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「リジェネロン国際学生科学技術フェア(ISEF)」をご存じですか?

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近年、中高生向けの科学プログラムやコンテストがいっそうの充実を見せています。未来の化学者育成に少なからず貢献しており、学生さんとしては強みを伸ばしやすい、いい環境になってきていると思えます。学生教育に少なからず関わる筆者としても、とても喜ばしい潮流に思えています。MirZaymovOnlayn

今回はその中でも、中高生向け国際科学コンテストの一種である、リジェネロン国際学生科学技術フェア(ISEF)についてご紹介したいと思います。

ISEFって何?

Regeneron International Science and Engineering Fairの略称で、世界各国から参加した高校生以下の学生たちが、個人またはチームで研究成果を競い合う、世界最大の科学コンテストです。Society for Scienceという非営利団体の主催により、毎年5月にアメリカで開催されています(冠の「Regeneron」は、スポンサーである製薬会社の社名)。

1950年に始まり、既に72回を数えるという由緒正しい科学コンテストであり、Wikipediaの解説によれば、ノーベル賞学者も含めた多数の著名人が過去の出場者に名を連ねています。

日本からはJSTのサポートによって、中高生が継続的に参加しているのですが、残念ながらまだまだ国内での知名度は高くないようです。しかし発表内容とレベルは本当にしっかりしており、堂々としたものです。この記事に触れたの機に、読者の皆さんも是非覚えておいてくださいね!

(ISEF2020へと出場予定だった学生の、オンライン発表会の様子)

いつもなら現地開催なのですが、2021年はコロナ禍の影響によってオンライン開催になってしまったようです。世界56ヶ国から選ばれた1255人の高校生(1030プロジェクト)が参加しました。日本からは14研究27名が参加・発表し、総じて優秀な成績を残しています(参考:文部科学省のリリース)。

(Award Ceremonyの様子)

ISEF2021 化学部門の受賞者・田中舜さんへインタビュー!

今回は日本人最高位のGrand Award 3rd(化学部門)を獲得された、田中舜さん(現在は徳島市立高等学校 在籍)にインタビューを頂くことができましたのでご紹介します。中学3年生としてISEF出場に選出され、受賞したのは、日本人初の快挙だそうです。http://mirziamov.ru/zaym-na-kartu/moskva/

田中舜さん(本番直前の様子)

– コンテストに参加したきっかけはなんですか?

正直なところ私自身、今回参加したISEFという大会は全く知りませんでした。私が研究成果の発表の場として最初に選んだのは日本学生科学賞という国内のコンテストで、そちらで審査を受けました。その結果、全国審査でのプレゼンテーションと質疑応答を経て、中学生の部で科学技術政策担当大臣賞という賞をいただきました。この日本学生科学賞では例年、原則高校生の部における受賞者から6プロジェクトを日本代表としてISEFに学生を送っています。私はその時未だ中学生でしたが6プロジェクトに選ばれ、そこで初めてISEFという、日本の外の世界にある場を知りました。

– どんな研究・発表を行いましたか?

研究の大まかな内容は、色素の安易で選択的な合成方法の確立というものです。
具体的には、徳島県で伝統文化として有名な藍染に含まれている赤色色素インジルビンという物質について研究しました。この色素は抗菌性や抗癌性などがすでに報告されているのですが、その合成方法において青色色素のインジゴが同時に生成してしまいました。そこで、私の研究では選択的な合成法の確立を目標とし、人の体内でインドキシル硫酸という物質がインジゴやインジルビンになっているといった医学分野での研究報告から着想を得て、出発物質としてインドキシル硫酸カリウムを用いることでインジルビンを選択的に合成することに初めて成功しました。
そして、合成に成功した後は、インジルビンが光触媒として使えないかどうかの評価に取り掛かりました。

–研究・準備にはどれくらい時間がかかりましたか?最も大変だったのはどこですか?

実際に研究にかかった期間はおよそ1年というところです。鳴門教育大学の「ジュニアドクター発掘・養成講座」の下で実験を何度も行わせていただきました。
研究の中では、インジルビンの選択的な新しい合成方法を見つけることを目指したので、従来の方法と比べてどのような変更を施せば選択的に合成できるのか、というところが研究の中で最も重要な核となる部分であり、そこが私にとって最も難しい場所でもありました。
また、やはり合成に成功した後、自分の開発した合成方法においては、どのような反応機構が推定されるのか、ということを考えることも研究の中でとても難しかった場所でした。

–実際にコンテストに参加・入賞して、どう感じましたか?

ISEFに参加すると、同じく化学の分野で出場している他国の代表の作品を見ることができました。ISEFに出場できたということで私自身、自分の研究に少なからず自信を持っていたのですが、いくつか他の国の代表選手の研究を見て回ることで、ISEFがトップレベルの世界大会であることを何度も思い知らされました。どの研究もとてもレベルが高いもので、そのようなものと同じ地点で僕は戦えるのかという不安がありました。
そのような感覚があったために、実際に自分がGrand award ceremonyで名前を呼ばれた時は、驚きの気持ちがありました。ですがやはり、ISEFを通じて、自分の研究が国際的にも評価されたのだということは私自身本当にうれしかったです。

–今後どのような進路を目指していきたいですか?

今回のISEFでの受賞もあり、私自身、化学への探求心が以前よりも格段に増したことを感じています。今後も化学の研究を続けていきたいと思っており、将来就きたい職業は化学者です。今から化学の分野でいろいろなものに触れ、将来も化学者として活躍できる進路を目指すつもりです。

–最後に、科学に興味をもつ中高生の皆さんにメッセージをお願いします。

先のことを考えて創意工夫することはもちろんとても大切なことです。
しかし同時に、自分の気に入っていることややり続けたい道を一心不乱に探求し続けることにも、計り知れないほどの価値があるのだと思います。

最後に、実験をご指導いただいた鳴門教育大学の早藤幸隆先生、ISEF出場に当たって、メンターとしてご指導いただいた東京理科大学の西原寛教授と東京大学の村田滋教授に感謝いたします。

小・中・高校生でも科学の研究にチャレンジできる!

これに限らず最近では、傑出した才能をもつ小・中・高校生を支援するためのプログラムがあちこちで走っています。全ては拾い切れませんが、たとえばJSTや材団が支援する形で、下記の様なものが知られています。

  • ジュニアドクター育成塾:未来の科学者を目指す小中学生が、理数・情報分野の発展学習や大学などの研究現場に触れ、自らの能力を高めていく機会を提供しています。サイエンスアゴラなどで発表機会も提供されます。全国各地の機関で受託していますので、お近くの場所を調べて見るといいでしょう。
  • アジアサイエンスキャンプ:リンダウ・ノーベル賞受賞者会議をモデルにした、ノーベル賞受賞者やトップクラス科学者との交流機会です。アジアからの高校~大学生を対象にしています。(参考:ケムステ紹介記事
  • 国際化学オリンピック:ご存じ、理系高校生のための知の祭典です。世界中の才能ある学生が、筆記や実験などで化学の力を競い合います。日本からも毎年受賞者が多く出るようになったので、だいぶ通りが良くなりましたね。
  • サイエンスメンタープログラム:中高生が研究費を支給され、大学教員などの「メンター」からアドバイスを受けつつ、研究プロジェクトに取り組むことができます(参考:ケムステ紹介記事)。
  • 孫正義育英財団:「天才」としか形容できない25歳以下の傑出人材を拾い上げて、金銭的にも潤沢な支援を5年間行っています。朝日中高生新聞に採択者が寄稿している「異能日記」と言うコーナーがあるのですが、どれを読んでもため息がでるばかりで、才能と年齢は関係ないんだなぁ・・・と思わされます。

大学レベルの話が多く、ちょっと難しいケムステ記事をご覧になっている中高生の皆さんや、既に親となられた読者の皆さんも、こういった取り組みをご活用いただき、羽ばたくきっかけにしていただければ幸いです。

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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