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痔の薬のはなし 真剣に調べる

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Tshozoです。

4人きょうだいの一番下で甘やかされ精神年齢が低いまま育ったせいか、今でも実年齢より10歳以上若くみられるときがあります。尿などのワードによく反応したり関連記事を書いたりするのはそれなりの理由があるのかもしれません。ということでタイトルの話、切実な話だったので真剣に調べました。

本記事の背景

昨今の状況を受けたテレワーク対応のこともありますが齢の関係から調整作業や資料作成が多くなっている関係で、どうしても座り仕事が多くなってしまう。たとえばここ数か月のある1週間での内訳をみてみると、

月曜日:座り仕事70%, 移動20%, 実験作業10%
火曜日:座り仕事100%(報告資料・調査・特許書き)
水曜日:座り仕事60%, 移動10%, 打ち合わせ(座り)30%
木曜日:座り仕事50%, 移動20%, 実験作業30%
金曜日:座り仕事100%(報告資料・相談会資料・企画資料)

・・・という感じ。土日に家事以外に少しは体を動かしたりしていますが調べものとか記事を書いたりとかで座ることが多い。あと日中は休憩も惜しんで集中したりする。すると腰痛以外で何が起きるのか。

そう、腰付近の疾患、代表的なものはです。これは齢を重ねると必ず自らに降りかかってくるものなのです。

嘘だと言うならご自身のご家族にヒアリングしてみてごらんなさい。うちの家では50%が経験済でした。筆者が中学時代のある教師は脱肛まで併発していました。数学界最高難易度の未解決問題の1つであるリーマン予想を立ち上げたゲオルグ・ベルンハルト・リーマンも長いこと痔に苦しんでいたのです(@黒川信重先生の著書)。手塚治虫「ドン・ドラキュラ」に出てくるヘルシング教授の痔の痛みに対するリアクションを笑っていた自分がまさか同じように悶え苦しむ日が来るなんて思いもしなかったのです。小さい頃ひだまりの中でのんびりと眺めていた朝日新聞日曜版の角の広告に必ずあったヒサヤ大黒堂殿の「ぢ」の文字が鮮烈な痛みの中で鮮明に頭をよぎるのを大人になってから体験するなんて誰が予想したでしょうか。

実は筆者の周囲でも酒の席で「私もなんです、実はあの方も・・・」と自発的に漏れ聞こえるほどで、職場だけで8人、職場外では5人、つまり2020年4月1日現在の日本でのアレの感染率よりも直感的に圧倒的に高い率であることが判明しています。さらに重症率はかなり高く「痔瘻・入院・即手術」という状態にまでなっていた人間も何人かいました。こうした経験を手術前後で赤裸々に語る人間すら何人か居り、弊社全員に広げたらもっと数は多くなるのではないでしょうか。

高貴な方々の周りにはあまり自ら語る人々も居ないでしょうが、幸い筆者のまわりは中流かつ比較的関西則に近く、下々の領域のことを会話に出しても許される雰囲気が多かったため把握できた実体のもと、下記の話をしていこうと考えております。こういう話題を苦々しくみられる高貴な方々もお見えになるかもしれませんが筆者は本当に苦しかったため真剣に調べた次第ですのでお付き合いください。

痔とは・筆者の症状と経過

痔とは一般に直腸周辺の外傷またはそれに起因する膿瘍や出来物のことをいいます。下図を見れば一目瞭然ですね。このうち今回筆者に発生した疾患は切痔(裂肛)、そのうちでもやや重度の切れ痔でした。

病院で頂いたチラシから引用 シェリングと書いてあったがかなり古かったです
いわゆる「いぼ痔」「切れ痔」「あな痔」に相当するもの

まず上記の座り仕事に加え、元々筆者が慢性の硬質かつ低頻度便の癖があったのが根本です。つまりHardな便が何回か続いたある日に便所の水が赤くなっているのに気づいたのが最初で、その時は血が混じってるな、オリは鼻血の頻度が多いし大丈夫だろうとたかをくくっていたわけです。

しかし日に日に増す鈍痛、御手洗に行く際の恐怖感、毎回の鮮血と襲い来る激痛、果ては血が出てから1ヶ月後くらいに熱が出だすと同時に眠れなくなるほどの痛みと出血が発生しこれはイカンと判断、痛みで目がさえていた早朝上司に仮病のメールを入れ、空気が綺麗な清々しい冬の朝の中、某肛門科に駆け込みました。

自分より干支三回りぐらい年上の方々が犇めき合う待合室を抜け、マスクとスキー帽とメガネでほぼ顔が見えない状態のまま受付で手汗で暖まった保険証を突き出したのですが、予想以上に落ち着いた若い麗らかな女神のような女性看護師の方に「どうされました?」と聞かれ、目線を合わせず「初診・・・あの・・・お尻・・・」とカタコトの日本語を発した瞬間女神から手元の問診票を渡され記入するよう促されます。

座ると人事不省に陥りそうな気がしたため立ったまま、震える手で具体的に症状を問診票へ記入し受付に出した際に女神に「あぁ」と解釈に困る反応をされた後病院の待合室で痛みに耐えながら俯いていたのですが、小学校のころ天野君に苛められるのに怯えていた時と似た、丹田のあたりから寒気が漂うような感覚だったのを記憶しています。気を紛らわせるために『僕ヤバ』や『ゴールデンカムイ』を読んでいたのですが心にダメージを喰らうだけでした。

正直、手術も覚悟していました。別症状で下半身フロント側の処置を受けた経験はあったのですが逆側は今回が初めてで、受付から30分くらい後に呼び出されて入った処置室で後ろのドアを閉めた女性看護師さんが映画『SAW』で死体のフリをしていた老人のように思えてしまい、さらに診て頂くその先生の表情が鬼のように見えました。”GAME OVER”という言葉が頭を駆け巡りました。

・・・結果、手術に至るまで酷くなかったのは本当に幸いでした。先生が神のように見えました。

その後、先生から「触診と***(言語不明瞭)で確認した限りちょっとひどい切れ痔ですね、まぁ薬と安静とで治るでしょうからお薬出しますので様子みて下さいねぇ」「便通は3日に1回あるかないかではちょっとひどいですねぇ、どうしましょうねぇ、・・・ともかく****(言語不明瞭)なのでこれお出ししておきますねぇ」というコメントを受け、消炎剤と痛み止めと漢方薬、具体的にはジェネリック薬品最大手のうちの1社である東和薬品グループジェイドルフ製薬殿による「ネリザ坐剤」「ヘモポリゾン軟膏」の外用薬2種類と、ツムラ殿が製造されている「乙字湯」という飲み薬1種の計3種類を頂きました。その結果、概ね10日程度でほぼ寛解し、その後も若干の出血は続きましたが1ヶ月もするとほぼ無症状に戻った次第です。

絵面が汚いのは勘弁してください
“痔疾用剤”の痔が痛々しい

ということで、比較的症状が落ち着いた後にこれらの薬をしげしげと眺めながら「どういう成分が入っているんだろう」とか「何が効いているんだろう」と思ったのがこの記事を書いた発端です。痔瘻とか肛門膿瘍とかいう言葉が頭の中を回っていた通院前から比べるともう余裕綽綽と言った感じですね。喉元過ぎればという言葉は筆者のためにある言葉だと思います。

使った薬の詳細などについて

で、それぞれの薬を整理すると下の表のようになりました。投薬してからかなり早くに症状が改善して治った感覚があったのでよっぽど最近に市販された新しい薬なんだろうかと思っていたのですが、実はいずれも古くからある薬のジェネリック版で、テレビCMで出てくるおなじみの製品にも似たような成分が含まれているのも今回初めて知りました。

薬効成分と製薬メーカさんなど

順にみていきましょう。

まずネリザ坐剤について。[文献1][文献2]によると薬効成分として2成分(ジフルコルトロン吉草酸エステル、リドカイン)、それ以外に1成分(ハードファット:ロウのようなもの)が入っています。

薬効成分のひとつである「ジフルコルトロン吉草酸エステル」は1967年にドイツSherring(後にSherring-Plough→現Merck)でKieschlichらにより合成された人工ホルモンで、強い消炎作用をもつステロイド剤(レベル4・かなり強いステロイド)です。そしてもう一つは「リドカイン」という歯科手術などでも使用されている局所麻酔薬、要は痛み止めです。

分子量の低いほうからみていきましょう。後者のリドカインは[文献3]に詳細が書いてあり、1935年スウェーデンのLöfgren及びLundquistが植物塩基gramineの合成異性体が麻酔性を有することを発見したところからはじまり、この種の多数の誘導体について研究した結果、1943年合成に成功したとのこと。その後Björn、Goldberg、Gordhらを始めとした研究者による基礎検証並びに臨床実験を経て、1948年スウェーデンのAstra社(現AstraZeneca社)がその製品を発売するに至った、と記載があります。リドカインの方は3ステップくらいで簡単に合成出来そうですね。

いずれも[文献2]より引用
リドカインはともかくジフルコルトロン吉草酸エステルのほうは
なんでこれを1960年代に合成・構造解析出来るのか謎

しかしジフルコルトロンryの方は筆者レベルではもはやどこから手をつけていいかわからんレベル。そこで合成方法も調べてみたのですが、Arzneim Forsch (Arzneimittel-Forschung) というドイツの古い薬学雑誌の1976年の巻にSherringの上記のKeislichという方が主筆で”Synthese von Diflucortolon und seinen Estern”という論文を出しているのは確認できたところ止まりでその原文はWebでは入手できない状況です。そこで類似のステロイド全合成の全体の歴史も調べ出したのですけれど、あまりにも奥が深すぎて挫折しました・・・

仕方ないのでボチボチ似たような構造であるプロゲステロンの全合成ルートを眺められる”SynArchive“というサイト(リンクホームリンク  ページのデザインが秀逸)でざっと見てみましたが、これも驚くことに1971年時点のJACSで全合成完了しているんですね(論文リンク)。一体何でこういうステップを考えられるのか極めて理解に苦しみます。ぷよぷよのプロゲーマとかこういう脳内なんでしょうかね。

なお[文献3]によると当時こうしたステロイド類の全合成に成功していたRocheとこのジフルオロコルトン吉草酸エステルの合成・臨床に成功したSherringとで相互に技術を交換し、関連薬品のバリエーションを協力しながら増やしていったとのことですが、現在のステロイドが関係する薬のバリエーションの豊富さ、適用し得る疾患への広さはこうした基礎化学合成の地道な積上げに根付いたものがある、ということを実感できた次第です。

また漢方薬系の乙字湯は、結局一番最後まで服薬したものです。ハード便がかなりソフト便に変換されることを実感できた確かな効果があり、下記に書くように多少の膨満感はあったものの服用を重ねるにつれ徐々に軽減されていったこともあり現在も(市販で買えます)2日に1回程度飲んで暮らしています。ただその内容物はよくよく見るとかなり複雑です。[文献4]によると、薬効成分として主要な位置を占めるトウキについては精油、ポリアセチレン化合物、クマリン類、多糖物質、β-carboline 誘導体などが入っており、また重要なショウマについてはフェノールカルボン酸、テルペノイド類、クロモン類、フキ酸類、インドリノン誘導体、シクロアルテノール類など極めて多数の材料が配合されていました。おそらく長年の実績に基づいて決めた配合なのでしょうけど、実は筆者の親族がある疾患で長年苦しんでいたところ漢方系の生薬と中国医学との合わせ技で相当な改善がみられたことがあり、ここらへんは西洋医学とは異なった面での強みがあるのだと実感しているところがあります。人を救うという点では同じ医学に基づくのですから、良い薬をそれぞれ選べる現代は恵まれているなぁと思いますね。

で、最後の注入型ペースト薬のヘモポリゾンには同じくステロイド剤でも薬効作用が弱めのヒドロコルチゾン(下図)が入っています。このヘモポリゾンのオリジナル薬である「強力ポステリザン」は1960年台にドイツのドクトル・カーデ製薬会社がヒドロコルチゾンと組み合わせて痔核への薬効を上げたものを発売したようですが・・・。日本ではマルホ殿がその販売権を持っているようです。というかシェリングにしろカーデにしろ、ドイツの製薬会社が痔に強いというのを今回初めて知ったのですが、前述のリーマンのことを考えても結構疾患率多いのかなという印象を持ちました。

ヒドロコルチゾンの分子構造[文献5,6] 大豆の油から発酵を介し、クロロ硫酸で水酸基を外して
加水分解する方法などで合成できるもよう[下図]
ヒドロコルチゾンそのものではないが近い分子構造の合成方法
[文献7]より引用

さらにヘモポリゾンには、このヒドロコルチゾンに加えて「大腸菌死菌浮遊液」という謎の液体が入っていました。この謎液について色々調べていくと「白血球遊走能を高め(白血球が集まりやすくなり)、局所感染防御作用を示す」という作用があるようで、要は大腸菌の死体を介在させることで白血球を患部に呼び出し、以って雑菌の繁殖などを抑える効果があるようです。

何でこういう謎液が出てきたのか、ですが、もともとは1922年にこちらの「ドイツ薬学週報」に載っているようにドイツの薬学者たちにより「大腸菌ワクチン(?)」的な考えで作り出されたもので、何とこの時点で既に痔核への薬用効果があることが見出されていたとのこと[文献5, 6]。一体何を考えて人の肛門にこの液を注入することを発案したのか、筆者にはさっぱりその考えの深淵が理解できません。色々関連の文献が古すぎてこれ以上調べられないのですが、もしかしたら既に塗り薬として上記の白血球遊走能を活かした製品としての実績があったのかもしれませんね。ただこの謎液である大腸菌死滅液の製造方法ですが、筆者の調べでは今回どこにも見つからず詳細の記述を諦めざるを得ませんでした。あと実際にどのメーカが作っているのかもわからずじまいで謎は膨らむばかりです。どなたかご存知でしたらお教えくんねですかね。

バイオ関係に疎い筆者の拙い知識に基づくとおそらく一般健康成人のエリート大腸菌、いわば厳選茶葉を採取してタンク内で培養させた後、熱・スチーム・薬剤などで死滅させることで出来る大腸菌の死骸が含まれた液、というイメージなのですが、それが巡り巡って筆者の痔の薬に入って肛門に注入されるという構図は非常に興味深く、ある意味で世界は繋がっていることを実証するモイスチャーとして感じずにはいられません。

・・・こうしたユニバーサルな観点はともかく、これらのお薬の投薬後に非常に困ったことがありました。それは、恥ずかしいのですがいつも通り放屁が出来なかったこと。そう、カンの良い方はお気づきと思いますが座薬と消炎剤を投与後、放屁をすると常識的に考えて出てしまうのです。

ヘモポリゾンは容器からわかるように汁状です。いっぽうネリザ坐剤はミサイル状固体ですが材料を固めているハードファットはバターのようなもんで尻投入後に体温で溶けてほぼ液状になってしまいますし、加えてこれらの合わせ技によるものか筆者の放屁感をやたら増幅させる印象があり、正直まいりました(筆者だけかと思っていましたが、先行薬ネリプロクトの副作用欄に「鼓腸放屁」というそのまんまの症状がありましたのでこれを喰らった可能性があります)。

更に悪いことに筆者は乙字湯に対しても膨満感が出るタイプだったようで、内圧が上がると内容物リークが発生する化学の常識に基づき汚染が発生することもしばしばでした。このことを知らなかったので復帰初日に盛大に貫通してやらかし、慌てて早退して後日薬局で聖人用オムツを買う羽目になりました。

ということで今回のお薬、効き目が良いのは身を以って体験出来たんですが、できればお腹の内圧を上昇させにくい、つまりは治療中QOLを維持できるお薬であることも製薬メーカの方々に対し切に希望するものです。もちろん副作用としては頻度の低い案件ですし、1970年前後に開発された古い薬が効く→医療費を傷めない→関連する製薬会社が広く長く儲かる、と非常に大事な点なのですが、逆に薬としての発展があまり見られない分野なのかもしれないという印象も受けるわけなのです。

医薬は工業製品と違ってそう簡単には変更出来ないので難しいのだとは思いますが、自分の家族が筆者同様にQOLが下がったらちょっと耐えられんかもなぁとも思いますので。なお、今回の薬に含まれるジフルコルトロンはかなり強いステロイドに該当するため長期に服薬すると肛門部の皮膚が非常に弱い状態となり、結局外科手術等に踏み切るケースもあるようですので取扱いには十分注意すべき材料であることはここに付記しておきます。

ちなみに筆者が幸いにして罹らなかったいぼ痔や肛門膿瘍、痔瘻などはどういう薬品が適用されるのか。いずれも軽症レベルなら筆者が使った外用薬で何とかなるようなのですが、重症関係者からの体験談を聞くと中途半端な薬は使わず、大半が外科手術に移行するようです。詳細についてはなかなか苦虫を噛み潰したような画像を貼らねばならないことを鑑み、記載しないこととしました。筆者は外科手術レベルまで悪化したくないのでデリケートな尻を送る方を選択しておりますが・・・とは言え最近はそうした手術に使う薬品も器具も、勿論お医者様方のウデも上がっているようですので気になる方は積極的に病院に行かれることをお勧めします。

最後に、この他の痔治療薬としては、消炎剤トリベノシドや軟便化を促進する消化酵素ブロメライン、創傷治療薬メリロート(クマリン)、またスプレータイプの治療薬や民間治療薬のようなものもあるのですが、筆者がまだ経験していないということで今回は割愛いたします。

おまけ:治療・予防(体験的なものです・100%信じないでいただきたく)

まず腰を冷やさないことです。あと座り仕事の30分につき1回立上って腰を捻ること。そして確実に効果があったのが「メシをゆっくりよく噛んで食べる(ひとくち1分以上)」こと、「ヨーグルトを大量に摂取すること」の2点です。特にメシをよく噛むことの効果は本当にテキメンで、乙字湯の服薬回数を減らしても毎日痛みで泣かなくてよくなったくらい状態改善を実感できた対策でした。というか普通にちゃんと噛んで食えや。

実際仕事が立て込んで急いでいたりするとなかなかこれが出来ないのですが、そういった時にでも健康一番、という意識を持つことが大事でした。意外なのは、運動は筆者には効果が薄かった点。腹筋・スクワット・腕立てプランク・前蹴り・後ろ蹴りとかこれでも結構やってたのですがあんまり効果なし。これは長時間走るとか、有酸素運動のタイプのものをきちんとやった方がよかったのかもしれませんね。ということで皆様もご自分に合った防痔対策を見つけられることをお勧めいたします。

おわりに

正直今回のことについては色々と恥ずかしかったです。というかこの記事を書くこと自体恥ずかしいですがもう何も失うものはない年齢なのと「この人もか」と思ってくださる方が増えることを祈念して書きます。筆者は職場に復帰するとき「内臓系の疾患がちょっと・・・」と言ってムチャクチャ心配されました。嘘はついていませんが実態が痔だったとバレたら「心配した分の時間を返せ」とか言われかねないですね。ありがとう*本さん。

ですが、逆にオープンな話にした方がいいのでは、とも思います。だいいち鼻血とかは同情の対象にならんのに切れ痔が憐憫の情を以って受け止められる場合があるなんて何か不公平だと思いませんか。ぐるっと繋がっている同じ皮膚の出血であると認識してトポロジー的に見れば皮膚を擦りむいたとか包丁で切ったとかと同一の現象であるのに、です。

筆者は幸か不幸か下半身の病気やケガに罹ることが多く、その度に何やかんやリクツをつける羽目に陥っていて苦しい思いをしていました。ずっと深刻な話としては昭和初期は特定の疾患に罹っていることが判明した場合病院や施設で一生を過ごさせ、ヘタをすれば一族郎党村八分というような人権侵害がまかりとおっていたという過去も日本国内で実際にあるのです。痔の話とそんな大事な話をごっちゃにして語るな、というご意見もありましょうが「オマエと俺は違う、俺は幸運、オマエは不運だ、嘲笑ってやる」みたいな構図は同じだと思いますので。

だいいち、放っておいて悪化することの方、また恥ずかしがっていることの方がずっとご本人のためにならんからです。痔関連の疾患は絶対に放っておいても治りません。症状レベルにもよりますが漢方とか鍼灸とかマッサージとかだけではまぁ治りません。西洋医学に基づく薬と外科との組み合わせ、そして生活習慣の立て直しが一番効果的なのです。そのためにはどうしても時間と忍耐が必要なのです。みなさんも是非「そうか、実は俺もだ」そう言って優しく病院へ行くための休みを取らせるような責任者になってあげてください。健康や家族より大事な仕事や資産なぞ、どこにもないのです

それでは今回はこんなところで。

【筆者注記:2020年12月末日 再発しました】

→後日談はこちらです

[参考文献]

  1. バイエル薬品「ネリプロクト坐剤」 リンク
  2. PMDA 「ネリザ坐剤」 リンク
  3. PMDA「テクスメテン軟膏0.1%」リンク
  4. PMDA「乙字湯」リンク
  5. 公益法人 東京生薬協会 “ショウマ” リンク
  6. PMDA「強力ポステリザン」リンク
  7. マルホ「強力ポステリザン」リンク
  8. “Fluorine and Health, Molecular Imaging, Biomedical Materials and Pharmaceuticals” 2008, Pages 553-622, リンク
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Tshozo

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メーカ開発経験者(電気)。56歳。コンピュータを電算機と呼ぶ程度の老人。クラウジウスの論文から化学の世界に入る。ショーペンハウアーが嫌い。

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