfield氏が、神経刺激とマッピングに関する先駆的研究について語るのを聴くのは魅力的だと思います。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

2008年9月3日、サザンプトンにいるときにキャメロン・ネイロンと過ごし、いくつかの化合物で有機溶媒中の溶解度を測定しました。ここでは簡単な実験を行い、高価なデータベースでも見つけるのが困難な測定結果を、公に報告するやり方の一例として使用しました。有機溶媒中の一般的な化合物の溶解度について、完全にオープンなデータセットを収集し、インディアナ大学のRajarshi Guhaとの共同研究によって予測モデルを作成することが目的でした。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

興味を惹かれる人の自伝を持っていこうと思います―もし特定の本を選ぶとしたら、William Shatnerの『Up Till Now』です。読むのは2回目ですが、おそらく何回かはクスクスと笑えるところがあるでしょう。

Pink Floydのアルバム『The Final Cut』は決して古びることがありません。

原文:Reactions – Jean-Claude Bradley

※このインタビューは2008年10月17日に公開されました。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第42回「激動の時代を研究者として生きる」荘司長三教授
  2. 第162回―「天然物の合成から作用機序の解明まで」Karl Ga…
  3. 第33回 新たな手法をもとに複雑化合物の合成に切り込む―Stev…
  4. 第131回―「Nature出版社のテクニカルエディターとして」L…
  5. 第105回―「低配位有機金属錯体を用いる触媒化学」Andrew …
  6. 第171回―「超分子・機能性ナノ粒子で実現するセラノスティクス」…
  7. 第22回「ベンゼン環の表と裏を利用した有機合成」植村元一教授
  8. 第115回―「分子機械と天然物の化学合成」Ross Kelly教…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 医薬品への新しい合成ルートの開拓 〜協働的な触媒作用を活用〜
  2. ウレエートを強塩基性官能基として利用したキラルブレンステッド塩基触媒の創製
  3. 三核ホウ素触媒の創製からクリーンなアミド合成を実現
  4. 硫黄化合物で新めっき 岩手大工学部
  5. MNBA脱水縮合剤
  6. アルケンのエナンチオ選択的ヒドロアリール化反応
  7. 一人二役のフタルイミドが位置までも制御する
  8. 自律的に化学実験するロボット科学者、研究の自動化に成功 8日間で約700回の実験、人間なら数カ月
  9. ビタミンB12を触媒に用いた脱ハロゲン化反応
  10. トシルヒドラゾンを経由するカルボニル化合物の脱酸素ヒドロフッ素化反応によるフルオロアルカンの合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年4月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP