[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

リチャード・シュロック Richard R. Schrock

[スポンサーリンク]

リチャード・ロイス・シュロック(Richard Royce Schrock、1945年1月4日(バーン、インディアナ州、米国生)-)はアメリカの有機化学者・無機化学者である。米マサチューセッツ工科大学教授。

2005年に「メタセシスを用いる有機合成方法論の開発」により、ショーヴァングラブスとともにノーベル化学賞を共同受賞。

経歴

インディアナ州バーンに生まれる。

1967 カリフォルニア大学リバーサイド校 学士号取得
1971 ハーバード大学 博士号取得 (J.A.Osborn教授)
1971 ケンブリッジ大学 博士研究員 (Jack Lewis教授)
1972 デュポン社 研究員
1975 マサチューセッツ工科大学 勤務
1980 マサチューセッツ工科大学 教授
1989 マサチューセッツ工科大学 Frederick G. Keyes Professor of Chemistry

受賞歴

1985 ACS Award in Organometallic Chemistry
1995 ACS Harrison Howe Award
1995 Alexander von Humboldt Award
1996 ACS Award in Inorganic Chemistry
2001 ACS アーサー・C・コープ スカラー賞
2005 August Wilhelm von Hofmann Medal (ドイツ化学会)
2005 ノーベル化学賞
2006 Albert Cotton Award in Synthetic Inorganic Chemistry
2006 Theodore Richards Medal
2007 Basolo Medal

研究

オレフィンメタセシス触媒(シュロック触媒)の開発

グラブス触媒に比べて扱いやすさや官能基受容性の面で劣るものの、活性は大変高く、四置換オレフィンの合成にも適用可能な触媒である。

ボストンカレッジ・Amir Hoveyda教授との共同研究により、現在では不斉メタセシス反応を進行させる触媒の開発も達成されている。

schrock_cat.gif

高酸化数カルベン錯体(シュロックカルベン錯体)の合成・単離

π受容性配位子を備えるフィッシャー型カルベン錯体とは異なり、置換基が求核的挙動を示す。よく知られた実例としては、Schrockメタセシス触媒やTebbe試薬などがあげられる。

schrock_carbene.gif

窒素固定錯体の開発

2003年、窒素分子をアンモニアへと室温還元できる触媒の開発に世界ではじめて成功した。

コメント&その他

  1. ノーベル賞受賞後でも化学研究への情熱は衰えておらず、2009年現在でも精力的に論文を発表している。講演会でも化学研究の話をメインに熱心に話される。化学に対して大変にピュアな取り組みをしている学者の一人だと思えます。
  2. デュポン社から大学へ移ったいきさつについては、「デュポンの体質が変わって自由な研究がやりにくくなったことが一因」と仰っておられました。

関連動画

 

関連文献

  •  Schrock, R. R.; Rocklage, S. M.; Wengrovius, J. H.; Rupprecht, G.; Fellmann, J. J. Molec. Catal. 1980, 8, 73. DOI: 10.1016/0304-5102(80)87006-4
  • Schrock, R. R.; Murdzek, J. S.; Bazan, G. C.; Robbins, J.; DiMare, M.; O’Regan, M. J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 3875. DOI: 10.1021/ja00166a023
  • Schrock, R. R. Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 3748. DOI: 10.1002/anie.200600085

関連書籍

[amazonjs asin=”1118207947″ locale=”JP” title=”Olefin Metathesis: Theory and Practice”][amazonjs asin=”3527324402″ locale=”JP” title=”Metathesis in Natural Product Synthesis: Strategies, Substrates and Catalysts”][amazonjs asin=”3527306161″ locale=”JP” title=”Handbook of Metathesis (Greim/Henschler: Occupational Toxicants)”]

ケムステ内関連記事

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 佐藤しのぶ ShinobuSato
  2. アンソニー・スペック Anthony L. Spek
  3. デニス・ドーハティ Dennis A. Dougherty
  4. 久保田 浩司 Koji Kubota
  5. マリウス・クロア G. Marius Clore
  6. ヴァレリー・フォキン Valery V. Fokin
  7. 水島 公一 Koichi Mizushima
  8. 菅裕明 Hiroaki Suga

注目情報

ピックアップ記事

  1. 高効率・高正確な人工核酸ポリメラーゼの開発
  2. 原子間力顕微鏡 Atomic Force Microscope (AFM)
  3. カネボウ化粧品、バラの香りの秘密解明 高級香水が身近に?
  4. サノフィ・アベンティスグループ、「タキソテール」による進行乳癌の生存期間改善効果を発表
  5. 特許資産規模ランキング2019、トップ3は富士フイルム、三菱ケミカル、住友化学
  6. C-H活性化触媒を用いる(+)-リゾスペルミン酸の収束的合成
  7. 有機合成化学協会誌2019年9月号:炭素–水素結合ケイ素化・脱フッ素ホウ素化・Chemically engineered extracts・クロロアルケン・ニトレン
  8. ボンビコール /bombykol
  9. 理研の一般公開に参加してみた
  10. 有機合成化学協会誌2020年9月号:キラルナフタレン多量体・PNNP四座配位子・π共役系有機分子・フェンタニル混入ヘロイン・プロオリゴ型核酸医薬

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP