[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

二窒素の配位モードと反応性の関係を調べる: Nature Rev. Chem. 2017-4/5月号

[スポンサーリンク]

さて、今年からNature系唯一の純粋化学の総説誌「Nature Reviews Chemistry」を紹介しています(過去の記事は記事下部参照)。

第三回目となる今回は2017年4月号と5月号から、一部をピックアップして紹介します(日本語タイトルはNature Reviews Chemistry日本語サイトから)。

二窒素の配位モードと反応性の関係を調べる

窒素はもっと地球上に豊富にあるガスであることは言うまでもありません。かなり安定な分子ですが、高校でも習うように、ハーバー・ボッシュ法における原料であり、高温・高圧下で反応します。

さらに、遷移金属錯体をもちいると比較的簡単に反応してしまうのです。それらを温和な条件下で触媒的に回すことができ、アンモニアをつくることができたら…。言うは易く行うは難しで、現在でも精力的に研究が行われている分野です。

さて、本総説では、単離可能な窒素ー遷移金属錯体に注目して、以下の配位モード別に紹介しています。

遷移金属への窒素の配位モード(出典:Nat. Rev. Chem. 2017, 1, 0026.)

“Examining the relationship between coordination mode and reactivity of dinitrogen”

Burford, R. J.; Fryzuk, M. D. Nat. Rev. Chem. 2017, 1, 0026. DOI: 10.1038/s41570-017-0026

ハーバー・ボッシュ法や窒素固定や触媒的窒素固定などに関するお話はケムステの過去記事を御覧ください。

窒素化合物および窒素固定に関するケムステ記事

有機合成においてC–H結合開裂とC–C結合開裂を融合する

有機化合物を形づくる炭化水素。つまり炭素ー水素結合と炭素ー炭素結合とは有機化合物に必ず含まれている結合。これらを反応しうる官能基や他の炭素骨格などに変換してあげようという潮流は昨今有機化学の最有力課題のひとつです。

前者は炭素ー水素(C-H)結合活性化反応、後者は炭素ー炭素(C–C)結合活性化反応となります。ではこれらを連続的に行ってC–H結合もC–C結合も両方活性化(開裂)してしまおう(してしまった例)!というのが本総説の中身です。まさにこの系統の研究に臨んでいるので、大変参考になりました。

C-H結合開裂とC-C結合開裂を連続的に行う(出典:Nat. Rev. Chem. 2017, 1, 0035.

著者はイスラエル工科大学のMarek教授ら。イスラエルを代表する有機化学者でケムステでも研究を紹介しています(記事:多置換ケトンエノラートを立体選択的につくる)。紹介した記事以外にも多くの研究業績をあげている傍ら、エッセイにてイスラエル化学の現状なども述べています(関連記事:イスラエルの化学ってどうよ?)。

C-H結合開裂とC-C結合開裂に関するケムステ記事

“Merging C–H and C–C bond cleavage in organic synthesis”

Nairoukh, Z.; Cormier, M.; Marek, I. Nat. Rev. chem. 2017, 1, 0035. DOI: 10.1038/s41570-017-0035

化学的方法で生成した偽造防止のためのPUF(physical unclonable function)

現在情報機器が一般的に使用される社会では、情報を守る「暗号化技術」の開発は大変重要な課題です。もちろん秘密漏洩においても重要ですが、「暗号」はある個体がそのものであると断言できる”証明書”としても利用することができます。つまり偽造防止技術の1つになります。偽造防止で最新技術が駆使されている代表例は、紙幣。例えば、以下のユーロにも多くの「捏造防止タグ」が搭載されています。

ユーロ紙幣に使われる捏造防止技術(出典:Nat. Rev. Chem. 2017, 1, 0031.)

上記の紙幣のように「暗号は」様々なものがありますが、現在暗号化技術で現在注目が集まっているのはphysical unclonable function(PUF,パフ)。一言でいえば、個体によって異なるもわずかな差異を利用して,強力な暗号を作ることです。本総説では化学(化合物)をもちいた偽造のためのPUFについて詳しく述べています。意外と知らない分野であったので楽しく読むことができました。

Physical unclonable functions generated through chemical methods for anti-counterfeiting

Arppe, R.; Sørensen, T. J. Nat. Rev. Chem. 2017, 1, 0031. DOI: 10.1038/s41570-017-0031

個人購読開始しました

前回も述べましたが、創刊号(1月号)は年末まで無料公開らしいですが、2月号以降は有料になっています。つまり購読しないと残念ながらみることができません。
機関購読(サイトライセンス)してくれればとってもうれしいところですが、昨今のジャーナル高騰により、大学や研究機関もそんな余裕はありません。
しかしながら、個人購読ならば1万円ちょっとですので、私は個人購読をはじめました。ホントによくまとめられていて参考になるのでぜひ購読してみてはいかがでしょうか。

Nature Rev. Chem. に関するケムステ記事

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 2018年3月2日:ケムステ主催「化学系学生対象 企業合同説明会…
  2. 第98回日本化学会春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Pa…
  3. 細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所
  4. ストックホルム国際青年科学セミナー参加学生を募集開始 ノーベル賞…
  5. 分子があつまる力を利用したオリゴマーのプログラム合成法
  6. ケイ素半導体加工に使えるイガイな接着剤
  7. 若手研究者vsノーベル賞受賞者 【化学者とは?!編】
  8. お前はもう死んでいる:不安定な試薬たち|第4回「有機合成実験テク…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 芳香族化合物のニトロ化 Nitration of Aromatic Compounds
  2. ジアゾメタン
  3. 【速報】ノーベル化学賞2014ー超解像顕微鏡の開発
  4. ジェイコブセン速度論的光学分割加水分解 Jacobsen Hydrolytic Kinetic Reasolution (Jacobsen HKR)
  5. アーサー・C・コープ賞・受賞者一覧
  6. チャート式実験器具選択ガイド:洗浄ブラシ・攪拌子編
  7. ステープルペプチド Stapled Peptide
  8. 薬学会年会も付設展示会キャンペーンやっちゃいます
  9. 金属から出る光の色を利用し、食中毒の原因菌を迅速かつ同時に識別することに成功!
  10. 吉見 泰治 Yasuharu YOSHIMI

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年5月
月 火 水 木 金 土 日
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

光前駆体法の活用によって、ヘプタセンで初の一重項分裂を観測!

第725回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 理学研究科化学専攻 有機元素化学研究室(山田研…

【スタッフ・寄稿募集】Chem-Stationで、化学を「伝える側」になりませんか?

Chem-Station(ケムステ)は2000年に開設された国内最大の化学ポータルサイトです。大学・…

第17回大津会議―とある参加者の記録―

2026年9月28日~29日に開催された第17回大津会議についての、とある参加者の記録です。この記事…

第17回大津会議 -Otsu Conference- 2026 開催報告 ~新体制で紡ぐ「有機合成の夢」~

第17回大津会議が2026年9月28日(月)〜9月29日(火)びわ湖大津プリンスホテルにて開催されま…

有機合成化学協会誌2026年10月号:医薬品プロセス開発・σ芳香族性・含窒素複素環・メロテルペノイド二量体・高歪み化合物

有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年10月号がオンラインで公開されています。…

時代は水だ! セメントのように水と混ぜるだけで成形・硬化できる「水硬性」高分子

第724回のスポットライトリサーチは、東京科学大学物質理工学院(大塚研究室)博士前期課程2年の徳満玲…

複雑さを設計して、結晶の動きをプログラムする

第723回のスポットライトリサーチは、高知工科大学大学院工学研究科(林研究室) 博士後期課程3年の樋…

ハロゲンの力で強力な結合を切断!天然物クマリンから医薬品・機能性材料原料のクマラノン類へ

第 722 回のスポットライトリサーチは、立命館大学大学院薬学研究科薬学専攻 精密合…

観察を写真で残す!カメラ内蔵リアクタ EasyMax 102i を使ってみた

反応の温度も、攪拌(かくはん)も、滴下も、サンプリングもいまや自動で記録される時代になりました。とこ…

ケムステ人気新着記事 トップ 5【2026年9月版】

2026年9月にケムステでは21本の新しい記事を公開しました。この記事では、その新着記事の中から、ペ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP