[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

リンダウ会議に行ってきた②

[スポンサーリンク]

リンダウ・ノーベル賞受賞者会議(Lindau Nobel Laureate Meeting)の参加報告、第二回目です。(前回の記事はこちら)

さて、第二回目は初日のオープニングセレモニーなどについて紹介します。

まず選抜楽団の演奏から開幕。演奏者の皆さんは、まだ20代前半。若くしてこの晴れ舞台にあがれるエリート達です。
BO5C0324.JPG
その後オーガナイザからの挨拶。なんと女性。あえて話を15字で要約するならば、「スポンサーの皆様どうもありがとう」。
BO5C0377.JPGBO5C0419.JPG
そして何やかや話があったあとに、5名の選抜若手参加者とノーベル賞受賞者を交えての、公開ディスカッション。・・・というよりは、皆さん台本どおりしゃべっておられるような感じでしたね。
BO5C0617.JPG
まぁこんな感じで進んでいました。公式サイトでオープニングセレモニーの動画を視聴することができますので、細部に興味のある方はそちらをどうぞ。

 

会場の前のほう数列はreservedになっており、ノーベル賞学者や各国のVIP用に確保されていました。

実際、錚々たる面々が招待されているようでした。たとえばドイツの役人は勿論、EUのお偉いさん、オーストリアの文部大臣、リヒテンシュタインの首相、などなど・・・。VIPが多数集まっているためか、この日に限ってカバンの中身を入場前にチェックをされたほど。

表向きは「ノーベル賞学者と若手の交流会」と銘打っているリンダウ会議ですが、その実は、ノーベル賞学者の破格のネームバリューを使って各国のVIPを呼び寄せ、彼らに自国をアピールする場としての機能も果たしているようでした。
さて、今回参加していた若手化学者(=院生+ポスドク)は、およそ580名。そのうち10名以上参加している国は、参加者リストによると以下のとおりでした。

  ドイツ180名、アメリカ100名、インド45名、中国25名、スペイン15名、イギリス10名、オーストラリア10名、オランダ10名、ロシア10名、そして日本10名。

かなり偏りがあることが伺えるのではないでしょうか。意外なことですが、お隣のフランスなんかは8人しか参加していません。果たしてこの意図やいかに。

 

開催側のドイツや、力のあるアメリカ、人口の多い中国が多くなるというのはまぁ通例で、理解できなくもありません。しかしその中にあって、インドからの参加が飛びぬけて多い、ということがお分かりでしょう。

 

それもそのはず、インドは今回、リンダウ会議の協賛サポーター国の立場を買って出ているのです。そのため会議側のはからいで、インドの露出機会が明らかに多めに設定されていました。具体的には、インド料理が昼食に給仕されたり、インド舞踊が舞台で披露されたり、インド人化学者の講演タイムが特別に設けられていたり・・・。そしてこんな人数比なので、そこらで見かける非西洋人はというと、たいてい中国人かインド人ばかり。サポーター国たる存在感を示すことに、確かに成功していたようです。

 

リンダウ会議はどうやら、国家機関からの推薦がないと参加できないシステムになっているそうです。言い換えれば個人の実力で参加をもぎ取る類の会ではない、ということ。とすれば参加人数比は、完全にドイツ側の裁量で決められている、と考えるのが妥当に思えます。もう少し言うなら、「科学の世界で将来、友好的関係を結びたい」とドイツ側が考えている国ほど参加人数が多くなっている、とすら解釈できるのでは・・・。

 

こういったことを加味するに、リンダウ会議は紛う事なき国際政治イベントとしての側面も持っていると感じられました。貴重な機会を多角的に活用しようとしてるのは、どこでも同じですね。世界はのんびりしていません。

 

「日本だってインドや中国には負けてられんぞ!」・・・と思いたいところなのですが、そのような目で見てしまうと、今回の会議では露出機会がどこにも無く、完全にアピール機会を逸してしまっているようでした。そもそも日本のVIPは、学者以外は誰も来ていないですし。

 

旧同盟国だったはずのドイツ はパートナーを中国・インドにシフトしつつあり、日本の科学界は徐々に相手にされなくなってきているという兆候なのでは・・・悲観的な見方かも知れませんが、
そんな風に感じられてしまいました。

次回はノーベル賞化学者達による講演の様子をお伝えします。

 

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 生体外の環境でタンパクを守るランダムポリマーの設計
  2. MEDCHEM NEWS 30-3号「メドケムシンポ優秀賞」
  3. 非天然アミノ酸触媒による立体選択的環形成反応
  4. ケムステイブニングミキサー2017へ参加しよう!
  5. Glenn Gould と錠剤群
  6. Nature Catalysis創刊!
  7. 薬学部6年制の現状と未来
  8. 光学活性有機ホウ素化合物のカップリング反応

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 炭素置換Alアニオンの合成と性質の解明
  2. 有機合成化学協会誌2021年6月号:SGLT2阻害薬・シクロペンチルメチルエーテル・4-メチルテトラヒドロピラン・糖-1-リン酸・新規ホスホジエステラーゼ阻害薬
  3. 二酸化塩素と光でプラスチック表面を機能化
  4. 国際化学オリンピックで日本代表4人メダル受賞
  5. 第九回ケムステVシンポジウム「サイコミ夏祭り」を開催します!
  6. 特許にまつわる初歩的なあれこれ その2
  7. ウェブサイトのリニューアル
  8. サントリー生命科学研究者支援プログラム SunRiSE
  9. ハーバート・ブラウン―クロスカップリングを導いた師とその偉業
  10. 脱離反応 Elimination Reaction

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

注目情報

最新記事

【ナード研究所】新卒採用情報(2024年卒)

NARDでの業務は、「研究すること」。入社から、30代・40代・50代…と、…

株式会社ナード研究所ってどんな会社?

株式会社ナード研究所(NARD)は、化学物質の受託合成、受託製造、受託研究を通じ…

マテリアルズ・インフォマティクスを実践するためのベイズ最適化入門 -デモンストレーションで解説-

開催日:2023/04/05 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

ペプチド修飾グラフェン電界効果トランジスタを用いた匂い分子の高感度センシング

第493回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 物質理工学院 材料系 早水研究室の本間 千柊(ほ…

日本薬学会  第143年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part 2

第一弾に引き続き第二弾。薬学会付設展示会における協賛企業とのケムステコラボキャンペーンです。…

有機合成化学協会誌2023年3月号:Cynaropicri・DPAGT1阻害薬・トリフルオロメチル基・イソキサゾール・触媒的イソシアノ化反応

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年3月号がオンライン公開されました。早…

日本薬学会  第143年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part 1

さて、日本化学会春季年会の付設展示会ケムステキャンペーンを3回にわたり紹介しましたが、ほぼ同時期に行…

推進者・企画者のためのマテリアルズ・インフォマティクスの組織推進の進め方 -組織で利活用するための実施例を紹介-

開催日:2023/03/22 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

日本化学会 第103春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part3

Part 1・Part2に引き続き第三弾。日本化学会年会の付設展示会に出展する企業とのコラボです。…

第2回「Matlantis User Conference」

株式会社Preferred Computational Chemistryは、4月21日(金)に第2…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP