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医薬品の品質管理ーChemical Times特集より

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関東化学が発行する化学情報誌「ケミカルタイムズ」。年4回発行のこの無料雑誌の紹介をしています。

4年前の2016年から紹介をはじめましたので、4年目突入です。今年も特集記事を中心に紹介をしていきたいと思います。

さて表紙のデザインも一新した2020年第一号の特集は「医薬品の品質管理」。我々の健康を支える医薬品がどのように品質を保たれているか、3つの記事で述べられています。

なお記事はそれぞれのタイトルをクリックしていただければ全文無料で閲覧可能です。PDFファイル)。1冊すべてご覧になる場合はこちら

医薬品の品質に対する取り組み

中外製薬株式会社 製薬品質部 課長である、今若 太一氏による寄稿。医薬品の品質管理に関する歴史と、実際に中外製薬で行っている医薬品(原材料)の品質への取り組みを述べています。

記事は、医薬品のリスクで必ず語られる、サリドマイド事件から始まります。この事件をきっかけとして、医薬品の安全性や有効性を確保する重要性が見直されました。それ以後、日本では1980年9月に施行された「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(医薬品GMP省令)がもととなり、法令としての医薬品の品質管理を行っています。もう一点、1995年に「製造所の構造設備並びに、手順、工程その他の製造管理及び品質の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書化する」ことが義務付けられました。これをバリデーションといい、2013年にはその基準についても改定され現在に至っています。

一方で、著者らの所属する中外製薬では、2018年7月に品質保証部門において、Subject Matter Expert for raw materials(原材料に対する内容領域専門集団、SME-M)が立ち上げられ、原材料及びサプライヤーに対する品 質関連情報を管理するシステムとして、データベース(Master Data Management for raw materials:MDM)を運用・管理しこれら原材料・サプライヤーに関する品質情報を一元的に関係部署に提供してます。記事では、詳しくその内容について述べています。

Relation of the raw materials for pharmaceutical and the life cycle(出典:Chemical Times)

 

医薬品の元素不純物ガイドライン(ICH Q3D)とICP-MS:分析担当者の立場から見た現状

株式会社東レリサーチセンターの主任研究員・研究員による寄稿。医薬品規制調和国際会議(ICH: International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)において制定された医薬品の「元素不純物ガイドライン: Q3D(」Guideline for Elemental Impurities: Q3D)について、その内容と最新動向を概説しています。また、医薬品の品質管理手法としては比較的新しいICP-MSについて、元素不純物ガイドラインが施行されたここ数年間の動向を、一分析担当者の視点から紹介しています。

以下の表は、Q3Dガイドラインの元素の分類。

Q3Dガイドライン では、Cd, Pb, As, Hgのビッグ4と呼ばれる元素や、Pd, Ir, Os, Rh, Ru, Ptの白金族元素を含めた24元素が対象となっている。 これらの元素は、それぞれの毒性により分類されています。それ以外にも、各元素の許容限度値がPDEとして示されたいます。

Q3Dガイドラインの元素の分類(出典:Chemical Times)

医薬品業界におけるデータインテグリティ実務対応

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表の望月 清氏による寄稿。医薬品業界においてデータインテグリティ対応に関して述べています。データインテグリティの要件は、ALCOA原則(アルコア原則)、 もしくはその拡張版であるALCOA+(アルコアプラス)であると 言われています。

 

 

ALCOA原則とALCOA+(プラス)(出典:Chemical Times)

 

本稿では、ガイダンスだけではなくFDA査察におけるデータ インテグリティ指摘をふまえたデータインテグリティの実務対応紹介しています。

その他

他にも、医薬品とは異なりますが、試薬の品質維持と管理法についての記事も公開されています。

過去のケミカルタイムズ解説記事

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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