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一般的な話題

Reaxys PhD Prize 2016ファイナリスト発表!

今年もこの時期がやってきました、Reaxys PhD Prizeの発表です。有機化学・無機錯体分野の博士課程の学生もしくは博士取得後の1年以内の方が対象の国際賞です。

今年は世界中450件以上の強者の応募があったようですが、先日その中から最終候補者(フィナリスト)45名が決まりました。

ここからイギリス・ロンドンで行われるシンポジウムでの発表を経て、最終的に3人の受賞者が選ばれることとなります。なおファイナリストに選出された方は、このシンポジウムに無料で招待されます。

ケムステではここ数年ファイナリストおよび受賞者の研究を写真付きで紹介しています。過去のファイナリストは以下のリンクから。

過去のReaxys Ph.D Prizeファイナリスト(日本人中心)2015年|2014年|2013年2012年

過去のReaxys Ph.D Prize受賞者 2015年| 2014年 | 2013年 |2012年 | 2011年 | 2010年

では、今年もファイナリストに選ばれた日本人を中心に紹介しましょう!

 

日本からのREAXYS PH.D PRIZE 2016ファイナリスト

2016-05-31_21-52-05

(写真は勝手に掲載させていただいています。問題のある方はご連絡いただければ幸いです。)

 

日本の大学で博士を取得もしくは博士課程在学で選ばれたファイナリストはこの8名

KANG JIHEONGさん 東京大学相田研究室

久保田 浩司さん 北海道大学伊藤研究室

増田 侑亮さん 京都大学村上研究室

松田 侑大さん 東京大学阿部研究室

武藤慶さん 名古屋大学伊丹研究室

中島 誠也さん 千葉大学西田研究室

大島 寛也さん 名古屋大学山口研究室

米田 友貴さん 京都大学大須賀研究室

 

おめでとうございます!ではひとりひとりファイナリストたちの現状と選定された研究内容を簡単にみてみましょう。

 

超分子ポリマーを精密につくるーKANG JIHEONGさん

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KANG さんは相田研究室の博士課程2年生。研究は以前ケムステで紹介しています(記事:超分子ポリマーを精密につくる)。

分子量の揃った超分子ポリマーの合成法の開発に成功し、その合成した超分子ポリマーができていることを様々な種類の分析方法で証明しています。ポリマーの長さを制御した重合法というだけでなく、モノマーのキラリティーを区別した選択的な重合や、光学活性なポリマーを合成することができます。

この他にも多くの賞を受賞しており、今後の活躍が期待される研究者だと思います。

 

代表論文

“A rational strategy for the realization of chain-growth supramolecular polymerization”

Kang, J.; Miyajima, D.; Mori, T.; Inoue, Y.; Itoh, Y.; Aida, T Science 2015347, 646. DOI:10.1126/science.aaa4249

 

ホウ素とアルデヒドを反応させて光学活性ホウ素化合物をつくるー久保田 浩司さん

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久保田さんは伊藤研究室の博士課程3年。現在大変好評のコンテンツ「スポットライトリサーチ」で別の関連研究で取り上げさせていただきました(記事:インドールの触媒的不斉ヒドロホウ素化反応の開発)。

今回ファイナリストに選ばれたのは、銅触媒存在下、ホウ素化合物とアルデヒドを混ぜると、光学活性ホウ素化合物が得られる反応に関する論文です。

光学活性ホウ素化合物の合成に関してすでに13報もの論文を出しており、アクティブな研究者になりそうです。現在は海外留学中です。

 

代表論文

“Copper(I)-Catalyzed Enantioselective Nucleophilic Borylation of Aldehydes: An Efficient Route to Enantiomerically Enriched α-Alkoxyorganoboronate Esters”

Kubota, K.; Yamamoto, E.; Ito, H, J. Am. Chem. Soc. 2015137, 420. DOI: 10.1021/ja511247z

 

太陽光の力で二酸化炭素と反応させるー増田 侑亮さん

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増田さんは村上研究室の博士課程3年。主に光照射下、有機化合物を二酸化炭素と反応させることのできる反応開発研究を行っています。

代表論文はアルキルフェニルケトンの二酸化炭素による光駆動カルボニル化反応。かなり基質が限定的ですが、太陽光のなか常圧の二酸化炭素でも反応が進むユニークな反応を開発しています。

今後の進路はわかりませんが、論文も7報ほど報告しており、優秀な研究者となるのではないかと思います。

 

代表論文

“Light-Driven Carboxylation of o-Alkylphenyl Ketones with CO2

Masuda, Y.; Ishida, N.; Murakami, M. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 14063. DOI:10.1021/jacs.5b10032

 

生物活性分子の生合成機構をさぐるー松田 侑大さん

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松田さんは阿部研究室出身。博士中退で助教となり、博士を取得した後、現在デンマークのThomas Larsen研へ留学中だそうです。テルペンの生合成機構解明が主な研究。対象となった代表論文は、アンジトミンという複雑テルペノイドが如何にしてできあがるか?生合成遺伝子を同定し、12種類の酵素が関わっていることを明らかにしました。帰国後にどのような研究をはじめるのかが楽しみです。

 

“Complete Biosynthetic Pathway of Anditomin: Nature’s Sophisticated Synthetic Route to a Complex Fungal Meroterpenoid”

Matsuda, Y.; Wakimoto, T.; Mori, T.; Awakawa, T.; Abe, I. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 15326. DOI: 10.1021/ja508127q

 

エステルを使った新しいカップリング反応ー武藤慶さん

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武藤さんは伊丹研究室出身。実は筆者とともに研究を行っていた学生で、今年の4月から筆者の研究室の助教となりました。

ケムステでも、スポットライトリサーチの第一回目に研究を紹介しています(記事:エステルを使った新しいカップリング反応)。

武藤さんはニッケル触媒を用いる新規クロスカップリング反応の開発に従事し、カップリング反応・新触媒の開発を行ってきました。エステルのC–C結合を切って、ボロン酸と新たなC–C結合を作る、新しいカップリング反応の開発が今回のファイナリストに選ばれた代表論文です。

数々の若手の賞も総なめしているこの世代で最も優秀な研究者のひとりであり、私の重要なパートナーです。

 

代表論文

“Decarbonylative organoboron cross-coupling of esters by nickel catalysis”

Muto, K.; Yamaguchi, J.; Musaev. D. G.; Itami, K. Nature Commun2015, 6, 7508. DOI: 10.1038/ncomms8508

 

複雑アルカロイドの全合成ー中島 誠也さん

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中島さんは西田研究室出身。天然に存在する複雑アルカロイドの全合成研究に従事していました。

実は中島さんもケムステで取り上げたことのあるひとりです。SciFInder Future Leadersというプログラムに昨年見事選ばれ、その体験談のインタビューを行いました(記事:2016 SciFinder Future Leadersプログラム参加のススメ)。

代表論文は新規メラノーマ(悪性黒色腫)治療薬の医薬品候補化合物として知られている、天然物の全合成研究。巧みな合成手法で複雑な骨格を作り上げています。現在、日本学術振興会特別研究員(PD)として、東京大学の内山研究室で研究を行っています。

 

代表論文

“Total Syntheses of (+)-Grandilodine C and (+)-Lapidilectine B and Determination of their Absolute Stereochemistry”

Nakajima, M.; Arai, S.; Nishida, A. Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 3473. DOI: 10.1002/anie.201510561

 

新しいπ共役化合物の設計と合成ー大島 寛也さん

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大島さんは現在山口研究室の博士課程3年。新たなπ共役系化合物の設計・合成を行っています。代表論文は、チオフェン縮環ビスデヒドロ[12]アヌレンの[2+2]付加反応による、含シクロブタジエン縮環π電子系の合成と物性。遷移金属触媒を使わず、光照射もしくは温和な加熱条件でシクロブタジエンを合成可能です。長波長領域での光吸収や高い電子受容性,多段階酸化還元特性を示す新骨格をもつπ共役系化合物をつくりだすことに成功しています。

 

代表論文

“Thiophene-Fused Bisdehydro[12]annulene That Undergoes Transannular Alkyne Cycloaddition by Either Light or Heat”

Fukazawa, A.; Oshima, H.; Shiota, Y.; Takahashi, S.; Yoshizawa, K.; Yamaguchi, S. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 1731. DOI: 10.1021/ja3126849

 

もっとも大きなメビウスの輪の合成ー米田 友貴さん

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米田さんは大須賀研究室出身。

代表論文は、[44]および[46]デカフィリンパラジウム錯体の合成。最も大きいメビウス芳香族性分子(メビウスの帯のような表裏の区別のないトポロジー上に共役系を持つ化合物)の遷移金属錯体の合成に成功しています。現在は千葉大学根矢研究室で助教として働いているようです。

代表論文

“Pd(II) Complexes of [44]- and [46]Decaphyrins: The Largest Hückel Aromatic and Antiaromatic, and Möbius Aromatic Macrocycles”

Yoneda, T.; Sung, Y. M.; Lim, J. M.; Kim, D.; Osuka, A. Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 13169. DOI: 10.1002/anie.201408506

 

その他日本人以外のファイナリスト

日本人だけ受賞者や研究の概要を述べましたが、もちろん国際賞ですので、全世界の一流研究室が名を連ねています。

例えば、米国ロチェスター大学Weix研で還元的カップリングでNatureを出したLaura Ackermanさんや、スクリプス研究所Baran研で新しいアミノ化反応をScienceに報告したRyan Gianatassioさん、ケムステでも紹介したスタンフォード大学のBurns研でハロモンなどのビシナルジハライドテルペノイドを合成したCyril Bucherさん記事:ビシナルジハライドテルペノイドの高効率全合成などなど(全部あげるとキリがないのでこのぐらいに)。

ファイナリストはこちらに紹介されているので、未来のスーパースター候補の名前と仕事を確認してみてはいかがでしょうか。

ファイナリストに残った皆さん、まずはおめでとうございます!最後の受賞者3名に残れることを期待しています!

 

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院准教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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