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アメリカで Ph.D. を取る –エッセイを書くの巻– (前編)

本連載は、米国の大学院で Ph.D. を取得することを目指す学生が日記感覚で近況を記録するためのものです。今回は、出願書類の中で、日本人にとって、もっとも取っつきにくいであろう課題である、エッセイの書き方について、その奮闘記録とともにお届けします。

本記事の位置づけと構成

「アメリカで Ph.D. を取る」シリーズでは、今後留学することを希望している方や、「学位留学には興味あるけどハードル高いなー」と感じている方が、留学の準備を疑似体験できる場を提供することを目標に、GRE Chemistry 受験ラボ訪問、そして奨学金申請などについて、私自身の不安な気持ちをぶちまけるという精神安定剤的な役割も兼ねながら、記事を投稿してまいりました。ただし、米国大学院への出願という意味では、これまでの記事で述べた準備は、やってもやらなくてもよいことです (ちなみに GRE Chemistry は、多くの化学系の学科で highly recommended とされており、必ずしも必要ではないようです)。実際の出願に必要な書類については、これまでお話してきませんでした。今回と次回の記事で、ようやく出願の手続きについてのお話をいたします。

といっても、米国大学院への出願プロセスについて、すでに Chem-Station 内に記事がありますので、その概要が知りたいという方は、そちらの記事を先に読むことをお勧めします (参考: ご注文は海外大学院ですか?〜準備編〜)。本記事では、出願書類の中で日本人にとって、もっとも厄介な課題である、エッセイについて、私が実際に書いた具体例を示し、エッセイ執筆を乗り切るために必要な準備などをお話しようと思います。

まずは心理的ハードルを越える

Statement of Purpose (SoP), Candidate Statement, あるいは Statement of Objectives などのように呼び方は大学により様々ですが、エッセイは海外大学院への出願書類の中でも、重要であると言われています。さっそくエッセイの書き方についてお話ししても良いのですが、私には、エッセイを書くための心理的な活性化エネルギーを乗り越える段階が必要でした。つまり、「日本語で奨学金の申請書を作成することすら大変だったのに、得体の知れないエッセイと呼ばれる書類を英語で書くなんて何事だ」という心境なのです。重要なことなので先にネタバラシしておきますが、大学によってエッセイの書き方の指示が出されているので、要はそれに従えばいいのでした。

しかし、「そろそろエッセイ書くぞー」と PC に向かっては、何を書くかべきなのか、調べるだけ調べて、結局一文字も書かずに時間だけが過ぎる、という時期がありました。同じ轍を踏まないことをお勧めしますが、気になる方は、”graduate school”, “how to write essay” などで検索するとたくさん情報が得られます。そんななかで、アメリカ化学会 (ACS) が、エッセイについて次のように言っている資料を発見したので、一部を日本語に訳して紹介しておきます。

エッセイを書くことは、大学院への出願書類の中でもっとも手強い課題の一つであろう。他の出願書類である、成績 (GPA) や各種テスト (GRE general, GRE subject) などは、所詮は数字であるのに対して、エッセイは個性が現れる書類だ。エッセイ全体の目的は、あなた自身をアピールすることである。あなたは、エッセイで、大学院に向けての準備ができていることを示すだけでなく、出願するプログラムに対して適性があることを示すべきだ。

こんなことを言われると、「うーん。やっぱり、エッセイは重要なのか。」と、ますます慎重になってしまいます。

結局、私は大学院訪問の時に知り合ったアメリカ人学生に対して、「エッセイ見せて」とメールを送り、それを参考にするという裏技を使うことで、10 月頭から書き始めました。つまり、実例を見て、これでいいのかと安心したことで、ハードルを乗り越えることができました。というわけで、今後、海外大学院に出願する皆さんには、ネットサーフィンの段階から早めにオサラバしていただくために、私自身のエッセイの概要を紹介しようと思います 。(ただし、今から紹介する概要が、合格するエッセイのそれかどうかは保証できません!)

エッセイ全体の構成と体裁

エッセイ課題のフォーマットは、それぞれの大学院で指定のテンプレートが用意されているわけではなく、自由です。ただし、学校によっては、推奨される文字数、文字の大きさ、行間を掲載していました。それにのっとって、私は、次のような体裁で文書を作成しました。

  • フォント: Times, 12 point
  • 行間: 1 行
  • 長さ: 800~1000 words (A4 2 枚いっぱい程度)
  • 冒頭に氏名、出願する大学、出願する学部を一行ずつ記した後、本文開始

つづいて、エッセイの構成を紹介します。エッセイ全体で、章分けをするとすれば、次のようになります。ただし、第何章というのはストーリーを解説するために、私が勝手に名づけたものです。実際にはわざわざ章ごとに見出しを付けているわけではなく、ひと続きの文章です。

第一章: 自己紹介と Ph.D. への動機 (2 段落,  130 words程度)

第二章: これまでの研究経験 (2 段落, 290 words 程度)

第三章: 大学院での研究計画および志望理由 (2 段落,  300 words 程度)

第四章: 大学院進学に関連する課外活動など (1 段落, 160 words 程度)

第五章: 締め (1 段落, 30 words 程度)

ところで、さきほど、各大学でエッセイの書き方についての指示があることを紹介しました。エッセイ全体で一貫性が保たれていることが重要なので、それぞれの大学院で書き分けることが望ましいと思います。しかし、実際にはエッセイで要求される項目は、多くの学校でほぼ同じです。なので、上記の項目を書いていれば、ほとんどの学校におけるエッセイ課題を満たしていることになるはずです。そして、私の場合は、第二章までの内容は、出願したほぼすべての大学院で、おおよそ共通していました、なぜなら、ある共通の基準を持って、出願する大学院を決めたため、第二章までの内容を使いまわしたとしても、第三章に移る際に、矛盾が生まれなかったからです。では、実際にそれぞれの章でどのようなことを書いたかについて、具体的に紹介します。

第一章: 自己紹介と Ph.D. への動機 (2 段落,  130 words 程度)

エッセイの書き出しは重要であると言われています。ここが陳腐であると、レビュワーに興味を持ってもらえないそうです。そこで、将来の目標を端的に示し、そのために Ph.D. が必須であること、そしてなぜそのような目標を持ったかを示しました。また、化学に対する熱意を口だけで示すことは簡単なので、 「このような化学への熱意があるので、GRE Chemistry では何点を取ることができた」 のようにテストの点数を自慢しておきました。これは、希望研究室のある先生とスカイプでお話した時に、「テストのスコアのことはエッセイに書いとけ」とアドバイスをいただいたからです。出願手続きの中で、成績やテストスコアを報告する機会はありますが、強みは念押ししてアピールするべきなのでしょう。なので、もし強い成績 (GPA) などを持っていれば、それをエッセイに書いて勉強熱心であることを強調することもありだと思います。相手は自己主張の国なので、日本流の謙虚な文章は好まれないかもしれません。

第二章: これまでの研究経験 (2 段落, 290 words 程度)

「大学院に向けての準備ができていること」を示すために、これまで行ってきた研究について書きました。研究に携わった期間、研究機関の名前、指導教授の名前そして研究のタイトルを書き、結果を要約しました。研究内容については、深く突っ込みすぎず、しかし表面的にならないように、自分自身が果たした役割を示しました。例えば、「金属カルベンを使った反応開発に従事した。各種 NMR で生成物の構造決定をして、条件検討を行い、反応機構を解明した。そして、金属上の配位子の立体効果が、反応の化学選択性の鍵を握ることを明らかにした。」といった具合です。このときに、使用できる装置やソフトウェアなどを記しておくことは、研究経験があることの証拠になると思います。ただし、「私は NMR が使えます」と書くだけなら、単にルーチンワークとして使っている感じが否めません。「予期しない未知の生成物が得られたが、二次元 NMR を用いて構造決定した。」のように書くことで、使用できるテクニックを暗に示しつつ、ただ手を動かしていただけでなく、頭を使って研究できることをアピールしたつもりです。なお、現在の学校で携わっている研究にくわえて、私の場合は、一週間のインターンシップに参加する機会があったので、その内容についても触れました。

避けるべきなのは、「私は研究に熱中した」となんの根拠もなく書くことだと思います。もし学会発表や論文投稿をしていれば、そちらをアピールすべきだと思います。「そんなにたくさん自慢することねぇよ」と思いながらも、「私は週に何時間以上ラボで研究に時間を費やした。」と書くことで、勤勉さを客観的に示しました。ちなみに、エッセイを見せてくださったアメリカ人は、次のようなことを書いておられました。

私は、熱心に研究に取り組み、通常の授業をこなしながら週に 20 時間以上は研究室で過ごし、夏にはフルタイムで研究に集中した。

週に20時間って少なくない?と思ってしまいますが、アメリカではすべての学部生が研究室に配属されるわけではないようです。その点で言えば、日本人学生の場合、研究経験に関して有利かもしれません。

この章の締めでは、 その研究経験からどのようなことを学んだか、あるいはどのようなことに興味を持ったかを記述しました。これは、次の第三章 (大学院での研究計画および志望理由) において、留学先で行いたい研究内容を書くための伏線を張るためです。

このまま続けると、大変長くなってしまうので、中途半端なところではありますが、今回はこんなところで失礼いたします。

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