[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

【書籍】アリエナイ化学実験の世界へ―『Mad Science―炎と煙と轟音の科学実験54』

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4873114543″ locale=”JP” title=”Mad Science ―炎と煙と轟音の科学実験54 (Make:PROJECTS)”]
今回紹介する書籍『Mad Science―炎と煙と轟音の科学実験54』は以前に取り上げた『Illustrated guide to home chemistry experiments』と同じく、Makeシリーズの一環。DIYの化学実験指南書です。フルカラー写真をふんだんに使ったビジュアルメインの構成で、眺めるだけでもワクワクしてしょうがない感じの本です。

・・・しかし本書は、真っ先に頭の中に思い描かれるような実験書とは、全然違っています。

もっともわかりやすい違いは何か?

それは「掲載されてる実験が激アブナイものばかり」という点にあります。

なにせサブタイトルからして『炎と煙と轟音の科学実験54』。そこはダテじゃありません。


果たしてどれだけヤバイ内容なのか?・・・これは「百聞は一見に如かず」。本書に”実際に”書かれてるアリエナイ例を、ご紹介しましょう。

その①: 危険過ぎる製塩法

「塩素ガスと液状ナトリウムから食塩を合成して、それをポップコーンの味付けに使う実験」がまず最初に記されています。

・・・Σ(゚д゚) エッ!? ナニ?何だって?・・・(つд⊂)ゴシゴシ・・・いやいや見間違いではないです。確かにそう書いてある。

説明文からして狂っているとしか・・・いやいや、真実はいつもたった一つ!

動画を最後まで見れば分かる・・・見れば分かるんだよ!!!

おいおいおいおい!!!

こんなの本に書いて大丈夫か? 大 丈 夫 な の か ??? ― 「大丈夫だ、問題ない」

その②: 水銀モーター

「水銀に電気を流して電動モーターにする」という実験。

・・・(゚Д゚ )ハァ?

まぁまぁ、こちらも一見に如かずであります。

水銀使い過ぎだろ!!!

よく読むと15kgとか書いてあるんですが・・・家庭でどころか実験室でもやりたくないぐらいに、怪しげな香りが立ち込めております。
それに追い打ちをかけるかのごとく、囲み記事として「非致死性バージョンの作りかた」とか書いてあるじゃないですか!

こんなこと書いて本当に 大 丈 夫 な の か !!?? ― 「大丈夫だ、問題ない」

そんな著者について

MadScience_2
(写真:Wired)

著者Theodore Gray氏は、かのWolfram Research社(数式処理ソフトMathematicaの開発で有名)の共同創設者。なので本業は数理屋さんです。

しかし大学では化学の学位を取得し、趣味(Hobby)としての化学を楽しんでる人物でもあります。

そのマニアっぷりはまったくハンパなく、木製テーブル型の元素周期表を作ってしまったり。

MadScience_6

これがあまりにハイクオリティなゆえ、2002年にイグノーベル化学賞を受賞してしまったり。

またさらには、Periodictable.comというビジュアル元素周期表をウェブ上に作り上げてしまったり。

最近ではiPad用元素周期表アプリ「The Elements」を作って公開してたり・・・。

なんなんだコイツは!!まさに「アリエナイ」ほどに多彩な才能を持つ傑物といえましょう。

そんな彼が執筆しているのがこの『Mad Science』ですから、楽しくないわけがありません!

Gray氏は、まえがきでいきなりこう語っています。

「この本には、全ての実験を安全に行うために必要なことが書いてあるわけではない!」

・・・すげぇ。開き直りすぎです。さらには、こうも言っています。

良きにつけ悪しきにつけ、科学実験の炎や煙や轟音こそが、多くの科学者が科学者になろうとするそもそものきっかけを与えたのである。その面白さは他にたとえようがない。
・・・
「よい子は、おうちでこれをやってはいけません」。これが警告になるか、誘惑になるかは本人の性格次第である。私はこういう言い方が大嫌いだ。言われた方は絶望的になる。
・・・
この本の実験の中には、狂っているとしか思えないものもある。どう考えても狂っているものが。なぜみんなにとって狂っているものが、私にはそうでないのか。
それは、人はそれぞれ才能も、経験も、友人も、持っている道具も違うからだ。

「アブナイ実験こそが子供を惹きつける」―いやぁ実のところこの考え方には、筆者はとても共感できるのですよ。

Quark刊行の実験書とか読みながら、お手製ガスバーナー作って、いろんなものを燃やして(;´Д`)ハァハァ・・・そんな子供時代がボクにもありました。振り返ってみると、そんなところに、化学者として生きようと思った原体験がある気もするんですよね。

しかし今のボクは、教育者たる肩書きをどういうわけか持ってしまい。おかげで危ない実験を勧めるのが難しい立場となってしまい。近くに人気のない広い場所もないため、自分だけでの実践も出来ず。
さらに今はいろいろうるさいですよね、学生と一緒になって危ないのやろうとすると。逐一やってくるクレーマーをしてペアモンゲットだぜ!」などとおちょくってみるのも悪くないかなぁと考え・・・いやゲフンゲフン、これ以上はやめておきましょう・・・お客様たるご両親は神様ですよモチのロンのこと。

・・・まぁ、いずれお金を稼いで、家に自分用の実験室でも作りますかな(笑)

いずれにせよ、本を眺め、動画を眺め、だけでも十分楽しめる書籍です。かなーり刺激的内容ですよ。化学GEEKの皆さんにとっては、必読バイブルかと!(笑)

是非、お手元に一冊いかが!?

[amazonjs asin=”4873114543″ locale=”JP” title=”Mad Science ―炎と煙と轟音の科学実験54 (Make:PROJECTS)”] [amazonjs asin=”487311666X” locale=”JP” title=”Mad Science 2 ―もっと怪しい炎と劇薬と爆音の科学実験 (Make: PROJECTS)”]

関連動画

塩素酸カリウムとグミキャンディが激しく化学反応する動画。『Mad Science』には過塩素酸カリウム+オレオでロケット燃料を作る方法が書かれています。そちらもこんな感じなんでしょう、きっと・・・。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”0596514921″ locale=”JP” title=”Illustrated Guide to Home Chemistry Experiments: All Lab, No Lecture (Diy Science)”][amazonjs asin=”4422420046″ locale=”JP” title=”世界で一番美しい元素図鑑”][amazonjs asin=”4861994586″ locale=”JP” title=”新版 アリエナイ理科―オトナのための最も刺激的な理科の教科書 (三才ムック VOL. 483)”]

 

関連リンク

イグノーベル賞受賞者が語る、エクストリーム実験の面白み

Theodore Gray – Wikipedia

Gray Matter
セオドア・グレイ氏がポピュラー・サイエンス誌に連載している化学コラム。『Mad Science』の元になっている。

こんなのアリ?な科学実験連発!『Mad Science』 (Gizmodo Japan)

自家松戸菜園 – 書評 – Mad Science 炎と煙と轟音の科学実験54(404 Blog Not Found)

夏休みの自由研究に「Mad Science――炎と煙と轟音の科学実験54」はいかが? (Slashdot.jp)

 

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 有機合成化学協会誌2023年10月号:典型元素・テトラシアノシク…
  2. 第27回 国際複素環化学会議 (27th ISHC)
  3. 逆生合成理論解析という手法を開発し、テルペン系類縁天然物 pen…
  4. 原子量に捧げる詩
  5. 有機合成化学協会誌2023年5月号:特集号「日本の誇るハロゲン資…
  6. 今年は共有結合100周年ールイスの構造式の物語
  7. 生物に打ち勝つ人工合成?アルカロイド骨格多様化合成法の開発
  8. 研究動画投稿で5000ユーロゲット?「Science in Sh…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム/ナトリウム/カリウム L/N/K-Selectride
  2. ハーバード大Whitesides教授がWelch Awardを受賞
  3. CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】
  4. 「MI×データ科学」コース実施要綱~データ科学を利用した材料研究の新潮流~
  5. 日本プロセス化学会2005サマーシンポジウム
  6. バニリン /Vanillin
  7. 第23回「化学結合の自在切断 ・自在構築を夢見て」侯 召民 教授
  8. 発想の逆転で糖鎖合成
  9. マイルの寄付:東北地方太平洋沖地震
  10. 2009年10大分子発表!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年10月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

「MI×データ科学」コース 〜LLM・自動実験・計算・画像とベイズ最適化ハンズオン〜

1 開講期間2026年5月26日(火)、29日(金) 計2日間2 コースのねらい、特色近…

材料の数理モデリング – マルチスケール材料シミュレーション –

材料の数理モデリング概要材料科学分野におけるシミュレーションを「マルチスケール」で理解するた…

第59回天然物化学談話会@宮崎(7/8~10)

ごあいさつ天然物化学談話会は、全国の天然物化学および有機合成化学を研究する大学生…

トッド・ハイスター Todd K. Hyster

トッド・カート・ハイスター(Todd Kurt Hyster、1985年10月10日–)はアメリカ出…

“最難関アリル化”を劇的に加速する固定化触媒の開発

第 703回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院 理工学府 博士課程前期で…

「ニューモダリティと有機合成化学」 第5回公開講演会

従来の低分子、抗体だけでなく、核酸、ペプチド、あるいはその複合体(例えばADC(抗体薬物複合体))、…

溶融する半導体配位高分子の開発に成功!~MOFの成形加工性の向上に期待~

第702回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理学部(田中研究室)にて助教をされていた秋吉亮平 …

ミン・ユー・ガイ Ming-Yu Ngai

魏明宇(Ming-Yu Ngai、1981年X月XX日–)は米国の有機化学者である。米国パデュー大学…

第55回複素環化学討論会

複素環化学討論会は、「複素環の合成、反応、構造および物性」をテーマとして、化学・薬学・農芸化学など幅…

逐次的脱芳香族化と光環化付加で挑む!Annotinolide B初の全合成

Annotinolide Bの初の全合成が報告された。キノリンの逐次的な脱芳香族化と分子内光環化付加…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP