[スポンサーリンク]

chemglossary

コンビナトリアル化学 Combinatorial Chemistry

[スポンサーリンク]

 

コンビナトリアル化学(combinatorial chemistry)とは、 「組み合わせ論に基づき、多数の化合物群(ライブラリー)を効率的に合成し、それらを様々な目的に応じて活用していく技術」のことです。

特に、多数の化合物ライブラリを一度に合成する手法をコンビナトリアル合成(combinatorial synthesis)といい、コンビナトリアル化学の中心に位置付けられています。スプリット合成パラレル合成の二法に大別されます。(この技術に関連の深いものとしては固相合成法があります。)

短時間にて合成できた数十万単位の化合物群を自動スクリーニングにかける(ハイスループットスクリーニング)ことで、機能性分子の探索を高速・効率的に行えることになります。この技術は医薬品探索プロセスに多大な影響を与えました。

ただし反応条件の最適化は人手に頼らざるを得ず、総合的に見た時間効率がそれほどは向上しない、収率が低い反応では最終化合物に至るまでの副生物がノイズを与えることも多い、そもそも元の骨格以上のものは生み出すことができず、天然から単離されてきた新規構造を有する化合物のようなものは合成できない、などの本質的問題点もあります。

 類似の化合物をたくさん合成するコンビナトリアル合成よりも、ダイバーシティー(多様性)に富む合成が求められているのも事実であり、コンビナトリアル技術は失敗であったという声も聞こえてきます。しかし、ほぼ化合物骨格が決められたような薬のリード化合物をスクリーニングするためには非常に効果的です。材料工学や触媒化学の分野においても実際に応用され、現在多くのすばらしい製品を生み出しています。

 

関連文献

 

関連書籍

[amazonjs asin=”6130252927″ locale=”JP” title=”Combinatorial Chemistry”][amazonjs asin=”3527321225″ locale=”JP” title=”Dynamic Combinatorial Chemistry”][amazonjs asin=”B00J06TO0W” locale=”JP” title=”Advances in Combinatorial Chemistry & High Throughput Screening Volume 1″]

関連リンク

 

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. エピジェネティクス epigenetics
  2. 波動-粒子二重性 Wave-Particle Duality: …
  3. 特殊ペプチド Specialty Peptide
  4. 多成分連結反応 Multicomponent Reaction…
  5. 一重項分裂 singlet fission
  6. 振動円二色性スペクトル Vibrational Circular…
  7. カール・フィッシャー滴定~滴定による含水率測定~
  8. 徹底比較 特許と論文の違い ~明細書、審査編~

注目情報

ピックアップ記事

  1. 米デュポンの7-9月期、ハリケーン被害などで最終赤字
  2. 特許取得のための手続き
  3. OIST Science Challenge 2022 (オンライン)に参加してみた
  4. 大学入試のあれこれ ②
  5. マツタケオール mushroom alcohol
  6. マイクロフロー瞬間pHスイッチによるアミノ酸NCAの高効率合成
  7. 秘密保持契約(NDA)
  8. 新しいエポキシ化試薬、Triazox
  9. 【大阪開催2月26日】 「化学系学生のための企業研究セミナー」
  10. 激レア!?アジドを含む医薬品 〜世界初の抗HIV薬を中心に〜

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP