[スポンサーリンク]

H

ハートウィグ・宮浦C-Hホウ素化反応 Hartwig-Miyaura C-H Borylation

[スポンサーリンク]

概要

イリジウム触媒および電子供与型二座配位子を用いることで、芳香環ハロゲン置換体を経由しないC-H活性化型ホウ素化が行える。生成物である有機ホウ素化合物は各種変換の中間体として価値が高い。

本反応は芳香環にある置換基の立体的影響を強く受ける。これにより、オルトリチオ化求電子置換では難しい、メタ位選択的官能基化が可能となる。

芳香族ハロゲン置換体を用いる条件は宮浦・石山ホウ素化の項目を参照。

基本文献

  • Cho, J. Y.; Tse, M. K.; Holmes, D.; Maleczka, R. E., Jr.; Smith, M. R. Science 2002, 295, 305. DOI:10.1126/science.1067074
  • Ishiyama, T.; Takagi, J.; Ishida, K.; Miyaura, N.; Anastasi, N. R.; Hartwig, J. F. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 390. DOI: 10.1021/ja0173019
  • Ishiyama, T.; Takagi, J.; Hartwig, J. F.; Miyaura, N. Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 3056. [abstract]
  • Ishiyama, T.; Nobuta, Y.; Hartwig, J. F.; Miyaura, N. Chem. Commun. 2003, 2924. DOI: 10.1039/B311103B

<review>

反応機構

イリジウム・配位子・ジボランを混合して生じるfac-トリスボリルイリジウム錯体が活性種とされる。オレフィン配位子が除去されてできた空配位場にて、酸化的付加過程による芳香環のC-H活性化が起きる。(参考:J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 9329; J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 16114; J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 14263 )

Hartwig_boryl_7

反応例

立体要因の影響を強く受けるため、普通は置換基オルト位での反応は起こりづらい。(図はこちらのページより引用)

Hartwig_boryl_4

ポルフィリンのβ位選択的C-H官能基化[1]

Hartwig_boryl_3

Complanadine Aの全合成[2]

Hartwig_boryl_2

ヒドロシランを配向基として用いることで、通常条件では難しいオルト位のC-Hボリル化が行える。[3]

Hartwig_boryl_5

配位性官能基を足がかりとすることでシクロプロパン[4]や、sp3C-H結合のボリル化[5]も行えるようになった。

Hartwig_boryl_8

触媒チューニングにより、アルコールを足がかりとした不活性sp3C-Hシリル化も可能となっている[6]。引き続く玉尾酸化でアルコールへと変換可能であり、新たなポリオール合成法として価値が高い。以下は糖合成に応用した例。[7]

Hartwig_boryl_6

嵩高い二座リン配位子を用いるパラ位選択的C-Hボリル化反応[8]

Hartwig_boryl_9

ロジウム触媒を用いる不活性アルカンの末端官能基化[9]

miyaura_boryl_6

参考文献

  1. Hata, H.; Shinokubo, H.; Osuka, A. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 8264. DOI: 10.1021/ja051073r
  2. Fischer, D.F.; Sarpong, R. J. Am. Chem. Soc. 2010132, 5926. DOI: 10.1021/ja101893b
  3. Boebel, T. A.; Hartwig, J. F. J. Am. Chem. Soc. 2008130, 7534.DOI:10.1021/ja8015878
  4. Liskey, C. W.; Hartwig, J. F. J. Am. Chem. Soc. 2013135, 3375. DOI: 10.1021/ja400103p
  5. (a) Liskey, C. W.; Hartwig, J. F. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 12422. DOI: 10.1021/ja305596v (b) Li, W.; Liskey, C. W.; Hartwig, J. F. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 8755. DOI: 10.1021/ja503676d (c) Miyamura, S.; Araki, M.; Suzuki, T.; Yamaguchi, J.; Itami, K. Angew. Chem. Int. Ed.  2015, 54, 846. DOI: 10.1002/anie.201409186
  6. (a) Simmon, E. M.; Hartwig, J. F. Nature 2012483, 70. doi:10.1038/nature10785 (b) Li, B.; Driess, M.; Hartwig, J. F. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 6586. DOI: 10.1021/ja5026479
  7. Frihed, T. G.; Heuckendorff, M.; Pedersen, C. M.; Bols, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 12285. DOI: 10.1002/anie.201206880
  8. Saito, Y.; Segawa, Y.; Itami, K. J. Am. Chem. Soc. 2015137, 5193. DOI: 10.1021/jacs.5b02052
  9. Chen, H.; Schlecht, S.; Semple, T. C.; Hartwig, J. F. Science 2000, 287, 1995. doi:10.1126/science.287.5460.1995

関連書籍

関連反応

外部リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. バートン ヨウ化ビニル合成 Barton Vinyl Iodid…
  2. ライセルト反応 Reissert Reaction
  3. クネーフェナーゲル縮合 Knoevenagel Condensa…
  4. ヤコブセン転位 Jacobsen Rearrangement
  5. マクファディン・スティーヴンス反応 McFadyen-Steve…
  6. 有機テルル媒介リビングラジカル重合 Organotelluriu…
  7. ジュリア・リスゴー オレフィン合成 Julia-Lythgoe …
  8. 可逆的付加-開裂連鎖移動重合 RAFT Polymerizati…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 芳香族フッ素化合物の新規汎用合成法
  2. The Journal of Unpublished Chemistry
  3. 二次元物質の科学 :グラフェンなどの分子シートが生み出す新世界
  4. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」⑦(解答編)
  5. 科学とは「世界中で共有できるワクワクの源」! 2018年度ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞
  6. 染色なしで細胞を観察 阪大ベンチャーが新顕微鏡開発
  7. 乾燥剤の種類と合成化学での利用法
  8. ホウ素ーホウ素三重結合を評価する
  9. トリメチルアルミニウム trimethylalminum
  10. 第115回―「分子機械と天然物の化学合成」Ross Kelly教授

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

注目情報

最新記事

有機強相関電子材料の可逆的な絶縁体-金属転移の誘起に成功

第410X回のスポットライトリサーチは、熊本大学 自然科学教育部理学専攻化学コース 松田研究室の照屋…

MEDCHEM NEWS 31-3号「ケムステ代表寄稿記事」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

トンネル構造をもつマンガン酸化物超微粒子触媒を合成

第409回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 物質理工学院 材料系 原・鎌田研究室に在籍されて…

第174回―「特殊な性質を持つフルオロカーボンの化学」David Lemal教授

第174回の海外化学者インタビューは、デヴィッド・レマル教授です。ダートマスカレッジ化学科に所属し、…

二核錯体による窒素固定~世界初の触媒作用実現~

Tshozoです。先月このような論文がNature本誌に発表されました。窒素固定と言えばやはり筆…

有機合成化学協会誌2022年8月号:二酸化炭素・アリル銅中間体・遺伝子治療・Phaeosphaeride・(−)-11-O-Debenzoyltashironin・(−)-Bilobalide

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年8月号がオンライン公開されました。筆…

生体分子と疾患のビッグデータから治療標的分子を高精度で予測するAIを開発

第 408 回のスポットライトリサーチは、九州工業大学 情報工学府 博士後期課程…

尿酸 Uric Acid 〜痛風リスクと抗酸化作用のジレンマ〜

皆さん、尿酸値は気にしてますか? ご存知の通り、ビールやお肉に豊富に含まれるプリ…

第173回―「新たな蛍光色素が実現する生細胞イメージングと治療法」Marina Kuimova准教授

第173回の海外化学者インタビューは、マリナ・クイモヴァ准教授です。インペリアル・カレッジ・ロンドン…

Biotage Selekt のバリュープライス版 Enkel を試してみた

Biotage の新型自動フラッシュクロマトシステム Selekt のバリュープライ…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP