[スポンサーリンク]

chemglossary

アトムエコノミー Atom Economy

[スポンサーリンク]

「反応の際、ムダにならずに使われる原子の割合はどれだけか」という点に着目したうえで、化学変換プロセスの効率を表す指標がアトムエコノミー(atom economy)です。


この概念は1991年にスタンフォード大学のバリー・トロスト教授によって提唱されました。今では効率的な化学合成を目指す上で知っておくべき必須概念の一つとなっています。日本語では原子効率、原子経済と訳されることもあります。

 アトムエコノミーを見積もる計算式を下に示します。生成物に反応剤が全て含まれる(使われる)と、アトムエコノミーは100%になります。

 アトムエコノミー100%反応の具体例としては、Diels-Alder反応などのペリ環状反応、Claisen転位などのシグマトロピー転位、(直接的)交差アルドール反応Micheal付加反応水素添加反応ヒドロホルミル化反応などがあります。

 転位反応や付加反応はアトムエコノミーの高い反応になる一方、脱離反応や置換反応では脱離していく原子団がどうしても不要になってしまうため、アトムエコノミーは低くなる傾向にあります。

 アトムエコノミーの高い反応は、活性化剤や溶媒が極少量で済めば、ほとんど廃棄物が出ない反応になります。このため、環境調和性・グリーンケミストリーの観点から特に重要視されるようになってきています。

関連文献

  1. (a) Trost, B. M. Science, 1991, 254, 1471. DOI: 10.1126/science.1962206 (b) Trost, B. M. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1995, 34, 259. DOI: 10.1002/anie.199502591

関連書籍

関連リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 秘密保持契約(NDA)
  2. スナップタグ SNAP-tag
  3. 二水素錯体 Dihydrogen Complexes
  4. エピジェネティクス epigenetics
  5. リード指向型合成 / Lead-Oriented Synthes…
  6. 原子分光分析法の基礎知識~誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-O…
  7. ソーレー帯 (Soret band) & Q帯 (Q …
  8. 界面活性剤 / surface-active agent, su…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 生体分子を活用した新しい人工光合成材料の開発
  2. 第七回ケムステVシンポジウム「有機合成化学の若い力」を開催します!
  3. 【技術者・事業担当者向け】 マイクロ波による化学プロセス革新 〜マイクロ波が得意とするプロセスはコレだ!〜
  4. (-)-ウシクライドAの全合成と構造決定
  5. Biotage Selekt のバリュープライス版 Enkel を試してみた
  6. ポンコツ博士の海外奮闘録XXIV ~博士の危険地帯サバイバル 筒音編~
  7. 生体外の環境でタンパクを守るランダムポリマーの設計
  8. アビシェック・チャッタージー Abhishek Chatterjee
  9. ヒト遺伝子の ヒット・ランキング
  10. 超多剤耐性結核の新しい治療法が 米国政府の承認を取得

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

Marcusの逆転領域で一石二鳥

3+誘導体はMarcusの逆転領域において励起状態から基底状態へ遷移することが実証された。さらに本錯…

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP