[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

ポーソン・カーン反応 Pauson-Khand Reaction

[スポンサーリンク]

 

概要

化学量論量のコバルトオクタカルボニルおよびアルキン、アルケン存在下、シクロペンテノン誘導体を合成する反応。 形式的にはアルケン+アルキン+COの[2+2+1]三成分カップリングといえる。

分子間反応ではアルケン・アルキンの位置制御の問題が常に付随するため、分子内反応のほうが扱いやすく利点は大きい。

触媒量の金属で進行する系も多数見出されている。

ごく最近では、一酸化炭素を用いずにアルデヒドをCO源として用いるPauson-Khand反応も見いだされている。この場合にはオートクレーブなどの加圧反応装置を必要としないため、より利便性が高い。

 

基本文献

  • Khand, I. U.; Knox, G. R.; Pauson, P. L.; Watts, W. E. Chem. Commun. 1971, 36. DOI: 10.1039/C2971000036a
  • Khand, I .U.; Knox, G. R.; Pauson, P. L.; Watts, W. E.; Foreman, M. I.. J. Chem. Soc. Perkin Trans. I 1973,
    977.
  • Belanger, D. B.; O’Mahony, D. J. R.; Livinghouse, T. Tetrahedron Lett. 1988, 39, 7637. doi:10.1016/S0040-4039(98)01693-1
  • Hoye, T. R.; Suriano, J. A. J. Am. Chem. Soc. 1993115, 1154. DOI: 10.1021/ja00056a053
  • Krafft, M. E.; Hirosawa, C.; Bonaga, L. V. R. Tetrahedron Lett. 1999, 40, 9177. doi:10.1016/S0040-4039(99)01959-0

<review>

  • Schore, N. E. Comp. Org. Syn. 1991, 5, 1037.
  • Shore, N. E. Org. React. 1991, 40, 1. doi:10.1002/0471264180.or040.01
  • Geis, O.; Schmalz, H.-G. Angew. Chem. Int. Ed. 199837, 911. [abstract]
  • 杉原多公道, 山口雅彦, 西沢麦夫 有機合成化学協会誌 1999, 57, 158. doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.57.158
  • Jeong, N.; Sung, B. K.; Kim, J. S.; Park, S. B.; Seo, S. D.; Shin, J. Y.; In, K. Y.; Choi, Y. K. Pure Appl. Chem. 200274, 85. [PDF]
  • Gibson S.E.; Stevenazzi, A. Angew. Chem. Int. Ed. 200342, 1800. DOI: 10.1002/anie.200200547
  • Blanco-Urgoiti, J.; Anorbe, L.; Perez-Serrano, L.; Dominguez, G.; Perez-Castells, J. Chem. Soc. Rev. 200433, 32. DOI: 10.1039/b300976a
  • Bonaga, L. V. R.; Krafft, M. E. Tetrahedron 200460, 9795. doi:10.1016/j.tet.2004.06.072
  • Alcaide, B.; Almendros, P. Eur. J. Org. Chem. 2004, 3377. DOI: 10.1002/ejoc.200400023
  • Shibata, T. Adv. Synth. Catal. 2006, 348, 2328. DOI: 10.1002/adsc.200600328
  • Kitagaki, S.; Inagaki, F.; Mukai, C. Chem. Soc. Rev. 201443, 2956. DOI: 10.1039/C3CS60382B

<others>

反応機構

コバルト-アルキン錯体を用いる当量反応では、一酸化炭素の解離(配位座を開ける)を促すために加熱が必要となる。開いた配位座にアルケンが配位し、次いでアルキンーコバルト結合への挿入→COの挿入→還元的脱離のプロセスを経てシクロペンテノンができる。(参考:J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 1703.)pauson_khand_2

反応例

(+)-Epoxydictymeneの合成[1]: Schreiberらは、アルキン-コバルト錯体をNicholas反応→Pauson-Khand反応と続けて用いることで複雑な縮環骨格を高効率的に合成している。NMOを加えることで反応が加速されるが、これは配位子のCOをCO2に酸化し、解離を促すためと言われている。[2]

pauson_khand_3

 

キラルチタノセン触媒を用いる不斉Pauson-Khand反応[3]

pauson_khand_4

コバルトメチリジンクラスターを用いると触媒的Pauson-Khand反応が効率よく進行する。錯体はジコバルトオクタカルボニルから容易に調製可能であり、酸化に比較的安定。[4]

pauson_khand_6

カルボジイミドを相方とするPauson-Khand反応とアルカロイド合成への応用[5]

pauson_khand_7

(+)-Ingenolの炭素骨格構築[6]

pauson_khand_8

実験手順

アルデヒドをCO源とするPauson-Khand反応[7]

pauson_khand_5

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] Jamison, T. F.; Shambayati, S.; Crawe, W. E.; Schreiber, S. L. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 4353. DOI: 10.1021/ja970022u
[2] Shambayati, S.; Crowe, W. E.; Schreiber, S. L. Tetrahedron Lett. 1990, 31, 5289. doi:10.1016/S0040-4039(00)98052-3
[3] Hicks, F. A.; Buchwald, S. L. J. Am. Chem. Soc. 1996118, 11688. DOI: 10.1021/ja9630452
[4] Sugihara, T.; Yamaguchi, M. J. Am. Chem. Soc. 1998120, 10782. DOI: 10.1021/ja982635s
[5] (a) Mukai, C.; Yoshida, T.; Sorimachi, M.; Odani, A. Org. Lett. 2006, 8, 83. DOI: 10.1021/ol052562z (b) Aburano, D.; Yoshida, T.; Miyakoshi, N.; Mukai, C. J. Org. Chem. 2007, 72, 6878. DOI: 10.1021/jo071137b
[6] (a) Jorgensen, L.; McKerrall, S. J.; Kuttruff, C. A.; Ungeheuer, F.; Felding, J.; Baran, P. S. Science 2013341, 878. doi:10.1126/science.1241606 (b) McKerrall, S. J.; Jorgensen, L.; Kuttruff, C. A.; Ungeheuer, F.; Baran, P. S. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 5799. DOI: 10.1021/ja501881p
[7] Morimoto, T.; Fuji, K.; Tsutsumi, K.; Kakiuchi, K. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 3806. DOI: 10.1021/ja0126881

関連反応

 

関連書籍

 

外部リンク

関連記事

  1. 1,2-/1,3-ジオールの保護 Protection of 1…
  2. ストーク エナミン Stork Enamine
  3. アッペル反応 Appel Reaction
  4. スナップ試薬 SnAP Reagent
  5. 芳香族メチルの酸化 Oxidation of Methyl Gr…
  6. ヒドロシリル化反応 Hydrosilylation
  7. ランバーグ・バックランド転位 Ramberg-Backlund …
  8. ニーメントウスキー キノリン/キナゾリン合成 Niementow…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 創薬化学―有機合成からのアプローチ
  2. Reaxys Ph.D Prize2014ファイナリスト45名発表!
  3. 多置換ケトンエノラートを立体選択的につくる
  4. 光分解性シアニン色素をADCのリンカーに組み込む
  5. 第八回 ユニークな触媒で鏡像体をつくり分けるー林民生教授
  6. 有機金属反応剤ハンドブック―3Liから83Biまで
  7. 鉄触媒反応へのお誘い ~クロスカップリング反応を中心に~
  8. 海外で働いている僕の体験談
  9. マテリアルズ・インフォマティクスにおけるデータの前処理-データ整理・把握や化学構造のSMILES変換のやり方を解説-
  10. 【速報】2013年イグノーベル化学賞!「涙のでないタマネギ開発」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP